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伊集院光の深夜の馬鹿力の話


昔、絵を描く仕事をしていた頃に会社で徹夜作業をする事が多々あった。

寝落ちや作業の飽きを防ぐために役立ったのがラジオだった。radikoで流し聞くこともあれば好きな番組のアーカイブを漁ることも多かった。

作業をするにあたり無音の環境はベストだけれど、人が少ない夜中に会社にこもって作業をすると、ものすごく寂しくなる。

どうしても人の話している声を聞きたくなる時間があった。そうした頃に、伊集院光の深夜の馬鹿力には随分助けられた。話がおもしろいこと、そして何より放送時間帯が良かった。

伊集院光パワーのおかげで、ラジオ自体が好きになるまでにさほど時間はかからなかった。また、それが2012年あたりの出来事であったため、radikoが普及していた事もありより手軽に聴ける環境であったことも運が良かったと思う。

深夜の馬鹿力のおかげで私の人生が大きく豊かになったことがひとつある。

自転車の趣味だ。伊集院光は自転車でいろんな場所に行った話を沢山してくれた。その頃の私にはクロスバイクやロードバイクといったスポーツタイプの自転車は、あくまでレーサーのような人々が乗るものである認識があったので、彼のように旅行がてらに乗る人の話を聴く機会がなかったから新鮮に思ったのかもしれない。

この番組で定期的に話題になる自転車での旅行話は、草野球チームの話と同じくらい私のお気に入りになって、その後は自転車の話がくる度に楽しくなった。

聴く機会が増えると、勿論自分もその自転車に乗って同じように色んな場所に行ってみたくなる。ママチャリに比べて随分高い値段である事も知っていたので、購入する事はないだろうと思っていたのだが、ウィンドウショッピング的な感覚で近所のサイクルショップに行った初日にコーダーブルームのクロスバイクを買ってきてしまった。

ショップのお姉さんの人の良さもあり、購入店でのメンテナンスが今後無料になる事もあってか、後悔はなかった。

一人で気軽にクロスバイクに乗っては思うがままに探検する事は何よりも楽しい。

野菜直売所に行ったり、神社や史跡を巡ったりする事が趣味の一つとなった。

伊集院光のラジオとの出会いから、他の番組もチェックすることが増えた。アトロクや、他のジャンク枠、オールナイトニッポンを聴くようになっていた。最近のイチオシはCreepy Nutsのオールナイトニッポン0だ。とにかく面白い。彼らがアーティストであることを忘れてしまいそうになる。怖くないHIP HOPというものを知り、私に梅田サイファーという好きなものをひとつ増やしてくれた。

ラジオの良いところは、自分が興味を持たない分野の情報が否応なしに耳に入ってくるから、新鮮な話が結構聴けるところだ。自分で選ぶものも大好きだが、偶然のように出会うものや趣味は案外長続きしたりする。家事をしながらでも聴けるように手がふさがらない事もすごく私に合っていた。

ラジオを毎日聴いているわけではないけれど、週に2、3回程度は聴くようになった。イヤホンを長時間付けるのは耳が痛くなるので、SONYのポータブルラジオとTivoliの卓上ラジオを買った。

特にTivoliのラジオは激狭ワンルームには過ぎたスペックだけど、音量を最小にしてもズンと響く感じが好きだった。部屋でラジオを流す時はもっぱらSONYのポータブルラジオを愛用しているが、気分によって選べるのは結構満足感があったりする。

部屋にラジオが流れているのは、なんか良い。言語化ができないのだけれど、「なんか良い」のだ。

radikoの便利なワンタッチで聴きたい番組を選ぶのと違い、つまみを回して番組を選ぶのも良い。適当に回ってキャッチした番組を適当に流すので、radikoで聴く以上にランダムで普段聴かないものが流れてくるので楽しかった。

このご時世、わざわざラジオのためだけの機械を持つことも、「ひとつの趣味」としての形に思えて好きだなと思う。ちなみに、Tivoliは中古で1万円のモデルワンだ。

色んなラジオを聴くようになったが、やっぱり伊集院光の声がラジオから流れてくるとホームのような安心感がある。私の色んな趣味のルーツを辿ると、この番組にたどり着くものも多い。

私がおばあちゃんになる頃でも、当たり前のようにラジオが流れていて欲しいなと思う。

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