忘れられない日

その日は特別な試合だった。
警備も厳重な施設で、決まった車と人しか入れない。
「いくら選抜大会とはいえ、子供サッカーの試合なのに大袈裟な話だこと」と呟きながら眠りについた。

…携帯の着信音で目を覚ます。
目覚ましは?「しっかり止まってるぅ!」
顔面蒼白になりながら電話を取る。もちろんチームのコーチからだ。「いまどちらですかぁ!エースで10番でキャプテンの息子さんがいないと困るんですけどぉ!」
「す、すみませんでした!」と見えない相手に平謝りして電話を切った後、泣きながら息子を超特急で着替えさせ、小雨の中で迎えにきたコーチと凄い勢いで会場へと向かっていった。

数時間後、コーチより連絡が入り「チームは優勝しましたぁ!」との連絡が入った。試合中はかなりの大雨で荒れた試合だったが、息子の決勝ゴールが見事に決まり優勝したそうだ。
「本当に本当に申し訳ありませんでした」
感謝より謝罪の気持ちしか出てこなかった。

その日の夕方、別の会場にて表彰式があり私も出席した。そこで表彰状とトロフィーの授与があったのだが、一つずつしかないのでジャンケンで取得する事になり、なんと息子が表彰状をゲットした。
「やっぱり今日は特別な日だったんだね」
と寝坊の事などとうに忘れた息子は微笑んだ。
その表彰状は今でも額に入れて飾ってある。
彼の12歳の誕生日は波乱のち、晴れの日であった。

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