統一教会と報道、自民党の対応について<2>
安倍元総理の暗殺後、山上容疑者の供述を、メディアがそのまま垂れ流す形で伝え続け、にわかに「統一教会」が問題視されることになった。
「安倍氏と統一教会はズブズブの関係だ」「自民党は統一教会に操られている」といった空気が醸成され、過去に統一教会との接点があった自民党議員が次々に糾弾された。
岸前防衛大臣が「過去に世界平和統一家庭連合(旧統一教会)メンバーに選挙運動を手伝ってもらったことがある」と発言すると、大きなニュースとなった。ぼくは「まあ、そういうこともあるだろう」と思った。下手に隠そうとせずに、率直に話されたことに清々しささえ感じた。
しかし、世間の反応は違った。統一教会に対して「不幸な山上容疑者を犯行に走らせた悪の組織」という構造を創り上げたメディアは、岸氏の発言を「いけしゃあしゃあと」と的に批判し、さらに自民党議員を槍玉に挙げ、その責任を問い続けた。
ここで立ち止まって、考えてみたい。
合法的な組織と関係している人間が、選挙のボランティアに参加することになんの問題があるのだろうか。
言っておくけど、個人的にはいやですよ。統一教会が嫌いだから。でも、いったんそれは横に置いておく。
統一教会であれ、他の組織であれ、政治家は支持が欲しい。手伝いも必要なら、票も必要。それが政治であり、とくに「選挙」というものだろう。
もちろん、岸さんが(ここは代表して岸さんに主語役を務めてもらうが)統一教会に特別な便宜を図ったというならば、話は変わってくる。ただ、「支援者の中に統一教会の信者がいた」くらいならば、それを有権者として容認できるかどうか、という程度のことだろう。
自民党には会員になっていた議員もいるというから、なるほど、中には取り込まれる人もいるのかな、とは思った。ぼくが彼の選挙区の住民ならば、絶対に投票しない。
議員のそうした背景が明らかになるのは誠に良いことである。でも、悪の手先と決めつけるようなやり方は、どうなんだろう。
で、自民党の対応である。
報道が加熱する中、岸田内閣は旧統一教会とは「一切関係を持たない」とする基本方針を打ち出した。
え、そんなことできる?
それがぼくの正直な感想だった。たとえば選挙にボランティアとして参加したいという人が来たとして、「あなたは統一教会の信者じゃないですよね」と聞くのだろうか。これは思想調査であり、基本的人権に反する、つまり憲法違反である。やばいだろう、それは。
立憲民主党は「地方議員までやれ」と言っている。これ、本当に大丈夫ですか。思想調査をやるなんて、もう、ほとんどあの国のようだ……と自民党は反論しなかった。
「統一教会とは関わりません」。本当にそれでよかったのか。
岸田内閣は正々堂々と
「これまでどおり、できるだけ多くの方に支持をいただけるように努力していく。それはその人が、どんな宗教を信じているかとは一切関係がない」
「その上で、各議員、党員が、どのような組織に支援を受けているかは、可能な限りオープンにしていくようにルールや仕組みを作っていく。自民党はさらにオープンな選挙を目指す」
「一方で霊感商法については、これまで同様、厳しい姿勢を貫いていくし、必要ならば新しい法律も検討していく。また、宗教二世の問題にも、より積極的に取り組んでいく」
と言えば、よかったんじゃないか、と思う。少なくとも「統一教会を排除する」というのは、そもそも実現が不可能だし、何の解決にもならない。その前に憲法違反だ。
すべては政治。ぼくの判断はいささか四角四面なのかもしれない。でも、時には理を通すことも必要なんじゃないか。毅然として、基本的人権の尊重を打ち出すほうが、結果的に支持を得られたのではないか、と思う。
最後に言っておけば、自民党は選挙に勝つためならば統一教会とも、ほかの新興宗教とも関わりを持つ政党なのだ。それが「利益誘導政党」とも言うべき自民党の一側面だと思う。
でも、残念ながら、今はセカンドベストであることも事実だ。岸田内閣に倒れられたら、喜ぶのはもちろん中国である。
日本の安全保障が、待ったなしの危機に突入した現在、岸田政権にしっかりとした舵取りをしてもらう以外に、日本に道はない、と思っている。
で、本当の最後に、ちょっとメディアの話に戻るけど……
メディアのみなさま、統一教会関連の茶番はこれくらいにして、もっと本質的なテーマで政権を批判してください。
宗教、新興宗教、カルトの問題に関しては、じっくりと腰を据えて、その本質的な問題を抉り出してください。
無理かあ。