つなぐもの

毎週金曜日の20時から沖縄県のRBCという放送局にてオンエアされているラジオ番組「シンカの学校」に投稿したラジオドラマの話です。どこかに記録しようと思い、ここに書き出した次第です。短いので軽く読めると思います。

つなぐもの

今日は我がシンカ学園の文化祭。
各教室で縁日やスタンプラリーやファッションショーをしたり、昔の映画を上映しているクラスもあった。タイトルは10ROOMSと書いてある。面白そうな映画だ。
「ミホ、何やってるの?」
友人のサキが声をかけてきた。
「さーきーごめん、映画のポスター見てた」
「のんきだなあ。席が無くなっちゃうよ。早く体育館へ行こう」
「うん、急ごう」
体育館では生徒によるバンド演奏が行われており、トリはうちのOBでプロになった先輩達が演奏する事になっていた。
サキはこのOBバンド「ベルフォールズ」のファンだったので、飛び上がるほど喜んでいた。私は付き添いくらいの気分だったが、プロの演奏を聴ける興奮でテンションが上がっていた。
体育館のライトが消された。窓に貼り付けた即席の目隠しでは光が漏れるものの、だいぶ暗くなった。
「いよいよだね、さーきー」
「あーもう心臓が爆発しそう。私の心臓の音聞こえてない?」
「少しだけね」
そんなたわいもない事を話していると、誰かがカウントダウンを始めた。「10!9!8!…」
皆が真似をして、私たちも声を上げた。
「3、2、1、ゼロ!」
SE(ギターの音。番組で使われている曲で可。もしくは歓声の音)
「皆さんこんにちは、ベルフォールズです!今日は文化祭に呼んでくれてありがとう!」ボーカルのシホさんが、大歓声に負けない声でお礼を述べた。
ギターの美鈴さんやドラムのマリコさんが笑ってるのが見えた。2人はシンカ学園のOBで、昔この文化祭でバンドを組んで演奏し、プロになったと言う事をサキに聞いた。その程度の知識だったが、今はその演奏に目が釘付けになった。
暫くして、サキが心配そうにこちらを見ているのに気づいた。何故かボヤけて見える。「あれ、私、泣いてるの…?」いつの間にか涙を流していた。

ライブはあっという間に終わり、彼女達は笑顔でステージから去っていった。
音楽は形として残らないけど、心に残って響くのだろう。私はいつの間にか楽器店に向かっていた。何が始まるかは分からない。けど、音楽をやりたい衝動だけが私を動かしていた。
「私、音楽がやりたい!」
その決意を、夕陽だけが優しく見守っていた。

おわり

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