⑤吸血鬼武者・ドラキュラ アーミー

煌々と輝く満月の夜、

浮き世城ちかく浮き世平原で、

ポンっと、

一つののろしが上がった。

…。

ーその日の朝ー

鬼ふうじ小平は、

浮き世藩・藩主から、

直々の任務があると言われ藩に呼ばれた。

それは、

藩が機密に入手した情報で、

兵達、残党一派が、

浮き世城ちかく浮き世平原で、

おおぴっらに戦さを始めると言う、

内容だった。

大名「鬼ふうじ小平、

兵達、残党一派が、

近々、浮き世城ちかく、

浮き世平原で、

戦さを開始すると情報が入った。

小平、

お主には、

昨今の事件の事も含め、

戦さの偵察に入って貰いたい。」

小平「はっ!承知しました。」

ー浮き世平原ー

小平「(今回の戦さで、

この騒動に糸口は見えるのか?)」

小平は、

浮き世平原から少し離れた木に身を隠し、

2時間もまえから平原の様子を伺っていた。

そして、

今、

兵達、残党一派が大地をかけ巡り、

浮き世平原の面積を、

赤と黒の鎧で埋めて行く。

小平「…。」

ヒュン!!

(刀で切りかかる音。)

兵(1)「おりゃーーー!!!」

ガン!!

(刀で受けとめる音)

兵(2)「むう!!!

この、

うつけがーーー!!!」

兵達の戦さは、

戦さと言う指南書を、

丁寧になぞらえるかのように、

彼らの士気を昂らせ戦いの熱気を、

その頂点に近づけた。

兵達「うおーーーー!!!」

…。

小平「…。

やはり、得るものは無いか。」

と、

小平が目をつぶり、

帰路、

と言う言葉が頭をよぎった時、

煌々と輝く満月の光りが、

小平の気持ちを美しく裏切るかのように、

…。

真っ暗に…。

…。


…。

月食した。

…。

…。

真っ暗に見えた月の端からは、

直ぐに月食が円の中心からぶれだし、

月明かりが漏れ出すと、

光りが、

月食の本体の端から弧を緑に染め、

やはりその様は瓦版の記述どおり、

緑色の月食であることに相違なかった。

バタバタバタ〜!!!

(緑色の羽織ものの音。)

小平「こ、これが!!?

これが…。」

そして、

緑色の満月の中心から、

浮き世平原に存在する、

一点の交錯する兵達の刀に向け、

ほろ酔いが、

瓦版の記述どおり、

勢いよく突きつけられて来たのだ。

…。

あとは、

いつもの通り…。

…。

キン!!

…。

カラカラカラ〜ン。

交錯した兵達の刀が、

真っ二つに快音を響かせ切断される。

(意味もなく転がる刀の鉄くず。)

…。

兵「い、い、戦さ荒らしだーーー!!!

引けーーー!!!」

浮き世平原を、

混乱におとしいれた月食の本体、

一太刀。

一太刀もまた刀を交える相手を順不同に、

求めさまよい渡った。

キン、キン、キン、キン、

キキキキキ、キン!!

ことごとく刀が切断されて行く。

戦場に響きわたる快音。

兵(3)「うわ〜〜〜!!

助けてくれ〜〜!!」

兵(4)「オレの刀が〜〜!!!」

…。

一太刀「つまらん!!!

つまらんぞ!!!

兵どもーーー!!!」

…。

小平「…。

狂人。

…これに尽きる。」

…。

カラカラカラ〜ン…。

(切断された刀の音。)

一太刀「…。

今日も答えは、でなかった。」

そう言って、

一太刀が最後の刀の鉄くずを見ていると、

後方で、

ひときわ大きく息を荒げ、

あからさまな殺気で、

一太刀に挑もうとする一人の兵がいた。

一太刀「…。」

???「…お前、

オレと同じ臭いがするなーーー!!!」

一太刀「…。

雑魚か…。」

一太刀は、

この兵をいつもの兵と見くびって、

軽視してしまった。

ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダッ!!!

(兵の走る音。)

背後を取られてはいたもの、

一太刀は、

いつもの兵達の速度に合わせるかのごとく、

ゆっくりと後ろを振り返り、

先ほどの殺気を持った兵の姿を軽く追った。

しかし、

その兵の姿はどこにも見当たらない。

一太刀「!?」

ヒュン!!

???「…ギャオーーー!!!」

刹那、

一太刀の真うえ上空から、

刀も持たず鋭いかぎ爪と、

鋭く大きな牙をむき出しにした、

吸血鬼に似た武者が襲いかかって来たのだ。

吸血鬼武者「オレは、ここだーーー!!!

ギャオーーー!!!」

ガリッ!!!

一太刀は、

ものすごい速さで奇襲を受けた。

間一髪、前転で会心の一撃だけは、

回避する事ができたが、

一太刀の背中には、

吸血鬼武者の大きい爪あとが、

痛々しく刻まれた。

一太刀「…グウゥー!!!」

一太刀はうす暗い地面にのたうち回った。

…。

吸血鬼武者「ケ、ケ、ケ…。

油断したな??

一太刀。

…。

その怪我で、

次の攻撃に耐えられるか?

…。

一太刀…。

バック・ディナー様から聞いてるぞ。

お前を見張っておけと。

先ほどまでオレは、

ずっとお前を見ていた。

けど、

…お前、あんまり大した事ないんだな…。

弱すぎる。

まあ、いいか。

では…、

行くぞ!!」

ダ、ダ、ダ、ダ、ダ、ダッ!!!

一太刀「…ここで会ったか!!!

兵よ!!!

ウグッ…。」

一太刀は、初めての強者に歓喜した。

が、背中に大きな激痛が走る。

…。

一太刀「…。

この一撃にかける!!

あの世で、飲みあかすがいい!!」

一太刀のほろ酔いが、

月明かりの光りのもとキラリと輝く。

吸血鬼武者「お前は、

終わりなんだよーーー!!!

一太刀ーーー!!!

ギャーーー!!!」

一太刀「南無三!!

…。

喰らえ!!

夢上戸(ゆめじょうご)!!!」

…。

足を肩幅に広げ体の真上から真下に、

思い切り振り下ろした一太刀の刀。

猛然と走り来る吸血鬼武者の体を、

真空の刃が通過した。

吸血鬼武者「…笑わせ…。

…。

…グガッ。」

ドタン。

…。

その場に、

激走して来た吸血鬼武者がいきなり倒れた。

一太刀「…。

許せ。

お前の魂、切らせて貰った。

…。

兵よ、あの世で交わせ、夢上戸。」

一太刀は、傷を負ってはいたモノの、

一太刀が秘密裏にあみだしていた必殺技を、

使い何とか大事をしのいだ。

…。

小平「…。

…。

な、な、なんだったのだ!?

今のは!!?」

小平が、

今の出来事を、

間近で驚いている余韻を阻むように、

一太刀への災難はまた直ぐにやって来た。

それは、

吸血鬼武者とおぼしき化け物集団が、

傷を負っている一太刀の前に、

次々と現れ出したのだ。

…。

一太刀「くっ…。」


















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