beagle rock②

⑵ゴキゲン
盲目のピアニスト、ビーグル・ロック。彼の天国でのライブはいつも圧巻だった。非の打ち所のない凄まじいステージだった。

時おりロックはマイクに向かって雄叫びを上げる。

ビーグル・ロック「アオ〜〜〜!!!
アオ〜〜〜!!!」

…「…オか。」

…主「…アオ…か。」

店主「青…、青い空。
近所の小川。
ロックとオレ…。」

ロックは年寄りになって、そこら辺に落ちてたソーセージパンを食べていたな。

もうお別れが近かった時、家の玄関の中で、2階から静かに降りて来たオレの臭いに気づいた。そして、ただソッと手を前に出し座っていた。
目が見えないのに。
その時、オレは今までロックに何をしてやれたかって酷く思い出すよ。

もう犬は飼わない。

散歩もろくにしてやれないで、餌ばかり食うロック。

せめて天国の飼育員さんに可愛がってもらってくれ。
どうか飼育員さん、ロックを手厚くかまってやってください。
ロックは噛むなんて馬鹿な事はしませんので。
アイツは貴方の手を舐めるでしょう。

そんな事を胸に、いつもこのステーキ店を訪れるビーグル・ロックの魂に肉をご馳走する。

アイツはいつでもゴキゲンだ。

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