【自分用】Analgesic effect of gastrin-releasing peptide in the dorsal horn

Saeki A et al., Mol. Pain. (2022)

ハイライト
・炎症性疼痛モデルマウスにGRPを髄腔内投与すると、抗侵害受容効果が確認された
・この抗侵害受容効果は抑制性介在ニューロンを介している可能性がある

Introduction

感覚情報を中心に運ぶ経路は特異的であり、特定の刺激に関する「labeled line」を形成する。このlabeled line theoryに従い、異なる種類の刺激が後角回路レベルで互いに修正し合うことがよく知られている。例えば末梢神経刺激は、後角のフィードフォワード抑制経路を活性化し、痛みの感受性を低下させ、動物モデルで鎮痛効果をもたらす。そしてフィードフォワード抑制回路の機能不全は、機械的アロディニアを誘発する。掻き動作による機械的信号がかゆみを軽減し、鎮痛性オピオイドがかゆみを誘発することが報告されており、これは拮抗的相互作用を示している。逆に、脊髄のかゆみ信号が対抗刺激として痛みの信号を修正できるのか、または後角の急性の痛みを伴う炎症情報によってどの程度のかゆみ回路が活性化されるのかは不明のままである。


Results

ホルマリンの足蹠内投与によりGRPおよびGRPR陽性ニューロンが活性化する

DAB染色にて、L4-5におけるホルマリンの足蹠内投与により発現するc-fosとGRPおよびGPRPを2重染色すると、contraに比べipsiではマージした。しかし、GRPおよびGRPRをISHH(in situ ハイブリダイゼーション)すると差はなかった(つまりGRPおよびGRPRの発現自体には影響を及ぼしていない)。

ホルマリン誘発疼痛行動に対するRC-3095の効果

ホルマリンを足蹠内投与し、その5分後にRC-3095を髄腔内投与すると、第一相では変化は見られなかったが、第二相では有意に投与群で増強した。

補足 ~ホルマリンによる疼痛関連行動~
第一相は直接受容体を刺激したことによるもの、第二相は周辺組織の炎症による損傷により誘発されるものであると考えられてる。

ホルマリン誘発疼痛行動に対するGRPの効果

先ほどの実験ではRC-3095により疼痛行動が増強されたので、続いてはGRPを髄腔内投与することによる影響を検討した。すると第一相と第二相いずれも疼痛行動が減少した。

さらに、このモデルを用いて、抑制性介在ニューロンマーカーであるPax2とc-fosの2重染色を行った。するとGRP投与群ではPax2とc-fosのマージが有意に増加した。

CFAモデルマウスに対するGRPの効果

CFAを足蹠内投与して1日後にGRPを髄腔内投与して放射熱刺激試験を行うと、GRP投与5分後では差は見られなかったが、60分後では有意に疼痛閾値が上昇した。
(有意差はついていなかったので論文上では述べられていなかったが、contraではもちろんCFA投与による疼痛閾値の低下は見られないが、GRPを投与すると上昇傾向がみられた)


Discussion

C線維とAδ線維は脊髄抑制性介在ニューロンをフィードフォワード的に駆動させることが知られているので、今回のGRP投与による疼痛行動の抑制およびc-fosの発現誘導は、フィードフォワード活性化によるGRPRニューロンの抑制が示唆される。

CFAモデルにおけるGRP投与で効果がすぐに出なかったことに関して、CFAモデルは後角ニューロンの中枢性感作による痛みであることが知られており、急性モデルのそれとは異なる可能性によるものである。

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