山口なぎさ【稽古場反芻日記:"舞台で許されること"】


稽古場に出向いて稽古の様子を文章に起こしてくれないかとお話しをいただき、戸惑った。
何故なら私の1番苦手分野だから。

ダンス作品を創作する過程で言葉の壁にぶつかることが多々ある。

そんなときはいつも身体や脳内から僅かな記憶が消えてしまう前に目の前のノートにとにかく絵を描く。そして落ち着いてから文字にしてみる。

今回は他人の稽古場で他人の身体を観察しながらそれをやってみる。贅沢!

ちなみに稽古場では絵や図しか書いてないです。
それを持ち帰って向き合って文字に起こしました。伝われえええって思いのみです。ご了承ください。

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2021.12/7 17:30【1日目】




1時間かけて作り上げた数の背中に古川が乗っかる。

あまり関わりのない人が初めて人に触れ合う時の瞬間がすごく好きでそれを客観視できたことにすごく嬉しさを感じてしまった。

最初は硬いスポンジにパキパキの板チョコをのっけた感じ。どっちも素材が硬い。二重層のお菓子に見えて味の交わってないかんじ??それに少しずつバーナーで熱を加える。このクリエーションで言えば演出家がバーナーの火ですね。笑


火はまず上に乗っかってる人を炙る。上に乗ってる人(板チョコ)の緊張感が溶ける。
上の人の形の変化が見られる。だが硬いスポンジに溶けた部分が吸収されず弾かれる。つぎはバーナーでスポンジ部分を柔らかくする。するとすこしチョコが染みてくる。そんなことを繰り返して美味しいオリジナルなスイーツが完成する。
そんな感じに見えた。

そのワークを終えてからすこし足りない甘さとかスパイス(見た目)を添えて素敵な形を生み出していた。

形を作り出すには理想の形を目指しながらも作っていく過程で生まれる質感、不必要な異物が理想を導き出す。そう思えた。

私は一回口出しをしてしまった。
つくる過程を体感してないのに伝えるのはどうか?と悩んだが、一度異物いれてみてもいいかなーと思える瞬間があったので伝えてみた。それを受け入れてみようと思うのは体感してる人に委ね、そのあとは観察をした。

今回は数、古川の組み合わせでしかその過程を見ることができなかったが残念なくらい興味深い1時間だった。

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2021.12/18 20:00【二日目】



モノをその用途として扱わないことが許される。寧ろそっちの方が面白い。あと普段使っててダサいって思われるもの、めっちゃかっこいい。

今回はあるモノをその用途とは違った意味合いで、しかもいろんな方向から捉えた使い方をしている。しかも役者それぞれが解釈が違う。それが生きる演出。ネタバレなのでそれが何なのかは秘密ですが。笑

例えばあなたは今ペットボトルを渡されたらまず初めにどんな行動をとりますか?
喉が渇いていれば水を汲んで飲むかもしれないし、イライラしてれば足で踏み潰すかもしれないし、人それぞれだと思うんですね。

そこでそういったことを"舞台で許されること"に置き換えて考えてみる。
私だったらそのペットボトルを背中に乗っけて落ちるまでゆっくり歩き続けます。スクランブル交差点にそんな人間いたらヘンナヒトなのに、舞台では『イヤーもっと面白いことないかなー』なんですよね。。

完成した作品を初めて目撃する人は疑問に思うだろう。創作過程を踏んできた人々の中にそのことへの解釈があればそれでいい。役者は皆しっくりときた行動をとれている。その空気感の共有みたいなところに稽古場を訪ねて立ち会った。
あとは、それを劇場で目撃した人々がどう捉えるかは自由なんだからいろんな答えがあっていい。
この団体は、そう思わせてくれる独特な雰囲気を皆持っている。



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山口なぎさ
桜美林大学芸術文化学群演劇専修卒業。
在学中からダンサーとして活動を行い2019年にはTeXi’s主催の“ファッションショー×日本舞踊×コンテンポラリーダンス企画「服服服」“にも振り付け・出演として参加。
卒業後は東京都美術館にて開催されたZEN展へ作品を出展し優秀賞を受賞。
「横浜ダンスコレクション2021-DEC コンペティションⅡ」ではファイナリストとして選出され出演を果たした。
ダンサー・振り付けとして精力的に活動している。

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