日本大学芸術学部文芸学科入学試験対策
皆さん初めましてTEZと申します。
日本大学芸術学部、通称『日藝』への入学を志望するみなさんは当然知っていることではあると思いますが、日藝の入試には学力検査とは別に『専門試験』というものがあります。
この記事では文芸学科における専門試験対策を、現役合格した私の実体験に基づいて解説していこうと思います。
1.試験形態について
日藝入試にはいくつかの種類があり、専門試験が採用されているのは一般A個別方式です。
受験日程は2022年版で
【前期】
出願日:1/5より郵送受付開始
試験日:2/15
発表日:2/25
【後期】
出願日:1/5より郵送受付開始
試験日:3/8
発表日:3/18
となっています。
倍率は2021年では前期が2.0倍、後期は1.3倍となっており、過去2年では後期の倍率が低くなる傾向にあります。そのため他大入試が落ち着いてから時間もありますので、あえて後期を狙うのは選択肢の一つと言えます。
ただ留意することとして、倍率の変動は不安定の一言に尽きます。なので受験倍率だけを見て入試方式を選ぶのは絶対にやめましょう。
あくまで得手不得手、他大の受験日程との兼ね合い、準備期間などを考慮して前後期のどちらか、または両方を選びましょう。
2.専門試験とは?
1)専門入試を受けるにあたって
全学部統一や推薦と違って一般では専門試験があることは理解されていると思いますが、ここからは専門試験についてお話ししていきます。
専門入試を受けるにあたって最も気にするべきは…
ズバリ「用意期間」です!
はっきり言って他大を受けるのであれば前期の専門試験は負担以外の何者でもありません。
本命受験が作文を必要としない一般入試であれば、全学部を受けるか後期受験をおすすめします。
というのも、日藝文芸の専門試験は特段癖の強いという試験ではないにしろ、その点練度が顕著に出ます。
つまり「やればやるだけ完成度が高くなる」試験な訳です。
そのため、一般入試の勉強をしながら専門試験対策をするというのは、本命が日藝なら話は別ですが、そうでないならあまりお勧めはしません。
もちろん両方やれることがベストではありますが、自分のキャパシティと相談しながら決めましょう。ただ言えることは、受験直前とはかなり余裕のないものです。ただでさえ精神的にも体力的にもギリギリを切り詰めている直前に専門試験を詰め込むことができるのか、塾や自分と相談してください。
2)前期と後期の違いは?
文芸学科の専門試験は
前期:作文もしくは小論文
後期:作文及び小論文
となっています。
ここで間違えてはいけないのは
前期が作文『または』小論文
後期が作文『および』小論文
ということです。
つまり単純な話後期の方が対策すべきことが増えるということですね。これだけ聞くと「後期の方が大変!」と思うかもしれませんが、ここは考えようによります。
というわけで後期、前期のメリットをご紹介しましょう!
〈前期のメリット〉
・対策は一つでいい
・配点割合が後期より低い
まず一番大きいのは一つの対策に絞れるということです。小論文と作文、どちらか一つに絞れる分、課題の完成度も上がります。
また後期試験では小論文と作文の時間配分は自分でしなければなりません。それらを踏まえると、試験当日、及び準備期間を踏まえても専門試験への負担自体は前期の方が軽くなるでしょう。
配点割合が後期より低いという点は、メリットにもデメリットにもなりますが、学力検査に自信があるのなら前期の方が有利と言えます。
逆にデメリットとしては
〈前期のデメリット〉
・他大受験との兼ね合いが難しくなる可能性がある
・どちらか一つなので完成度の要求値が高くなる
・配点割合が低い
といったところでしょう。
他大受験との兼ね合いは言うまでもなく、配点割合が低いという点も、前述した通りの理由となります。
「完成度の要求値」というのは、有体に言えば「出来栄え」です。一つの対策に絞る分、必然的に課題に対する完成度の平均値は高くなります。競争率が高くなるとも言い換えられるでしょう。
では後期のメリットも見てみましょう
〈後期のメリット〉
・専門試験の配点割合が高い
・準備期間が長めに取れる
後期のメリットはなんといっても配点割合が高いことにあります。後期の配点は学力検査:専門試験で2:3になっています。その点前期は2:1です。
試験日が遅めに設定されていることも踏まえると、文章力に自信がある方、学力がギリギリという方はこちらの方がお勧めです。
そして後期のデメリットとしては
〈後期のデメリット〉
・時間配分の必要がある
・書く分量が二倍
といったことが挙げられます。
中でも大変なのが時間配分です。
一つの課題に集中すればいい前期と違い、後期では一つのまとまった時間で二つの課題をこなす必要があります。配点が両者150点ずつということもあり、どちらかを捨てて…といった手段は取れないので、どちらもしっかりと書き切る必要があります。
3)結局前期と後期どっちがいいのか?
