伝説の出前配達人 "XYZ"②
②オレのまぶダチ
チャリンコで近くの港まで来た。
XYZ「やっこさん、何だってこのはるばる遠いしがないラーメン屋に注文したってんだ??
遠すぎてとてもじゃないが、このモアザンワーズで海を越す事はできやしないぜ。
そして、
パスポートを取得するには1万5千円。
いざって時の海外旅行保険は5千円〜1万円。
飛行機のチケットはJALかANAによって値段が違う。
そもそもオレはビザも取得していない。よく分からないが、それは必要だと思う。テレビでよく入ってるじゃないか。」
困った。
XYZは港に淡々と弱音を吐いていた。
そして、そのすきま時間にもラーメンの麺がどんどんとのびて行く。
XYZはすでに物理的にも経済的にもインポシッブルという名の負のスパイラルに陥って行くその諦めの時間帯に入っていた。
ところが。
XYZ「!!?
待てよ!!!
オレよーー!!!
へこたれるなーー!!!」
窮地に追い込まれた伝説の出前配達人XYZの執念は、おもむろに腐りかけた目を一気にカムバックさせる事に成功した。
XYZ「オレにはテレホンカードがある!!
テレホンカードがあるじゃないか!!
ここから近い公衆電話は!!?
魚市場だ!!」
ガッ!!(ペダルを蹴る音。)
ギコギコギコギコ(ペダルを漕ぐ音。)
XYZ「どけどけーー!!!
XYZ様のお通りだ〜〜!!!」
XYZは魚市場の中にある公衆電話に全力で走り、彼だけが知っている秘密のダイヤルへと、その指を走らせた。
トゥルルルル、トゥルルルル…ガチャ。
???「もしもし…。」
XYZ「おいオレだ!!
そろそろ世界一周のシーズンだろ!?」
???「ああ、XYZさんでしたか。
ビックリしましたよ。
そうですね。
近々フライトはしますよ。」
XYZ「気球のサブ!!
早いとこオレとチャリをお前の気球に縛りつけて乗っけてってくれ。
運行代金は分割で頼む!!」
気球のサブ「分かりました。
ではすぐにでも飛び立ちましょう。」
…。
こうしてビザもパスポートも持っていないオレはサブの協力の元、念願のマダガスカルへとひとっ飛びする事が可能になった。
青い空と漠然と広がる水平戦。
美しい。
どこまでも美しい…のだが。
そんな人の心を鷲掴みにする驚異の光景もただただ虚しく、もはや出前のラーメンは完全にその湯気を失っていた。
XYZ「…。
ぜってえ届ける!!」
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