アマゾンコンサル1

アマゾンが出店者にコンサルするワケ

新サービス情報をキャッチ

EC&流通DXの専門紙「日本ネット経済新聞」にアマゾンが準備している有償のコンサルサービスに関する記事を書きました。まだ、公式リリース前の情報です。

コンサルサービスの内容や、ECの専門家の方の見解は記事にまとめています。開設したばかりの「日本ネット経済新聞 ウェブメディア」にも記事を全文載せています(全文読むには無料の会員登録が必要。登録はメアドとパスワードの登録のみ)。

ここではアマゾンがコンサルサービスを開始する狙いについて個人的な見解をまとめたいと思います。

狙い①「出店者の底上げ」

アマゾンの狙いとして、間違いないのは出店者の底上げ。アマゾンのマーケットプレイスは楽天市場などと比べてページの作り込みや、販売施策に制限があるというイメージがあります。実際そういう側面があると思いますが、アマゾンのマーケットプレイスは進化しており、販売促進のための取り組みや広告戦略などでできることが増えています。商品力(ブランド・価格)が一番重要ですが、プライム化やレビュー獲得なども肝となります。

ただ、先行して取り組んでいる有力企業や、ノウハウを持つコンサルティング会社をパートナーにつけた出店者は、こうしたアマゾンの肝を押さえて、販売体制を整えていますが、多くの出店者が商品を出品すれば売れると思っています。アマゾンからすれば、「もっとこうすれば売れるのに!」という出店者も多いのだと思います。

アマゾンはこれまで無償でコンサルサービスを提供していました。アマゾンの社員が初期の売り上げを作るところをサポートしています。ただ、コンサルの人員は限られており、サービスを受けられる店鋪は少なかった。コンサルサービスを有償化することで、人員を拡充し、多くの出店者をサポートできるようにしたいのだと思います。

狙い②「競合対策で弱みを強みに」

楽天はECコンサルタント(ECC)による販売サポートや、有力店鋪が他店を教える「NATIONS」など人的なサポート、教育の機能が優れています。ECCは広告ばかり販売するとグチる店鋪もありますが、ショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞するような強豪店は、ECCをいい意味で使い倒して、自社の販売戦略に磨きをかけています。

アマゾンは販売プラットフォームは優れていますが、人的サポートはあまり強くありませんでした。今回、コンサルサービスを拡充することで、弱みだった人的サポートを強化し、競合に劣後していた領域を補完する狙いがあると思います。送料無料施策の件で楽天退店を選ぶEC事業者も、人的サポートが充実することでアマゾンにシフトしやすくなるかもしれません。

狙い③「中小の活性化で商品の幅拡大」

アマゾンはコンサルサービスの投入で大手事業者だけでなく、中堅中小事業者のアマゾン出品を活性化したい狙いがあります。

モール出店している中小事業者に話を聞くとやはり売り上げ比率で楽天市場が大半だというところが多い。ユーザー目線で見てもナショナルブランドの商品であれば楽天市場でもアマゾンでも帰るが、ちょっとニッチな商品は楽天市場でしか売っていないというケースが多々あると思います。

アマゾンは大手と比べると人も少なく、ショップ運営スキルも乏しい中小事業者をコンサルサービスで支援することで、バラエティーに富んだ商品ラインアップをそろえることができます。楽天市場などに劣っていた商品の幅をコンサルサービス投入によってカバーしていこうという狙いもあるのだと思います。

競争は激化の一途

楽天は送料無料施策でアマゾンに遅れをとっていた配送サービスを拡充しようとしています。施策実現にはさまざまなハードルがありますが、配送サービスを強化し、アマゾンに見劣りしない体制構築を進めるでしょう。

アマゾンはコンサルサービスで人的サポートを強化し、会員基盤や物流サービス、レビュー資産などで磨きをかけたプラットフォームを効果的に活用する出店者を増やしていきます。店舗の多様性は楽天市場の強みですが、アマゾンもその多様性を手にするとさらに強いサービスになるでしょう。

ただ、コンサルサービスの組織を育てていくことは一朝一夕にはできません。アマゾンの企業風土の中で日本的でも言えるウエットな人的サポート体制を構築できるのか、今後の取り組みを注視したいと思います。

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