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緊急事態宣言下における百文字日記(5)

4月7日、緊急事態宣言が発出され、
我々の生活は、輪をかけて不安定に。

いま、この「変な状況」だからこそ、
書き留めておきたいことがあるはず。

うちで楽しめる、みんなの暮らしの、
「おつまみ」になれるようなものを。

等しく誰もがたのしめるものように。
健康に過ごすためのひとときを作る。

イシュー

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衣替えという概念がない
ティッシュが家にない
扇風機を年中使う

五月九日 土曜日
 文学、デザイン、芸術、そのほか。一部の特権階級のものには絶対にしない。すべて我々の手元に引きずり下ろし、持たざるものだって手に掴めるように、口ずさめるようにしなきゃ。高尚であることの弊害に目を凝らせ。

五月十三日 水曜日
 東京に憧れがない。土地や場所にあまり執着しない、あるいは、自分の中の執着を意識していない。海と山に阪急電車、ポンピドゥーとMORI YOSHIDAがあり、代々木公園と森美、御苑がある街に住めたらベスト?

五月十四日 木曜日
 タトゥーを彫らない、ピアスを開けない理由。結局生身の手つかずのこの肌の、すべすべ無地で凹凸のないデザインが好きなのだ。平行世界の僕は、背中に大きな刺青を入れて、耳にでもどこにでも幾つも穴を開けている。


りと

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自己ってなに
自己紹介ってなに
なに書けばいいの

五月十二日 火曜日
 午後。カーテンが揺れるのを見ていた。スマホは見たくないから、畳んだ洗濯物の下に埋めた。仰向けになる。あのシーリングライトはもうマブダチ。毎日顔を合わせているから、お互いの酸いも甘いも知り尽くしている。

五月十三日 水曜日
 いいことがあった。今日は次に起こるだろう不幸を思うことも、悲しくなることもなかった。このままもう少し味わっていたい。瞼が閉じないように、眉を持ち上げる。今眠ったら、いいことが薄まってしまいそうだから。

五月十四日 木曜日
 長袖短パンの季節こと、初夏。私もついに解禁しました、長袖短パン。やはりいいものですね、長袖短パンは。こんなにかわいい長袖短パン姿を見せられないのは残念。異論は認めます。人によって服装の好みは違うので。


りょう

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外食をしたい
買い物がしたい
部屋が片付かない

五月九日 土曜日
 お腹が空いたけれど、面倒でお昼ごはんを作りたくなかったので、かぼそい声で、助けて…と言って彼氏に抱きついてみたが、なんやねん、そのいかにもな演技は、腹減ってるだけやろがい!とバレていたが、作ってくれた

五月十二日 火曜日
 人とおはなしがしたい(チュンチュン、ザーーーーッ、コンコンコン、ブォォオーッン、ボー、ゴトンゴトン、カラカラカラカラ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴー、ガタンゴトンガタンゴトン、ペラッ、ゴォオーオゴォオーオ)

五月十三日 水曜日
 すっかり社会から取り残されてしまった気分になる毎日だけど、好きな映画や本の他、音や匂い、味にやさしく触れることができることにありがたみを感じながら、友達と連絡を取ることで自分が生きていることを確認した


珍道中

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犬の警備員
ギャルを真似してしまう
将来の夢は短パン屋さん

五月十日 日曜日
 十五年前、ピンクのバラの良い匂いがする油を渡したらお小遣いをつまらないものに使うなと怒られたうえ、例の良い匂いのつまらない油はまだ大事に飾られているので、なくなるまで新しいものはもらうまいと母が言う。

五月十一日 月曜日
 蝉や蛇の脱け殻を集める喜び、私は人間の脱け殻を集める。植え込みに隠されたマックシェイクの容器はどうか。あれは人間の脱け殻であると同時にマックシェイクの脱け殻でもあるので、その専門家に譲るのがマナー。

五月十二日 火曜日
 今日取り組んだことが全く報われないことを知ったときの私は時間を無駄にしたと思ったが、私は何かが人生に充満することがいいことだとは思わない。私は護身用の棍棒を兼ねて持たされたむくみとり棒だけ携えて往く。


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作ったり書いたりする
よくジャムを煮る
ダジャレを考えている

五月十日 日曜日
 雲間から差す朝焼けに赤く照らされた低い雲が、屋根の上をグングンと風に流されているのを見る。ピーポーアータイピング…ピーポーアータイピング…現在、ただ一つ届くことが決定している私宛の言葉に集中する。

五月十三日 水曜日
 誰にも何も告げずに行う旅の途中、自分の所在を知る人間がいないことに安堵する。生活の端々で発生するそれに幸福の限界量を知る。いま毛布を抱いていること、二の腕の痣、誰にも認識されない孤独が帯びる人肌の熱。

五月十四日 木曜日
 踏んでも蹴っても内定は出ないが、企業に迎合する為にもの作りをしてきた訳ではない事を表明すべく今日もボックスステップを踏むのである。そのうち手や腰や顎でリズムを取り始め、遂に私はブカレストの舞台に立つ。

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