一人暮らし

遠くでモノレールの音がする。
今夜も仕事で遅くなり、かなり疲れた。
OLの一人歩きには少し物騒かもしれない。
昼間は「よろしくお願いします!」「失礼します」「申し訳ございません」をいくつか言ったあと、ひたすら書類作り。気がつけばこんな時間だ。仕事に追われる毎日に限界も感じ始めて来た。
それでもお腹は減る。
スーパーで割引された惣菜を買い、誰もいない部屋に帰る。「ただいま」もちろん誰からも返事は来ない。
手を洗い着替えをして、遅い夕ご飯を食べようとした時、ドアの郵便受けに何か挟まっているのに気づいた。取り出してみるとそれは1通の手紙で、祖母からだった。
さっそく開いて読んでみる。
「美鈴、元気にしてますか。あなたが一人暮らしを始めたと聞いて手紙を書きました。慣れない暮らしで困っている事はありませんか。私はそれが心配です。何もしてあげられないけど、寂しくなったら電話とかして頂戴ね。話し相手くらいにはなれると思います。それでは体に気をつけて。祖母より。」
「お婆ちゃんったら…ありがとうね」
手紙を仕舞おうとしたその時、もう一枚あるのに気づいた。めくって見てみると、そこには「お婆ちゃんにしてくれてありがとう」と書かれ、隅っこに1993113と走り書きもあった。
「1993113…1993年11月3日…これ、私の誕生日だ。そう言えば私は初孫だったっけ」
嬉しさと共に涙が出てきた。
もう寝てるはずだから、明日電話しよう。
「お婆ちゃんありがとう、私頑張れそうだよ」

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