たからもの

毎週金曜日の20時から沖縄県のRBCという放送局にてオンエアされているラジオ番組「シンカの学校」に投稿したラジオドラマの話です。どこかに記録しようと思い、ここに書き出した次第です。短いので軽く読めると思います。


たからもの

「お母さんのバカ!」
SE(走ってドアを閉める音) ※SEは無くても可
そう言って娘のユリが部屋へ入って行った。
今月に入ってもう何回目の喧嘩だろうか。
いつも些細なことで言い合いになる。
夫が外国へ長期出張中のため、家には私と娘しかいない。だからきちんとしつけようと思うのだが、ついつい空回りしてしまう。
小さい頃は「お母しゃん、お母しゃん」と言いながら私のあとについて離れなかったのに。
小6になった今は「はあ」とか「うん」しか言わなくなった。難しい年頃になったのかな。
思わずため息をつきながら「私、母親失格なのかな…」と呟いていた。

「そんなことないよ」
いつの間にかユリが立っていた。
「さっきは言いすぎた、ごめん」
「ユリ…」
「それからこれ」
と何やら包装された箱を差し出した。
「これは…?」
「学校で作ったんだ。お母さんの誕生日そろそろでしょ?少し早いけどプレゼント」
そう言って部屋に戻って行った。
私は手にした箱を開けて中身を見た。
そこには手作りの丸型のランプシェードが入っていた。ランプシェードの上部は和紙で出来ており、私の好きな花火の模様が描かれていた。
ランプにスイッチを入れ、部屋の電気を消してみると、部屋中に花火の模様が広がっていった。
「綺麗…」
まるで花火が打ち上がったように見えた。
その様子をユリが部屋から顔を出して見ていた。
「ユリ、ありがとうね」
そう言うと、ユリも「おめでとう、お母しゃん」と言って、笑った。

終わり

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