③戦さ荒らし

戦国時代終わり。

文明の流れに逆らい、

未だ天下統一を謳う、

無惨に散って行った兵どもの魂が、

戦地をさまよう。


「浮き世」各地の野武士の戦さも、

時の流れに合わせ、

風化の一途を辿って行ったが、

その一方で、

いまだ各地で、

小勢力でこ競り合う、

野武士残党一派の姿も未だ目立っていた。

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ー浮き世城下町ー


バサバサ〜!!

バサバサ〜!!

(瓦版が舞う音。)

よみうり「てえへんだ〜!!

てえへんだ〜!!

天下御免の戦さ荒らし〜、

緑の月が戦地を襲い〜、

野武士残党一派の刀を破壊する〜!!」


町民「おおー!!

なんだ、なんだ〜!?

どういう事だ〜??」


…。


浮き世城下町の瓦版記事には、

初見で話しを聞くだけでは、

少しも理解の出来ない、

意味不明な言葉が羅列され始めた。


町民「???

おい、よみうり〜!!

一体どういう事だ〜!?

どう言う事か詳しく教えろ〜!」

町民「そうだ、そうだ!!」

よみうり「それ来た〜!!

いいか〜!!

耳の穴よ〜くかっぽじって聞けよ〜!!

…。

緑の…。」

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ー地方の戦地ー

満月の夜、

戦地の夜空に戦さののろしが上がる。

そののろしに合わせ兵どもの大きな雄叫びが、

聞こえ出す。

「天下統一」を謳った、

闇夜を逆手に取った、

野武士残党一派の合戦が、

今、始まろうとしている。


兵(1)「我こそが天下一〜!!

貴様のたまを喰らって〜、

盛大なサカズキを上げてくれるわー!!」


兵(2)「笑わせるな!!

こわっぱ!!

貴様など恐るに足らぬー!!!

良いか!!

続け〜!!

皆の者ー!!

このワシのあとに続くのだー!!」


ガキン!!

キン!!

(刀と刀のぶつかる音)

月あかりが指す戦地で、

刀と刀がぶつかり合い、

馬に乗って弓を弾く者。

鎧が切られる者。

後ろから奇襲を受ける者。

月光のみの光りしか照らさない、

敵の姿が見えづらい、

暗中模索の攻防劇の展覧会。

あまたの戦さの歴史から紐解く、

戦い慣れした兵どもの教訓がここにある。

…。

そして、

刀と刀がひっきりなしにぶつかり合う、

正に戦いの頂点が差し掛かる時分。

満月の夜空に浮かぶ月の光が、

何らかの影に一気に覆い隠された。

…。

ブン!

バタバタバタ〜!!

とつぜん月の明かりが何らかの影に、

瞬く間に覆い隠されると、

戦地に羽織もののバタつく音が、

ひたすら鳴り響いた。


兵達「(ザワッ。)

何事だ〜!!!

何も見えない!!

何事だー!!」

すると、

バタつく羽織ものの様な影の中から、

一太刀「…。

勝負だーーー!!!

兵がーーー!!!」

と、

勢いよく戦場に鳴り響く一太刀の声が、

聞こえだして来た。


一太刀は満月を、

緑色の羽織もので覆い隠し、

緑の満月から、

(あの吸血鬼の供物となった一太刀が…。)

兵どもの刀と刀の交差する一点に目掛け、

猛然とほろ酔いを一心不乱に突きつけて来た。


ガガキン!!!


(刀が激しくぶつかる音。)


…。

すると、


カラカラカラ…ン。

半分に斬られた2本の兵の刀が、

おもむろにコロコロと転がった。

兵「オレの刀が…。」

…。


あっという間の出来事だった。


交錯した兵どもの2本の刀が、

2本とも真っ二つに綺麗に切断され、

かな音を歌い、

無様にその地面に転がったのだ。


兵「…バ、バ、バケモンだーー!!?

オレの刀が切られたーーー!!?」

戦場はそのかけ声が響き渡ると、

一気に混乱の波が押し寄せた。

兵達は、

一太刀から退く様にキレイな円を作り、

その場から背中を向けて逃げ出し始める。

しかし、一太刀は食いつき続け、

一太刀「待てーー!!

オレと勝負だーー!!!

貴様らーーー!!!

オレと闘えーーー!!!」


一太刀は、

退けて行く人の波に身を丸投げし、

腰の抜けた男達の刀を、

次々と一刀両断して回った。

一太刀は兵どものあまりの力の弱さに、

激昂した。


一太刀「…つまらん!!

つまらんぞーーー!!!

貴様らーーーー!!!

これが兵かーーー!!!」

…。

…。

…。

戦さの大地に朝の光りが差しこむ。

何百本の兵どもの鉄くずが、

合戦の大地にいたずらに横たわり、

その脇では、

目の光を喪失した兵達が、

口を開け佇んでいる。

茫然自失。

…。

混乱の幕引き。

朝日が差す大地に、

もはや、

一太刀の姿はどこにも無かった。

…。

…。

そして、

この日以降、

満月の夜に各地の戦上で、

緑月刀割りと言う言葉が、

野武士の耳に入り出した。

そして、

常軌を逸した刀狩りの名が、

一人、歩いて行くのであった。

















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