アスファルト乳剤の養生時間について

 アスファルト舗装を施工する際に下層のアスファルトとの接着剤の役割として塗布するアスファルト乳剤について、散布してから上層のアスファルトを施工するまでに必要な養生時間について、「どれぐらい必要だったっけ?」と聞かれたものの、なんとなく漠然としか認識していなかったため、こちらも「???」となってしまったので、資料をあさり、確認してみた。

 アスファルト乳剤は、水分が蒸発し乳剤が完全に分解することで効果を発揮する。そのため、その効果が最大限発揮されるまでに要する時間(養生時間)を把握し、現場施工に再現することが必要であるが、養生時間については、管理要領やメーカーカタログに明記されていることが少ない。

 やっと見つけた『空港アスファルト舗装の層間付着に関する実験的検討(2008)』(国土交通省 国土技術政策総合研究所)を引用してまとめると、次のような結果となった。

✔ PK-4(タックコートと呼ばれる一般的な材料)よりも改質アスファルト乳剤の方が付着強度は高い。

✔ PK-4の場合、30分養生での引張試験において界面(層間)破壊する。 (付着強度が不十分、無散布の場合と明確な違いは見られない)※PK-4の場合、乳剤内の水分蒸発するまでに昼間で1時間、夜間で6時間程度必要といわれている。このため、十分な付着強度が得られなかったと想定される。

✔ 改質アスファルト乳剤の場合、30分養生での引張試験において界面以外で破壊するケースが大半を占めている。(必要な付着強度がほぼ確保されている)

✔ 養生温度が高い方が付着強度は高い。

 以上の結果から、必要な付着強度を得るための養生時間は、昼間で1時間、夜間で6時間を目安に、できる限り確保するよう計画を立案することが必要である。時間制約の中、早期解放が必要な場合、改質アスファルト乳剤を使用することが有効であるが、その場合でも30分程度の養生時間を確保することに留意する。

 舗装工事の場合、新設道路でない限り、通行を一旦制限して施工がされることがほとんどであろう。そのため、”交通開放”へ向けて時間的制約の中で施工を行うこととなる。ましてや、夜間に施工することが求められるような場合、早期解放は必須となる。そんな中で、夜間6時間の養生時間の確保は”無理”と言わざるを得ない。”時間もないし、養生時間が十分に取れないけど、しょうがないか”となりがちな気もするが、材料選定や施工条件の改善等により、相反する制約条件の中、要求性能の確保と社会的要請への対応など、トータル的な判断が必要である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?