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緊急事態宣言下における百文字日記(6)
4月7日、緊急事態宣言が発出され、
我々の生活は、輪をかけて不安定に。
いま、この「変な状況」だからこそ、
書き留めておきたいことがあるはず。
うちで楽しめる、みんなの暮らしの、
「おつまみ」になれるようなものを。
近畿圏では、緊急事態宣言が解除!
果たして、吉と出るか、凶と出るか。
おねがいします、なるべく健やかに。
なるべく健やかに、おねがいします。
イシュー
子供の頃は泣き虫だった
大量の汗をかくし、
生まれ変わりやすい
五月二十日 水曜日
短歌とか俳句とかって、ムズカしい。つくってみると楽しいのだが。上手いとか下手とか言われ、評価され、何がいいとか、わるいとかさあ。「生活」は、だれにも「評価」されないで、ただそこにある、それだけでいい。
五月二十一日 木曜日
愛することと愛されることは互いに線対称か、それとも点対称なのか。思うに、愛したいという欲望も、愛されたいという思いも、紙を二つに折れば重なるようなものではないかと思う。方向が違うだけ。ただ裏表の別物。
五月二十二日 金曜日
ポケモンが街にあふれていたら、どんな生活になるんだろう。ポケモンが楽しく暮らせる街は、きっと成熟した街なんだろう。ゲームは一度もしたことないし、アニメも熱心に見ていたわけではないのに、憧れてしまった。
りと
唇の発色がいい
親知らずが生えてきた
怖いから歯医者には行かない
五月十九日 火曜日
近所の一軒家。仲良しの犬が散歩するのを見かけなくなった。引っ越し業者じゃない人が荷物を運び出していた。昨日の朝、家の前に重機が一台停まっていた。今日の昼には、がれきの山になっていた。ただそれだけの話。
五月二十日 水曜日
朝早く起きて、パン生地を仕込む。パン生地を抱く。ルターについての講義。発酵が進む。就活の説明会。生地を分ける。ベンチタイム。成形。二次発酵。余熱。焼く。労働とイーストの匂いがこびりついた今日が終わる。
五月二十一日 木曜日
友人から借りた本を読む。開きやすいページを見つける。開き癖がついていた。そのページを何度も読む姿を想像する。この友人と初めて会ったのはいつか、と聞かれたら、開き癖を見つけた今この瞬間のことを話そう。
りょう
お金を使うのが得意
運命を信じる
東京の次に大阪が好き
五月十六日 土曜日
彼氏はいつも空の状態を確かめるし、下を向いて歩くわたしに上見て歩けよと彼氏は言うけれど、たまには下を向いて歩くのもいいなと彼氏が珍しく言ったのは、道端にいまにも飛びそうな大きいゴキブリがいたからだった
五月十八日 月曜日
良いことがあったとき、夢みたいだ!と思っていつか終わりが来ることをかなしむ癖があるけれど、今日観た映画で、これは夢だと思えばいいのよ、と言っていて、ぜんぶ夢だと思えばいいんだなとすごく簡単なことだった
五月二十二日 金曜日
久しぶりに化粧をして人が多い大阪の街を歩いていると、少し前の遠い昔を思い出してうれしくて気持ち良くて、なにもかもなかったかのようにみんなマスクをつけて歩いていて、テイクアウトの文字が目にたくさん並んだ
珍道中
犬の魔法使い
季節柄むくみやすい
何もかもちくわに詰める
五月十六日 土曜日
金の指輪は落としたときにキンキラキンと鳴って説得力がある。ハートの真ん中に魔除けの橄欖石が嵌っている。地球のマントルや隕石は橄欖石でできているというので、人間は地面から生えたか空から来たかの二択だ。
*橄欖石=かんらんせき:ガラス光沢をもつ、黄緑色の石。特に美しいものをペリドットと呼ぶ。
五月十七日 日曜日
夜勤の顔ぶれは大体同じというのはこの世の仕組みからしてよくあることだ。正午、よく見かける夜勤の人が私とすれ違う、お互い知らんふりだ、真っ白なシャツを着ていて長い坂を結構な速度で結構な速度で下ってく。
五月二十二日 金曜日
人間と話さないから神様と話したいと思う、そこでおみくじである。私がこれから生きる人生について、別に全然いいんじゃんと書いてある。私は周りをイエスマンで固めているわけではないが、たまたま気が合うのだ。
山
作ったり書いたりする
エッチな部屋に住んでる
特に椅子がエロい
五月十六日 土曜日
わからないことは多い。空を見て、何万年も昔の人と目が合うこととか、いま自分はどこにいるのかとか。視界の星をできる限り多く結び直線を引き、そのまま読みかけの本に挟むと、いつでも戻ってこれる気がしている。
五月十九日 火曜日
観ようかな、と思ったまま何となく観ずにいた映画を、唐突にゼミの教授から勧められて観た。あらゆるものには然るべきタイミングがあり、そうして起こる巡り合わせに人生の分岐を託す。主体性を外注して生きるのだ。
五月二十三日 土曜日
久しぶりに京都市バスに乗る。誰よりも先に乗車したいババアと誰よりも先に乗車したいババアが目の前でぶつかり合い、5系統銀閣寺行きはやむなく爆発した。次のバスまでは20分あるので、キディランドで落ち着く。
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