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舞台裏からの 「NIPPON・CHA!CHA!CHA!」①(野外劇の意味)

野外劇「NIPPON・CHA!CHA!CHA!」制作補佐、豊川です。

本日より、舞台裏からの 「NIPPON・CHA!CHA!CHA!」と題して、
僕らスタッフ達から見えた野外劇「NIPPON・CHA!CHA!CHA!」
の情報をお伝えしていければと思います。

野外劇「NIPPON・CHA!CHA!CHA!」は、2020年10月18日より池袋西口公園の野外劇場にて上演されます。

東京芸術祭2020 野外劇「NIPPON・CHA!CHA!CHA!」

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なぜ野外劇なのか?

日々肌寒さを増すこの季節、なぜ野外劇なのでしょうか?
今回はこの点について考えていきたいと思います。
演出の中島さんは鳥取での稽古の際
「こんな野外劇がこれからのスタンダードになる気がしている」
と話していました。

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これからのスタンダードとは何なのでしょうか?

劇場という空間

劇場は閉ざされた空間です。
扉を閉めれば、外から見ることは出来ず、中に入った観客だけに共有される秘密、それが劇場文化のキモでした。

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では、なぜ演劇が劇場の空間に閉じていったのでしょうか?

それは、
「劇場の持つ力が、フィクションに対して強く作用するから」
かもしれません。
外の世界から隔絶され、日常の風景から離れることで、非日常の世界を存分に味わうことが出来る、そんな強い力が劇場にはありました。
また、そんな劇場だから伝わる表現が、無数に生まれてきました。

ですが、今回のコロナ禍において、そんな「閉ざされた劇場空間」のあり方を見つめ直さざるを得なくなりました。
閉鎖空間で演劇を続けることについて、多くの演劇関係者が頭を悩ませ、
観客の皆さんも気楽に観劇するということはできなくなりました。
野外劇という選択肢は、こうした現在の状況の中では合理的であり、
今後さらに増えていく可能性もあります。

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そもそもこうした演劇の形は、今に始まったことではありません。
元はギリシア演劇の劇場、神社の境内で演じられた能・狂言に至るまで、
照明文化の発達以前の芝居は野外で演じられることが基本でした。
シェイクスピアに代表されるイギリスのルネサンス演劇の時代も、自然光を取り入れた野外劇場のスタイルがメインでした。

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野外劇場という空間

逆に言えることは、野外劇とはそんな世界のノイズを一身に受けてしまう
ということです。

車、バスや人込みの雑踏、楽しく歓談する声、
スマートフォンの通知音。街頭広告の音。

暗転していく劇場の静寂とは真逆の空間がそこにはあります。
東京の野外で上演していくとは、そうしたノイズと向かい合うということだと思います。

それは演出の中島さんも重々理解しているようで、
野外の空間に飲まれてしまわないような舞台を作ろうとしています。

今回の上演の挑戦です。ポイントは二つです。
夕方から野外でやります。池袋の喧騒の中です。
都市の賑わいに演劇のエネルギーでぶつかっていかなければなりません。
俳優とスタッフが集結して作る熱いエネルギーで、街に何かを打ち込む。
すべては俳優のエネルギーから始まります。
生身のエネルギーによる挑戦です。

若い俳優の一人一人の身体と向かい合い、気取った演出はせず、
ただストレートに言葉を扱い、戯曲を立ち上げていく。
鳥取の野外空間で、俳優たちに何度も檄を飛ばしていたのは、
ただひとえに、世界のノイズと戦うためだったような気がします。

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このシンプルで芯の強い演出、渋さ知らズの音楽やアトリエワンの美術も
含めたチームで戦いに挑みます。

2020年、東京で野外劇をするとは?

一方、そんなふうに世界とつながってしまうからこそ、
野外劇が外の人へ働きかける力は強くなります。

もう一つのポイントは「オリンピック」を考えること。
体制に批判的な言説に対してさまざまな圧力がかかるこの時代の中で、
国家イベントが生み出す圧倒的な熱について考えることが主題の芝居です。
だからこそ東京の街中で、通りすがりの人にも開いて上演する
意味があるのです。

舞台は、池袋駅の目の前、多くの人々が行き交う西口公園の野外劇場。
その中には、演劇とはほとんど関わりのない人も多くいることでしょう。

閉じることが出来ない弱さは、
裏を返せばどこまでも広がっていける強さとも言えます。

通行人が覗き見てしまえるような空間が生み出す誤配が、
コロナ禍・オリンピックの延期された東京に投げかけるものは
何なのだろうか?
それこそが今、この時期に池袋で野外劇を上演する意味なのだろう、
そう感じます。

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チケットはワンコイン500円という破格の値段!
通りすがるだけではなく、ぜひ腰を据えてご観劇いただければ幸いです。
皆さまにおかれましても、しっかりとした防寒対策を準備の上、
池袋までお越しください。

チケットはこちらから

では次回は、そんな野外で上演される戯曲「NIPPON・CHA!CHA!CHA!」について掘り下げていきたいと思います。

(文責:豊川涼太)

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