ここまで何度も書いてきましたが、日藝文芸学科の専門試験は
「いかに用意してきたか」つまりは「練習量」が結果に直結します!
才能や閃きというよりは、用意してきたパターンをいかにテーマに沿って発揮できるかが重要であり、そのためには何度も繰り返し練習することが重要です。
そのため練習時間を作れることを前提として、どちらが自分に合っているかを基準に判断することをお勧めします。
いくら学力検査で点数を伸ばしたくても、全く時間が取れないのに前期を選んだりするのはお勧めしません。しっかりと用意期間をとれることを前提に選びましょう!
3.専門試験対策
さてここまで長々と読んでいただいてありがとうございます。ここからは実際に私の行った対策を紹介しながら、どういう対策をとればいいのかを説明していきます。
まず前提として必要な用意を説明します
対策を始めるにあたって用意しておくのは
・採点してくれる先生を見つける
・過去問を用意する
の2点です。
文章である以上、客観視してくれる人が必要です。日藝対策の予備校に行くのが手っ取り早いですが、国語の先生などに過去問と解答例を渡しておいて、添削を行ってもらうだけでも効果はあります。
過去問を解くにあたって留意するべき点は
・時間配分を意識する
・自分の中で解答パターンを作成する
・露骨な創作に走らない
・根拠を明示できない論は立てない
・文章の基礎を徹底する
といった点です。
それでは一つ一つ説明していきます。
1)文章の基礎力について
まず前提として文体の乱れ、誤字脱字は致命傷だと思いましょう。文学を学びにきている人間が、文体を乱したり誤字脱字をしてしまうのは、はっきり言って印象最悪であると言えます。その他には敬語、語尾、言い回し、句読点の位置、用語や熟語の使い方など、文章を書く上での基礎固めを徹底しましょう。
これらはわざわざ時間をとってやることではありません。過去問を解きながら確実にミスをなくし、文章力という土台そのものに漬け込まれる隙を無くしましょう。
2)時間配分
とにかく文章の組み立てから一筆目を書き終える時間を早くしましょう。
また文章を書くスタイルは人それぞれですが、ベーシックな方法として例えば小論文の場合
1.テーマに対するアプローチを決める
2.結論を決める
3.根拠を示す
4.双括型などのパターンに当てはめて文章を作成
5.推敲、校閲
といった大まかな作業の流れがあるはずです。
これらにどれだけの時間をかけ、どれだけオーバーしたのかを測ることで、無駄や時間をかけ過ぎている部分を理解することができます。
できる限り書く時間を減らし、文章の整合性や論立て、起承転結といったものを『確認』する時間に充てられるようにしましょう。
また、練習の段階では『書き切る』ことを優先し、解答パターンの作成に努めることも大切です。
ただ本番では時間との勝負なので、最終的には時間内に推敲と校閲の時間をしっかりとれるくらいには仕上げましょう。
小論文や作文試験の本懐は『書く』ことではありません。文章を『考える』ことです。
『書く』速度を上げ『考える』時間を作ることを意識しましょう。
3)解答パターンをつくる
日藝の作文、小論文はテーマに対する瞬発力が大切です。理由としては日藝の場合、出題される題材がパターン化されているからという理由が挙げられます。
例えば作文なら「〇〇な人が登場する」といった人物を中心にさせるテーマだったり、小論文なら「自由」や「常識」といった熟語がテーマになります。
これらのパターン化されたテーマにいかに早く「落ち」や「結論」を決めて書き始め、推敲と校閲に時間をかけられるかが鍵となります。
いちいち文章を書くまでの道筋を引くのではなく、あらかじめ推敲・校閲までの道のりを、過去問を解きながら作成しておくことで、文章の完成速度と、どんなテーマがきても書き切る安定感を身につけましょう。
一番良くないのは、毎回毎回文章の書き方、論立てや章立てを変えることです
テーマによって文章としての完成度、つまりは論立てや章立ての完成度に差が出るようでは本番に不安が残ります。確実に、どんなテーマが来ても同じように文章を書けるようにパターンを作成して臨みましょう。
