格闘ゲームは衰退する?

Togetter経由で知ったnoteで、最初見た時はフーンと思った程度だったけど、別のnoteを見た時に色々考えることになったのでちょっと書いてみる。最初の元ネタのnoteはこちら。

対象のnoteのまとめ

詳しくは読んでもらうとして、まとめると、
・ストVを遊んだが挫折した
・やること/考えること/知っておくことが多すぎる
・スマブラとストVの違い
・挫折しまくって心が折れた、格闘ゲームはもう駄目だろ
細かく色々書いてあったけど、だいたいこんな感じ。

ついでに登場人物もまとめると、
・noteの筆者・・・スマブラ勢、格ゲー経験あり、ストVで心が折れた
・知人・・・ストVについて色々説明している存在っぽい、素性とか腕前は不明
・知人2・・・筆者が引退する瞬間に立ち会ったというプレイヤー、初心者向けでキャラを選ぶとあるのでストVは初心者だが、他ゲームで実績アリらしい
他に初心者対戦で両者首をひねったとあるので対戦相手がいるっぽいが、それが知人なのか別の人かは不明。

読んでて不思議なところ

 ボタンも技もわからない、多すぎるし入力大変なんだこりゃ、と延々と書いてあるから実際に初心者なんだろう(初心者の定義は置いとくとしても)。にもかかわらず、専門用語やらが山程出てくる。コンボ、起き攻め、重ね、遅らせグラップ、仕込み、中足確認、反確などなど。
 ゲームの内容もひたすら対人練習とトレーニングモードの話に終始している。ひたすら辛い辛い、こんなのゲームじゃないと出てくるけど、読んでて疑問が一つ出てくる。CPU戦はどこいったの?

ストVはどんなゲーム?

 不思議なことにCPU戦という言葉は一切出てこない。一人だけでゲームをしてて気づかなかった、というならまだわかる。でも上で登場人物を見たように、少なくともnoteの筆者含めて3人以上は会話できるところに居るっぽい。にもかかわらず、対戦とトレーニングモードで心が折れた引退します、という話しか出てこないということは、このnoteの筆者界隈ではCPU戦はゲームではないというのが共通認識なんだろう。
 確かにストVに限らず格闘ゲームって、Youtubeやtwitchの配信とかだと対人対戦ばっかりだもんな。その流れで考えると格闘ゲームは対人対戦ゲームである、と考えてもまあ仕方ない部分もあるかもしれない。それでもゲーム買ったら色んなモードが有るわけで、なぜ無視して対人戦とトレーニングモードだけ突き進んで挫折して心が折れるのだろうか。CPU戦で楽しめばよいのに。ってか私はCPU戦をまったり楽しんでるエンジョイ勢で、ゲームレベル自分で弄ることもできるし大して技を出さなくても楽しめている。
 それにしても、なぜnoteの筆者だけでなくその周りのグループ全体がCPU戦はゲームに非ず、みたいな考えなのだろうか。

アーケードゲームと家庭用ゲーム

 先のnoteを見てる時は見当つかなかったのだけど、別のnoteを見た時になんとなくわかったような気がした。

 30時間費やしたけど音ゲー全クリできなかったという話で、話の内容はここではどうでもいい。ただ、これへの感想で「ゲームに掛けた時間なんてゲーセンに行ってる奴はそんな数え方しないやろ」「あえて言うならクレジット数だろ」というツッコミがTwitterで出てた。確かに自分がIIDXどれだけやってるっけ?って考えるときも月や年で何クレぐらいと考えるだけで時間なんか考えたこと無い。
 ってとこまで考えたところで思いついた。アーケード由来のゲーム(AC)/AC出身のゲーマーと家庭用ゲーム(CS)/CS出身のゲーマーはそもそも考え方などが違うんじゃない?と。

アーケードゲームの文脈

 ゲーセンのゲーム、つまりアーケードゲーム(AC)は筐体に電気を入れられて一日中客を待っている。誰も遊んでないときでも電気代はかかるので、誰も遊んでないと収支はマイナスで撤去されてしまう。座ってコインを入れてスタートボタンを押せばゲームが始まる。最初の1面/1人目の敵はチュートリアルのような感じでだんだん難しくなり、長くても1クレで15~20分で終わるような難易度/内容となる。2人で協力/対戦プレイもできるゲームもあるが、2人居ないとプレイできない、なんてゲームはほぼ無い。ゲーセンに来る客は単独客が多いから、2人以上必須なんてしたらプレイ数、すなわち収入が減って即撤去対象だ。だからACはCPU戦が基本であり、ストVはACから始まったゲームだ。
 格闘ゲームで客同士が対戦することでプレー数の回転が上がり、ゲーセンの収入が上がるから格闘ゲームの対戦はゲーセンに歓迎されたし、CPU戦だけじゃ物足りなくなったプレーヤーにも歓迎された。だけど格闘ゲームは対戦しかしなかった訳じゃなく、時間帯とかで誰も対戦に入って来ずCPU戦だけで終わる、というのも多々有った。なのでまずはCPU戦で動き方や技、ボタンを覚えて、物足りなくなったら対人戦へステップアップという流れができていた。

アーケードゲームと比較した家庭用ゲームの仕様

 家庭用ゲーム(CS)の場合はACのような制限は無い。それこそ1プレイにかかる時間はゲームの内容によって長くも短くもできる。コンティニュー前提であっても複数人プレーが前提であっても構わない。上のnoteでストVと対照として挙げられているスマブラは、CSの中でも複数人プレーが推奨されているパーティゲームの部類に入る。では、パーティゲームだと何が違う?

