男はみな看護師さんが大好き!

病気とも言えないことで、ひさしぶりに大病院に来ている。近代的になったもんだなあ、と感心しきり。

科の受付までベルトコンベア式に誘導してもらい、ぼんやりと診察を待っていると、70代後半と思しき男性が受付の40代の女性を指差して、大きな声をあげ始めた。

「エビデンスがないんだよ、エビデンスが」

治療に関してのクレームかと思いきや、どうやら診療の順番が気に食わないようだ。

興奮しているからか、発音が不明瞭になり、何を訴えているのか、よくわからない。受付の女性は耳を傾けてなんとか理解しようとしている。

だが、なかなか意が伝わらないことは、高齢者男性をさらに興奮させる。まずいぞ。

そう思った時に、30代の看護師さんが現れた。

「どうしたの?」

なんというか、クラスメートみたいに親密な呼びかけ方。男の肩に軽く手をあてる。

「ねえ、どうしたの?」

「いや、それがねえ……」

2人で並んで通路を歩きながら、看護師さんは「うん、うん」と事情を聞いてあげている。

「……ってことなんだよ。わっ、はっ、はっ」

驚くことに1分後、男は大時代的に笑ったのだ。看護師さんはそっと腕をとって空いている椅子に男を座らせる。

「先生にもね、ご都合があったのよ」

男は潤んだ目で看護師さんを見上げて、静かに頷いている。

ついさっきまでのぼくは、男を「厄介者」と思っていたが、今は「共感できる存在」として捉えている。

だって……ぼくも看護師さんが好きだし、できれば言いなりになりたいもの。

ね、みんな! みんなも看護師さんが好きだよね。恥ずかしがらなくていいんだよ。いくつになっても、永遠の憧れ、看護師さん。

諸兄よ、なだめられた先輩のように、これからもずっと看護師さんに憧れながら老い、そして死んでいこうではないか。

などと、ばかばかしいことでも書きたくなる程度に、待ち時間は退屈なのである。

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