4)作文でむやみに創作に走らない
作文と聞いて創作作品に走りたくなる気持ちはよくわかります。しかし一時間というわずかな時間でゼロから物語を作り、章を立て、文章を構築することはかなり難易度が高くなります。
創作、フィクションとはすなわち嘘です。そして嘘を嘘と思わせないためには念入りに練られた設定や世界観が必要であり、それらを表現するのが言葉であり文章です。
ピンと来ない人は考え方を変えてみて下さい。
採点する相手は文学を研究している大学の教授であり、その教授にたった一時間で思いついた嘘を嘘とも思わせないように書くことが果たして自分にできるのかと自分の胸に問いかけてみましょう。おそらくなかなかに厳しいと感じるのではないでしょうか?
これらを踏まえると、日藝の作文に関しては字数、時間を考えるとに実体験に基づいた回顧録あるいは随想といったスタンスが有効です
下手な嘘をつくよりも、真実を少しだけ改変して面白みを持たせる方がより文章作品としての完成度が高くなります。
そしてなによりもゼロから物語を作るわけではないので、時間の面で圧倒的に余裕が生まれます。
特に後期試験の場合、2時間で作文と小論文の二つをこなす必要があります。その点、随想や回顧録的なアプローチを固ておけば時間に余裕を持たせ、小論文に時間を割けるでしょう。
安易に作文=フィクションという思考で課題に臨まないことをお勧めします!
5)小論文では無理筋な論は展開しない
小論文の難しいところは、テーマに対するアプローチ、つまり「自分の意見」をいかに独自性あふれるものにするかという点と、破綻や矛盾なく筋の通った論を貫徹することができるかという点を両立するところにあります。
この点において、練習段階で気にかけるのはまず第一に論理の整合性、そして第二にアプローチの独自性です。
文芸学科は特に「文章」としての完成度に重点が置かれます。
どんな奇抜な発想も、前提として文章として、論として成立しなければ見向きもされない学科なので、まず自分の意見が「論」として成立するかに神経を尖らせましょう
そして後者である独自性ももちろん大切です。特に文芸志望の受験生は文章力の土台が出来上がっているので、勝負のポイントは「いかに面白く論として成り立っているか」です。
これらを鍛えるために意識しておくことは
・一般論を抑える
・あくまで証拠や根拠ありきで論じる
この2点に終始します。
奇抜な発想というのも考えようで、つまりは一般論とは違う論を展開すると考えましょう。
一番悪いパターンは一般論に逃げた挙句、少しだけ違うと言い訳を並べ論証が成立しないという展開です。
小論文のテーマへのアプローチに関しては、場数をこなすことが大切です。とにかく時間の許す限り例題を解きましょう。
日藝の小論文は前述した通り単語に対する論を求められるパターンがほとんどです。「こういう単語が来たらこう答える」という漠然としたものでもいいので、受験準備の段階ではアンテナを広く持つことも大切です。
4.まとめ
いかがでしたか?
私も現役合格した時は毎日2テーマは小論文、作文ともにやっていました。お陰で本番もテーマに躓くことなく試験を乗り切れました。
日藝の文藝学科を受験するにあたって、なによりも大切なのは赤を付けてくれる指導者を見つけられるかです。
当時の恩師に「文章は客観視して初めてその未熟さに気づく」と嫌という程言われました…笑
とは言ってもそれら全ては本人の意欲次第です。私の示したものはあくまで一例であり、これだけやっていればいいというものでもありません。もし少しでも違和感を感じるなら身近な人に早め早めに相談することが大切になります。
受験にフライングはないという言葉は月並みですが、小論文、作文対策もまた例外ではないことを覚えていただけたら幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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