 パーティゲームは人が何人か集まった時にプレイされることを想定しているゲームだ。だから、基本的に対人戦が中心に考えられている。一人がCPU相手にゲームして周りはそれを見てる、なんてありえない。当然、操作方法は誰でも参加できるように簡単にしてあり、技も出しやすい。参加した人間が協力するゲームも対戦するゲームもあるが基本は同じだ。最初のnoteの筆者が言及してるスマブラはパーティゲームだし、その他に書いているApexも複数人が協力ないし対戦を中心に考えられているからパーティゲームの一種だ(MOBA系は触ったこと無いから自分にはわからない)。

 CSだからといってすべてがパーティゲームであるわけではない。RPGやアクションやら様々なジャンルがあるし、それらはいわゆるCPU相手だ。これらのゲームは色んなゲームシステムや操作方法がある。CSだから操作方法が簡単だ、というのは成り立たない。

 ということで、元のnoteの筆者はCSの中のパーティゲーム出身者で、パーティゲーム出身者由来の不満が出てあのようなnoteになったと考えられる。

CPU戦に触れられない理由

 パーティゲーム由来の不満だと考えれば、ここの最初のCPU戦をしない理由がわかる。パーティゲームでは対人戦が中心であるから、当然CPU戦はおまけの存在だ。AC由来のプレーヤーがCPU戦で慣れたら対人戦と考えるのと逆で、パーティゲーム出身者はまず対人戦、動かせなければトレーニングモード、ゲームしたいけど相手いない時にしょうがなくCPU戦、という考え方なんだろう。

 関連記事として上の記事が出てたのだけど、こちらにもやはりCPU戦というのが無い。コメント欄で提案されているぐらいだ。したがって、パーティゲーム出身者はCPU戦軽視というかCPU戦が眼中に無いというのは真実なんだろう。このプロの人はCPU戦を飛ばせるだけの力があったのでスマブラの延長線のやり方で上手くいって、元のnoteの人はそこまでの力が無かったのでそのやり方だと詰まった、とそれだけの話しである。だから格闘ゲームが衰退する/しないというのは、今回の話では実は何も関係無い。ACゲームとパーティゲームは文化が違っていた、というだけだ。

なんで今さらこんな話題になったのか?

なぜこのような話題が出たのかというのはいくつか理由がある。

1. ACゲーの家庭用ゲーム機への移植
 1つ目は、家庭用ゲーム機の能力が上がりACゲームがそのまま移植可能となったことだ。昔だったら劣化版しか移植できなかったものが、そのまま移植出来るようになった。ゲーセンが斜陽になりかかってることもあり、積極的に家庭用ゲーム機に移植される。その結果、ゲーセンに行かなくても家庭用ゲーム機でACゲームを出来るようになり、結果としてACゲームとパーティゲームの異文化交流/衝突が起きるようになった。

2. パーティゲームの増加
 2つ目は、パーティゲームが増加したことでパーティゲームの流儀しか知らないプレーヤーが増加したことだと思われる。そもそもパーティゲームなんて昔はそんなに多くなかったはずだ。日本だと、そもそも年がら年中パーティやってる/集まってるなんて状況はほとんど無いだろう。だから大体10年前くらいなら、パーティゲームは家族用ゲームとほぼ同義だったはずだ。(パッと思いつくのは人生ゲームや桃鉄、みんゴルやパワプロのようなスポーツ系ぐらいじゃないだろうか)
 それが変化した理由がネットワークの進化だ。同じ場所に集まらなくてもネットワークに繋がってパーティゲームをプレイできる。作る方としても、プレーヤーに合わせたCPUの難易度/AIなんて考えなくても、場の提供をすればプレーヤー間で難易度が決まり遊び方が決まる。PS4/5だろうとswitchだろうとスマホだろうとネットワーク環境が整っているから、パーティゲームは増加の一途だろう。そのため、プレーヤー本人は意識しないだろうがパーティゲームしかしたことないプレーヤーが増殖し、今回のような異文化衝突が起きたし、これからも起きると考えられる。

ではどうすればいい?

 このままだとパーティゲーム出身者が、闘劇なんかで注目されてるAC由来の格ゲーをやって、今までの自分たちのやり方が通用しなければ、新規に優しくないと叫んで格ゲーは衰退する論がポコポコ定期的に出ることになるだろう。
 そのため、この格ゲーはAC由来であるので一人用(CPU戦)の延長線上に対人戦がある、CPU戦でゲームは十分成り立っている、まずCPU戦やってみたら?CPU相手で物足りなくなったら対戦もあるよ、とACの流れを教えることが必要だろう。CPU戦なら起き攻めも仕込みも中足確認なんかも要らない。まず技を少しずつ出せれば良いし、難易度設定して自キャラを覚えていけばいい。元ネタのnoteのように、頭でっかちでパンクしてできない/やらないなんて起きないんじゃないだろうか。

 ゲームでもちゃんとそのように導線できていればいいんじゃない、って思ったんだけどストVの公式ページ見ると、、、うーん。初心者ガイドのページもあるけど、こりゃあかんなw これじゃあ、いきなり対戦に入って玉砕して怨嗟振りまくのも仕方ない。アーケードモード、ストーリー、サバイバルがそこそこできないと対人戦は辛いだろう。CAPCOM公式さんが上手いこと導線を作ってくれるの期待するしかないかあ。

 ということで、主語の大きいこのままじゃ格闘ゲームは衰退する!という話は実は何も関係無く、ゲームでも「郷に入っては郷に従え」は大事ってお話でした。

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