④小平日記

ジ、ジ、ジ…。

小平の草履の音が聞こえる。

ジ、ジ、ジ…。

蕎麦屋「…お…〜い、

小平さ…〜ん!

私のところでそばでも、

いかがですか〜?」


小平「…。

(顔を上げ、お店の方へ振り向く。)

…。

浮世絵そば…。

おお、かたじけない。

…。

…。

いや、しかし…。

主…。

今、ちと考えごとがあっての。

うん、また後で店に寄らせてもらう。」


蕎麦屋「そうですか〜。

…分かりました〜。

待っております〜。」


…。


ジ、ジ、ジ…。

そして小平は、また歩き出した。

…。


私は、鬼ふうじ小平。

浮き世絵国 浮き世絵藩 攻撃部隊 副隊長。

団子が好物の

腕の利く侍だ。

などとな。

部隊の中でも、歳は若く、

期待の新人とは噂されておる。

…。


さて、ここで本題に入るのだが

最近、

この浮き世絵国で、

少し怪しい事件が起きている。


それは、

我ら浮き世絵藩 部隊の役人が、

特に頭を捻っている三つの事件だ。

…。

事件は三つ。

一つ目は、

浮き世絵藩 護衛を務める腕の立つ侍が、

深夜…、

まことしやかに、

誰が言うわけでもなく、

神隠しと思われる珍事にあっていると言う事だ。

犠牲者は多数…。

…。


う〜む、神隠し…??


泣く子供を黙らせる、

夏の怪談の類いの一つか?


二つ目、

この世、戦国。

「天下統一」。

と時代錯誤の目標を謳う野武士一行の神隠し。


3つ目、

緑色の月食。

野武士達が夜に行う勢力争いの最中、

もはや恒例の行事化してしまった、

戦さ荒らし??の事件…。


…。

…上を向けども、下を向けども、

未確認未解決の疑問符だらけの事件ばかり。

この騒動に事の真相は見えてくるのか?


…。


そして

私の机は、

ほこりをなぞらえるほど資料が無い。

情報が少ない。

紙で言えば、まるで無い。

しかし、

待っているだけではらちがあかない。

そこで、

少ない目撃情報を頼りに、

私は、この珍事に足を踏み込む事にした。

…。

まず手に入れた情報を頼ると、

神隠しにあったある役人のお手伝いさんが、

こう言っていた。

お手伝いさんの話では、


お手伝いさん「ある晩、

満月の見える綺麗な晩なんですよ。

旦那様の部屋のふすま近くから、

誰かのすごく甘くささやいている声、

…けど、

それはとても、

この世のものでは無い恐ろしい声が、

"そこに行っても良いか?"

"美味しい食べ物は欲しくないか?"

"良ければ私をそこへ招待してくれないか?"

と、言っていたんですよ。

…。

私は怖くて怖くて、

遠くの離れで、

ひっそりとやり取りを、

聞いていたんですけどね…。

早々に、

その人の声が聞こえなくなって、

それっきり。

ずっと耐えて過ごしていたら、

満月の夜が、

気づいたら朝になっていたんですよ。

私、

気になってしょうがなかったんですよ。

直ぐに、

旦那様のお部屋をそっと、

覗いたんです。

どうなったと思います??

旦那様の部屋は、

ただいつもの様に布団がめくれてて、

そこには誰もいなかったんですよ。」

…。

小平「…。

…うん。

ありがとう。

(夏の暑さをしのぐ怪談話しだろう。)」

甘い声…?

この世の者では…??


次の手がかり、

地方の兵の話しなので、

風の噂からになるのだが…。

…。

漆黒の翼、

腕利きの兵を掴んで月へ飛ぶ。

…。


小平「妖怪か!!?」

…。


三つ目の手がかりは、


緑の月食…。



なんの事だこれは?

いやいや、

町の瓦版の情報からは、

戦地におもむく戦さ荒らしの例えらしい。

戦さを荒らす??

昨今、この時代に、

戦さを辞め、

手に職に持つと言うならまだしも、

わざわざ戦さを荒らしに行くと言う、

狂気の親玉がいるとは、

ただ、ただ、

呆れてしまう。

…。


う〜ん。


どの手がかりも暖簾に腕押しだ。


手がかりがない。

…。


(ぐ〜。)


小平「…腹が減った。

蕎麦屋で浮き世絵そばでも食おう。

…。」

しかし、

全く厄介な珍事ばかりだ。

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