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アイアンの吊り棚から、スペインの港町の古びた倉庫を想う(柏 PEC bar de España)

突然ですが、今からスペインの港町に行ってみませんか?
もちろん実際に行くわけではありませんのでご安心を。空想で世界を旅するイメージトリップです。航空券もホテルの予約も要りません。さぁ、それでは早速スペイン旅行に出発しましょう。

今あなたが辿り着いた場所はスペインのとある港町です。スペインの港町ですよ。カモメの鳴き声や波の音が聞こえてきますね。港に係留された何艘もの船が、暖かい日差しと穏やかな波に合わせて揺れています。

白い壁に赤いレンガ屋根を冠した街並みが見えてきました。休日ともあり割と人通りが多いですね。せっかくなので目の前の通りをしばらく歩いてみましょう。

町のはずれに小さなお店が見えますね。どうやらバルのようです。おそらく昔は船を格納し修理する場所だった小さな倉庫だったのでしょう、オシャレにリノベーションされています。ありますね。そう、あるんです。薄いベージュの四角いシンプルなつくりの建物。その正面には黒のペンキでお店の名前が描かれていて、店の入り口にはスペインの国旗と木目の美しい大きな舵がディスプレイされています。黒板のメニューボードに目をやると、そこには今日獲れたばかりの新鮮な魚介を使ったおすすめメニューがいくつか書かれていました。

ちょうどお腹もすいてきた頃です。勇気を出して店内に入ってみましょう。

中に入ると、テーブル席に座って食事を楽しむ人々の陽気な会話が聴こえてきました。カウンターには地元の常連さんでしょうか、店内のモニターに流れるサッカー中継を眺めつつ、店員の男性とサッカー談義で盛り上がっているようです。

正面奥にレンガの壁が見えます。そこにもアンティークな船の舵が鎖で吊るされています。きっと昔の船に使われていたものでしょう。その他にも店内の至るところに古い錨やロープなどが天井から釣り下げられています。

店員さんが席へと案内してくれました。まずは簡単な料理をいくつかオーダーし、料理が運ばれて来るまでの間もう少しだけ周囲を見まわしてみます。薄暗い店中にはシェードのない裸のままの電球がいくつか灯されていて、白い壁一面に飾られた古い写真をぼんやりと照らしています。いつ頃撮られたものでしょうか。

そうこうしているうちに、良く冷えた白ワインとタパスがテーブルに運ばれてきました。美味しそうな香りが漂ってきます。それではゆっくりと食事を楽しみましょう。


さぁ、いかがでしたでしょうか。スペインの港町に佇む小さなバル。皆さんが辿り着いたのはもしかしてこんなお店ではなかったでしょうか?


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半ば無理やり皆さんをお連れしたのは、柏駅からほど近い場所にある「PEC」という名のスペインバルです。そうです、スペインに向かったはずがなぜか常磐線で柏に辿り着いてしまいました。

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「PEC」のオーナー野々村さんは、飲食業界で働くようになった20歳の頃、偶然出会ったスペイン料理のお店でスペインの食文化に触れたことがきっかけでスペインバルの魅力にはまっていったそうです。その後も飲食店で経験を積んだのち、当時働いていたお店の閉店を機に「30歳までに自分の店を持つ」という目標を掲げたそうです。


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すいません、間違えました。
下の写真左がオーナーの野々村さんです。

PECスタッフ


スペインバルの開業に向けては実際にスペインを訪れ、1ヶ月半滞在するほどの根気の入れ様。現地の料理やお酒、そしてお店や街の雰囲気を全身で感じ取り、帰国後はいくつかのお店で修行を積んで、遂に目標の30歳で念願のスペインバル「PEC」をオープンさせました。

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ご覧ください、この美味しそうなフードの数々!!お手頃なお値段で気軽に美味しい料理とお酒が楽しめる。それこそがスペインバル最大の魅力です。
ここではとても紹介しきれないので、詳しくはぜひPECさんのInstagramもチェックしてみてくださいね。


今回、私たちが野々村さんから「PEC」の吊り棚製作の相談を受けたのは、2020年の3月頃のこと。「キッチンカウンターにディスプレイも兼ねた吊り棚を作りたい」というご要望でした。設置する場所はお店の中でもお客様からよく目に付くところだったので、ご依頼を受けるこちらとしても一層気合いが入りました。

