映画「悪と仮面のルール」が美しかった話

 2010年に出版され、2018年に映画化されたお話です。アマゾンプライムにて視聴しました。
※以下、ネタバレ気にしていません

どんな話?

 新興財閥当主の妾の子として生まれた主人公・文宏が、彼を"邪"という存在に変えるために養女にされた女性・香織をひたすら愛して守る、というお話です。彼女を守るためなら殺人をも厭わず、彼女を守るために人生と名と顔さえ捨てる究極の愛を持った男性の物語です。

 文宏の少年期を演じたのは板垣李光人。仮面ライダージオウのタイムジャッカー・ウール役、の方が通じが良いでしょうか。顔も声もとても美しいです。漫画から抜け出てきたような美少年。青年期は玉木宏。故人である新谷弘一の顔と身分を手に入れ、文宏ではない男として香織を見守ります。

 香織の青年期を演じたのは新木優子。邪の血筋に翻弄される儚くも強い女性であり、何よりも美しい。クラブのホステスなのに簡単に本名名乗っちゃうような抜けた…もとい純真な女性を見事に表現していました。

この映画のどのへんが美しかったの?

 冒頭の財閥の屋敷からして既に美しく、少年期の文宏と香織も美しく、二人が惹かれ合う様子も。時代が飛んで青年期に移行してからも、新谷(というか玉木宏)の鍛え抜かれた肉体も美しいです。何と言っても香織(というか新木優子)がもう最高に美しい。ただカフェで本を読んでいるだけでも美しいし、店の外で客を見送る姿も美しい。何なんでしょうね。女神?

 お話としても、とても美しい作りだったと感じています。まず、香織が何ら危険に晒されないところ。普通のミステリーやサスペンスなら、絶対に誘拐されて監禁されます。怖い目に遭います。ところが、この作品では新谷が守りに守るので平素なままです。何も知らず、汚されることもなく、美しいままにただ新谷と出会い、そして別れていくのです。この儚さ。新谷の心情を慮れば慮るほど、こちらの心に突き刺さるのです。

 そしてラスト15分ほどの長い長いモノローグで見せる二人の涙と心の交流。本当にここが素晴らしく美しいんです。あくまでも文宏の知人として振る舞いたいのに勢い余って感涙し、バレバレの作り話で香織に気持ちを伝えていく新谷。急に文宏の名前が出てきて驚いたものの、すぐに真実を察する香織。求め合わず、触れ合わず、あくまでも今の二人のスタンスを崩すまいとする。崩したら果てのない深淵に落下してしまうことを悟っている二人の切ない別離からの俺号泣。2回観て2回とも号泣ですよ。2回めなんてもう全部分かってるのに、それでも泣けるってよっぽどですよ。

最後に少しだけ推薦文など

 冒頭から"邪"だの"損なう"だのと専門用語出てきちゃうので「???」となりはするものの、あまり気にしないで雰囲気だけ掴んでいけば、十分楽しい作品です。途中で文宏の過去だけでなく、新たに手に入れたはずの新谷の過去まで絡んできて、決して多くはない登場人物でありながら層の厚い物語が展開していきます。

 人を殺したり女性を買ったりする場面もありながら、物語の軸としては純愛モノなんだろうなあと思います。愛ゆえに罪を犯し、愛ゆえに離れていく。美しいですねえ。ぜひご覧頂きたい。(了)

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