反省会

毎週金曜日の20時から沖縄県のRBCという放送局にてオンエアされているラジオ番組「シンカの学校」に投稿したラジオドラマの話です。どこかに記録しようと思い、ここに書き出した次第です。短いので軽く読めると思います。

反省会

SE(波の音)
波の音を聞きながら、潮風を受けている。
私と友人のマリコは海に来ていた。
もう1時間になるだろうか。しばらく沈黙が続いていたが、マリコがぽつりと言った。
「文化祭のライブ、残念だったね」
私は黙って頷いた。喋ってしまうと泣きそうだったからだ。マリコが続けた。
「もう少し上手くやれると思ったんだけどなー。美鈴のギターは結構良かったよ」
私は首を振った。やはり言葉が出ない。

私とマリコを含めた4人で即席のバンドを結成し、文化祭のイベントに出演したのだが、結果は惨憺たるものだった。1人がズレるとみんな慌ててしまい、何とか最後まで演奏したものの、とても演奏とはいえない出来だった。
短い期間とはいえ、あんなに練習したのに…。

「でもさぁー、私たちは頑張ったと思うよー。うん、頑張った。よくやったと思う」
「(小声で)…くやしい…」
「えっ?いま何か言った?」
「(小声から段々大きくなる)くやしい…くやしい…くやしい、悔しい、悔しい悔しい悔しい!」
「み、美鈴…」
私はいつの間にか立ち上がって大声を出していた。思い出作りみたいなバンドだったが、今は情けなさと悔しさで胸が一杯になっている。
「マリコ、私このまま終わりたくない!もう一度、このバンドで演奏したい!」
私の真剣な表情に、マリコも真顔になった。
「本気…なんだね美鈴」
「うん、諦めたくない」
私は大きく頷いた。さっきより明確な意志を持って。
「…よし、やろう!他の2人が何て言うか分からないけど、説得してみるよ」
「ありがとう。私も一緒に説得する」
「何か再スタートって感じで良いね」
マリコはそう言ったあと、海へ向かって叫んだ。
「もう一回バンドやるぞー!」
私も真似して叫んだ。
「演奏上手くなるぞー!」
同じ言葉を何回か叫んだ。
そうして2人で顔を見合わせて笑った。
潮風が少し涼しくなって来た。秋の気配を感じながら、すっきりした表情で海を見続けていた。

終わり

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