【自分用】A mesothelium divides the subarachnoid space into functional compartments

Møllgård K and Nedergaard M et al.,  Science (2023)
doi: 10.1126/science.adc8810

くも膜下腔(くも膜と軟膜の間)に第4の髄膜、subarachnoid lymphatic-like membrane (SLYM)が発見された。SLYM は大規模な骨髄細胞集団の宿主であり、その数は炎症や老化に応じて増加するため、この層はおそらく脳脊髄液を免疫学的に監視している

グリンパティックという名称はグリアとリンパからの造語であり、グリア依存性の排泄経路。動脈(Artery)周囲を髄液(CSF)が通過し、アストロサイトエンドフィートに存在するAQP4から吸収される。間質液(ISF)と混合され静脈(Vein)周囲腔へ流れ、その後リンパ管へと排出される。つまりグリンパティック排出路ではアストロサイトとそのエンドフィートに存在するAQP4、血管周囲腔が重要な役割を担っている。

だが、意外とCSFがくも膜下腔という大きな空洞の中でどのように輸送されるかはあまり分かっていなかった。


まず著者らはProx1(リンパの運命を決定する転写因子)-EGFPレポーターマウスを用いて、体性感覚皮質の髄膜をin vivoイメージングした。するとSLYMがくも膜下血管を覆うように存在していた(Fig. 1)。

続いてその機能的な役割を調査すると、3kDa以上の溶質に対して分画する役割を持つことが分かった。つまりAβやタウなどほとんどのペプチドやタンパク質の交換を制限している(Fig. 2)。

Fig. 3では、切片を作製し免疫染色を行った。すると脳表面全体にProx1-EGFP細胞が並んでいた。また、リンパマーカーであるポドプラニン(PDPN)は陽性であったが、リンパ管内皮受容体(LYVE1)は陰性であった。他にも多くのマーカーで検討されているが、特筆すべきは成人の大脳皮質においてもこれらのマーカーが存在していた。これはSLYMが人間の脳にも存在していることを示唆する。また、SLYMは脳と頭蓋骨の間の摩擦を軽減している、つまり中皮のような役割も担っている可能性を示唆するデータも出されている。

また、SLYMがCSFへの外因性粒子の侵入を妨げるか調べると、標識された骨髄細胞はin vivoイメージングでSLYMに埋め込まれていた。さらに、SLYMの軟膜血管周囲にはCD45+細胞が豊富に存在しているが、老齢(12-13 wks)マウスおよびLPSi.p.処置マウスで発現が上昇した(Fig. 5)。他の結果とも合わせてSLYMは免疫学的監視を行うニッチ(微小環境)として機能し、中皮の特性を満たしていると結論付けた。

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