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たのしい地方創生

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地域活性化の業界で働く筆者の、日常のささい気づきを、まじめ風味でお届け。
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#地域経済

#86 『実家』

2024年11月某日 とある経済団体が主催する意見交換会に出席する機会があった。地域経済の発展に向けた情報交換をすることを目的とした場である。主に地域経済のリサーチャー中心に集まって、経済モデルをベースにしながら、理論に近いサイドからの話題提供が実施された。筆者を含め、地方における人口の議論をかれこれ10年以上行っている気がする。さて、そんな場において、後半面白い話題が登場した。「実家」という概念についてである。 … 地域活性化の議論は人口の社会減の議論と不可分である中

#83 コスパから考える『宿泊税』

2024年11月某日 先日、中国地方のとある地方都市のホテルで一泊した。チェックアウトの朝、ロビーでぼーっとしていたら、お年を召した男性が、なにやらホテルスタッフに詰め寄っていた。どうやら、ホテル側が男性に案内した「宿泊税」と「入湯税」の支払いについて「ワシャ、きいとらん。」ということらしい。若いホテルスタッフは、ただただ「税」の説明をする方法しかなく、少々不憫な様子であった。なお、宿泊税を徴収しているのは行政であり、ホテルは徴収実務を「代行」しているだけである。念のため。

#79 『のどぐろ』

2024年11月某日 どの地方都市を訪問しても、「のどぐろ」が大注目されている。先日、鳥取県を訪問したが、ぐるなび高得点の海鮮居酒屋の推しは「のどぐろ」だった。また、富山県に訪問した際も、居酒屋・割烹・土産物屋など、どのチャネルでもセンターは「のどぐろ」だった。日本海沿岸の海産物ブランド界は、「のどぐろの時代」といっても過言ではないだろう。 … さて、「のどぐろ」が水産品界のインフルエンサーとして、その知名度を確かなものにしたのは、一体いつからだろうか。インターネットで

#77 『旅』という装置

2024年11月某日 最近、ふとしたことで、以前感銘を受けた小文を思い出した。たしか、著名なファンドマージャーの方による手記か何かだったと思う。その内容は、「地方の人ほど地方を知らない。そのため、自分の地域のことを相対化できず、本当の地元の良さに気づいたり、その強みを上手に伸ばしたりすることができていない。だから、地方の人ほど、いろんな地方を知らないといけない。そのために、旅をしよう。」みたいなものだった(と筆者は記憶している)。 … さて、若かりし頃の筆者は、前述の小

#68 まちづくりの『キャラ診断』

2024年6月某日 社会人としての経験を重ねていくと、なまじ知識や経験が蓄積されてくることもあり、様々な言葉の定義や文脈に敏感になってしまう。かつては、さささっと斜め読みしていた本や文書について、いちいち立ち止まって考えてしまう半端な教養を身につけてしまった。仕事は遅々として進まないが、知的生活としては、とても楽しい。 … さて、筆者は地域活性化にかかる事業の企画を生業としているが、ひとくちに「地域活性化」といっても様々な活躍の「空間」があるように思う。少し紹介したい。

#67 『地方』と『地元』の差分

2024年6月某日 先日、久しぶりに実家に帰る機会があった。到着して早々は、かつての生活に対する懐かしさが込み上げてくるし、両親も気持ちやさしい。しかし、数日たてば、「風呂に入れ」「飯はどうするんだ」という、ありがたいご指摘を受けてしまう。筆者はすでに良い年なので、そっとしておいてもらえると助かるのだか、親子関係というのはいつまでも相対的なもので、「関係性」があまり変化しないことについて、ありがたさをグギギと噛み締めることとなった。 … さて、実家に帰るとつくづく感じる

#66 アナログへの『回帰と退化』

2024年6月某日 早いもので、今年も約半分が過ぎようとしている。年度末の忙しさをすり抜けたと思ったら、年度はじめはそれはそれで忙しい。ワーカホリックにとっては、大変喜ばしいことである。楽しんでいきましょう。 … さて、筆者は地域活性化に関わる事業企画を主な仕事としてる。やることは、「地域のリサーチをして、企画書を書いて、説明して、プロジェクトを立ち上げていく」、この繰り返しである。これまでに10年以上、「地域活性化業界(そんな業界があるのかどうか知らないが)」に身を置

#64 『読まないと書けない』

2024年5月某日 大型連休明けの通勤電車は、スマホに視線を落とす企業戦士に溢れている。誰しもが現実世界への帰還をためらい、画面に表示されれる「旅行の思い出」でも復習しているのだろうか。今日もがんばりましょう。 … さて、連休などがあると、身の回りを整理したり、読めていなかった積読を斜め読みしたりして、「心の余白」を思い出すことが多い。お盆や年末年始など、一定のサイクルで「間をもつ」機会がカレンダーから自動供給されることなどは、サラリーマンの特権であると言えるかもしれな

#63 『ユーモア』の啓発

2024年5月某日 ゴールデンウィークも最終日、少し間をもって内省できたことから、色々と自分の考え方を整理できた気もする。頭もスッキリして、よかった。やはり、日々の忙しさに忙殺されていると、「アウトプット偏重」な仕事の仕方になってしまって、ユニークなアイデアを新しく着想する力が下がってしまう。「インプット」「じっくり考える」「アウトプット」のバランスを、今一度意識したい。 … さて、ユニークなアイデアを考えたり、実行する事が楽しいのはいうまでもない。一方、地域活性化事業

#61 地域活性化の『メカニズム』

2024年5月某日 「地方創生」や「地域活性化」は随分と一般的なものとなり、あらゆるビジネス主体が標語のごとく掲げている。世はまさに、「大・地方創生時代」といっても過言ではないだろう。喜ばしい限りである。 … こういう時代だからこそ、あらためて、「地方創生」や「地域活性化」の目的について考えてみたい。まず、わかりやすい概念として「地方創生」の定義を確認してみたい。2014年に施行された「まち・ひと・しごと創生法(2019年に廃止)」には、以下のような記述がある。 この