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わたしが映画として見たThe Lake(脳内で)

https://youtu.be/u63-5a2puYY
「よくやった」
そう言わんばかりに登場したのが運の尽きだった。
百歩譲って顔を出したまではよかったかもしれない。
なぜなら、シャーリーはまだ迷っていたからだ。
この椅子取りゲームへの参加も、彼を殺す事も。
1人撃ち殺した程度では覚悟が決まらなかったんだろう。
私がシャーリーでも迷ったと思う。
彼女は何も人質に取られていないし、奪われても、踏み躙られてもいない。
ただ突然参加権を渡された。
それだけなのだ。

銃の入ったクラッチバッグに、5000ドルとゲームへの招待状。
この招待状に描かれた絵を注意深く見る。
(これからサブスク等で鑑賞する場合は是非一時停止して見ていただきたい)
絵画のように縁取られた絵には裸の男女が2人。
花々が咲き乱れ、紐や蔦、調度品にフルーツ、端には天使の翼まで覗いている。
花々の模様が悪魔を模してるのがわかるだろうか。
紐や蔦は蛇。調度品に刻まれたGehennaの文字。フルーツに映る目玉。
おそらく翼は毟り取られ、高く掲げられているのだろう。
これはエデン(天国)に見せかけたゲヘナ(地獄)の絵の一部分だと思われる。
何度か出てくるわりには謎が解き明かされないままの招待状の絵。
これこそがこの椅子取りゲームの本質を表している。
続けても離脱しても、地獄なのだ。

シャーリーはそれに気付いた。
池からジョンが出てくる時に。

ジョンとしては共謀できるよきパートナーを労うつもりだったはず。
いや、あとあと殺せる、都合のいいパートナーの間違いか。
ゲームに参加する怯えた仔羊として彼女を囮として使いたかったのだ。
大きな勘違いである。
前述の通り、彼女は何もリスクを負っていない。
それを知らない他の参加者は『なにか事情があってゲームを抜ける訳にはいかない可哀想な女』として認識してしまった。
ここまでで、この映画で一番のクレイジーが誰かわかるだろう。
クラッチバッグの開け閉めは彼女の本性だ。
凶器を取り出しては、すぐにしまう。
怯えた表情で狂気を隠す強かな女。

表の顔は精神科医。
患者からの逆恨み対策のために銃や護身術も習得済み。
夫との関係も良好で性生活も満足している。
財産も仕事も生活も、何一つ不満がないのだ。
そんな彼女がこのゲームへの参加に迷っていたのは、ゲームの楽しさがわからなかったからだ。
とりあえず1人殺して5000ドルは貰っておこうかな、この程度だった。
しかし、招待客リストしか手元にない。
参加者以外を殺してはいけないという縛りがある以上、下手な事はできなかった。
ジョンが病院に来るまでは。
ジョンはパドリックという参加者がいることを告げ、共謀を提案した。
パドリックは女好きで近づくには女の手助けが必要だったのだ。
こうしてシャーリーは湖の畔でパドリックを撃ち殺した。

殺した瞬間、彼女は果てしないほどのエクスタシーを感じていた。
天国であり、このゲームを降りれば二度と感じられない。
それがあまりにも生き地獄だと思うほど、甘美な感覚だった。
濡れる下着を感じながら、ジョンに向けて銃を手にしたのだ。

ゲームのルールがわかりにくいので、ここで説明しておこう。
まず、招待状には受取人にとってメリットが書いてある。
大金、臓器移植、最新医療、養子など。
招待状と一緒に5000ドルと凶器、招待客リストも添えられている。

①招待状と5000ドル、凶器は受け取り拒否ができる
②受け取った上で誰も殺さなければ、招待状に書いてあるメリットは叶わない。お金と凶器も返さなくてはいけない
③途中離脱は自由にできる。だが口外すれば命はない
④1人でも他参加者を殺せば5000ドルは貰える
⑤1人殺す度に5000ドル貰える
⑥一般人を殺せば自分も死ぬ
⑦最後に椅子に座った人間が次のゲームの主催者になれる

なお、作中ではシャーリーへのメリットは明かされていない。
想像するに『快楽を与える』とかではないだろうか。
殺す度に差し込まれる官能的シーンは非常に見所満載だ。
ここも一時停止して確認してほしいのだが、官能的シーンごとに七大悪魔が潜んでいる。
シャーリーの表情も悪魔に因んだ雰囲気になっている。
個人的は3人目の殺害後、ソファーに座りながら下腹部に男性の顔を入れ込んでいる表情。
マモン(強欲)を表す小道具に囲まれ、男性の髪を掴んで笑う彼女にぞわりとした。

特に道を外すこともなく、流されるまま生活し、人を治療する彼女を思い出して欲しい。

これは、天使が堕天していく物語だ。

ラストシーン、シャーリーの持つチェス盤の意味を知った時。
あなたはもう一度この映画を観るだろう。

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