マイバレンタイン

美鈴「これ、食べて下さい!」
勇気を出してチョコを差し出した。
14年間生きて来て最大のチャレンジだ。
相手は一個上のバレー部のキャプテン。ライバルは山ほどいる。
どれ位の時間が過ぎただろうか。
彼の口から出たのは「ごめん」の一言だった。
最近彼女が出来たとのこと。

私の恋は一瞬で終わった。
持て余したチョコを持って教室へ戻る。
「美鈴はよく頑張ったよ」とクラスメイトの志保(しほ)が慰めてくれた。
そこへ「何をしょげてんだ?男にでも振られたか?」と同じくクラスメイトの聡太(そうた)がニヤニヤしながら近づいて来た。普段は鈍感のかたまりのくせに、こんな時だけ勘が良い。
私は聡太がどんな反応をするか見たくて、突然「これ、あげる」とチョコを渡した。あっけに取られる志帆と聡太。何だかそれが面白くて、笑いながら教室を出た。
すると聡太が追いかけて来て「ちょっと、待てよ」と呼び止めた。
聡太「さっきのアレ、もらって良いのか?」
美鈴「うん、良いよ。食べて。」
聡太はうつむき、小さく震え出した。怒ってるのかな?
聡太「やったー!生まれて初めてバレンタインチョコもらったー!ありがとうー!」
美鈴「え、うん、どうも」
こんなに喜ばれるとは思わなかった。そして、こんなに笑顔が爽やかなやつだとは思わなかった。
少し良いなと思いながら、はしゃぐ聡太を見ていた。
これが、新しい恋の始まりになるとは、その時の私には知る由もなかった。

終わり

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