「フレームはとにかく細く。できれば倉庫の無骨さが感じられるテイストで。」野々村さんからのリクエストを聞きながら、彼の頭の中にあるイメージを具体的なビジュアルへと変換していきます。
「普段使いのお皿が置けて、缶詰などのストックもディスプレイとして見せたい。元々備え付けられていた照明も効果的に生かしたいですね。棚板を網目のメッシュにしたら、無骨なテイストながらもライトの光が抜けてカッコいいかな。」

PEC吊り棚6


こちらが何かを提案をするまでもなく、野々村さんの中にはかなり具体的なディテールが存在していました。今回はそのディテールを引き出せるだけ引き出すのが私たちの役目。

そうして引き出した要素をプロダクトに落とし込んでいきます。まず使用したフレーム素材は全て鉄のクロカワ材。中段の棚はメッシュ状のエキスパンドメタルを張り、照明の光が抜けるようにして間接照明的な機能も確保。ここはびん詰めや缶詰めなどのディスプレイ品を並べる空間になりました。そして2段目の棚にはフレーム枠の内側に木板を収めてお皿を積み重ねるスペースとなりました。上下どちらの棚も外周には落下防止用の細い丸棒を取り付けました。

PEC吊り棚1

製作した私たちにとっても大変お気に入りの棚が無事に完成しました。
納品の際には遊び心で、PECさんのロゴを入れたオリジナルの真鍮プレートを棚の端のほうに張らせて頂きました。

PEC吊り棚3

このプレート、オリーブオイルを塗った真鍮板をバーナーで炙ってわざと焦げ跡と熱変色をつけてから金ブラシで擦ってエイジングをかけています。何とも言えないオールド感を出すことができました。

PEC吊り棚5

下段の棚の木板も木目がきれいに出るように目出し加工を行い、オイルステンを使ってお店の色合いに合わせた濃い目のブラウンに着色。

PEC吊り棚4

うん、ナイスなカウンターの風景!
こうしてこだわりのある店舗様の内装に携わらせて頂くのは、モノづくりをしてる側としても本当に責任とやりがいを感じる瞬間です。お店に来店されるお客様にとって居心地がよく、かつ非日常的な刺激や魅力が溢れる空間を演出するために、自分たちの知識と経験をもっと高めていきたいと日々思っています。

そして今回の製作で感じたのは、プロダクティングにおける野々村さんのディレクションがとても明確、かつディテールが鮮明だったこと。実際に「PEC」のお店に足を踏み入れて頂ければ、オーナーのこうしたこだわりが店内の細かなところにまで行き届いていることを感じて頂けると思います。

ちなみに。

吊り棚だけでなく、実はカウンターの足置きも私たちで担当させて頂きました。もしお店に行かれることがありましたら、ぜひ一度カウンター席にも座ってみてくださいね。こちらも無骨でインダストリアルなアイアン製です。

PEC足置き1


というわけで、今回ご紹介したのは柏の「PEC bar de España」の吊り棚でした。

柏で軽く一杯、そんな時はまずPECさんからスタートしてみてはいかがでしょうか。一人でも行ってもご友人と一緒でも、いつだって楽しい時間が待っているはず。だってそこは陽気なスペインバルですから。
海外を旅したことのある人ならきっとわかるはず。知らない街で自分に声をかけてくれた現地の人の温もりや、初めて食べた料理の感動を。
お店が内装の細かいディテールにこだわるのは、単なるカッコよさじゃないんです。そうした忘れられない体験というのは、その空間に存在する人や料理だけでなく、壁やテーブルや床、照明や音楽そして香りなど、その空間にある全てが醸し出す「何か」に基づいているから。

スペインの港町に佇む倉庫のようなバル、ちょっと覗いてみたくなりませんか。旅の続きはもうイメージトリップじゃなくて大丈夫。柏駅南口から徒歩数分の場所であなたの来店を待っています。

ちなみに吊り棚はカスタムメイドでのご注文となりますので、仕様や金額等についてはお気軽にお問合せください。
詳しくはTexture Web Storeをご覧ください。

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<取材・撮影協力> PEC bar de España

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PECさんが昨年末に2号店「STAN」をオープンしました。そちらも是非!

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最後までお読み頂きありがとうございました。
「Texture」ディレクターの青木でした。

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