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わくわく、虫。

虫がわく。

なんて想像に易しくて、不愉快極まりない表現だろうか。「わく」というと、画として出てくるのは二、三匹の虫ちゃんじゃない。虫がうようよ、わさわさ…もう対峙とか退治とか、そんなことは言ってらんない事態である。「米にわくコクゾウムシ」とかが、いい例だろう。

40度近い真夏の太陽のもと、我も我もと鳴きじゃくり飛び回り、短い生を謳歌する虫たち。カマキリだったりバッタだったり、トンボだったりチョウだったり、戯れたい虫たちとのたくさんの良き出合いがある一方で、戦わなければならない相手との遭遇もある。

その相手とは…「アリ」。ボクサーの話ではない。いや、闘志という意味では、ボクサーの話といえなくもないか。

アリがわく。…とは言わないものの、奴らの寄ってたかる様は、そう表現したくなるような目を塞ぎたくなる画である。数匹の偵察者が他へ伝達し、こちらが気づいたときにはすでに何十、何百という輩が群がっている。アリたちのコミュニケーション方法は見ていて面白いし、その協力体制には舌を巻く。でも、狙われてるのは我々の貴重な食料である。そんな悠長なことは言ってられない。

「わいてる」様子を目の当たりにして、まず出てきてしまうのが英語の罵り言葉である。FワードとかSワードとか、こんな時の気持ちを表すのにぴったり。西(西班牙)語のMワードとかI表現もいい。日本語で「ビッ○の息子」、「このク○野郎」、「お前の母ちゃんデ○ソ」なんて言っても、腑抜けた気持ちになるだけだ。

ところが先日、日本語で言ってすっきりする表現を見つけた。というか、自然とそれが口をついて出てきて、言い放った後、妙に爽やかな気持ちになってしまったのだ。

「てめえら、おととい来やがれってんだい!」

ふむ。今まで口に出したことがなかったけど、これはいい。別に何も放送禁止用語は入ってないから、安心して言える。べらんめえ調で、啖呵を切るように言い放てるから、気持ちも込めやすい。日常生活でも使ってみようかしら。ちょっと沸き立った頭と心を落ち着けるのに、ぶつぶつ呟いてみてもいいかもしれない。キプロスだったら、意味がわかる人も少なかろう。

で、気持ちを落ち着けたところのアリ対策なんであるけども、今のところ出たとこ勝負である。モグラ叩き状態。出入口を観察しては、除虫スプレーを吹きかけている。でも、皆さんの考えていることはわかる。「巣から絶たねば意味ないっしょ」。全くおっしゃる通りあるよ。

「そうなんだけどね、わかってるんだけどね…」と言い訳する自分に、なかなか取り除けない病巣をみる。いちど状況がクリアになったところで、また敵を寄せつけるような行為をすることに、抵抗が出てしまうんである。「タイ産のアリの巣コロリが小アリに効くかどうかわからないじゃん。粒デッカイし」と呟く自分。「コロリを置くってことは、アリを誘き寄せるってことでしょ。また大群を目にするのは御免こうむりたい」。

嗚呼。つくづく闘魂のないボクサー。こんなんじゃ、負け戦は目に見えているね。

***

湧き虫写真をカバー写真として掲載するのもどうかと思うので、本日の訪問者、バッタくんを載せることにする。以前にいちど、パセリの鉢植えでちびバッタを見かけていたので、おそらくは成長を遂げたものなのだろうと思う。うれしいことだ。

今朝、家のなかにトラップ状態だったのを見つけたので、ベランダに出して、ミントの葉に乗せてやった。すると、たまたま目の前にアブラムシの一群が。頭を突っ込んでムシャムシャと食らいつくバッタくん。「シャバに出て食らう刺身盛り合わせ定食は最高にうまいぜ!」

幸せの絶頂にあるBを横目に、いつの間にやらアブラムシが「わいてた」ことに目をむく私であった。「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」…いやむしろ、「負け戦を認めた戦いが、そこには果てしなく続いている」。負けを認めると、腹が据わる。「うちには関係ないもんね」なんてことは、ないと思ったほうがいい。一発KOなんて、夢のまた夢。「あ~きちゃったねー。やっつけようね」くらいのノリでジャブを入れ続けるのが、人生、ちょうどいいようである。

ではまた、ごきげんよう~。



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