土壌汚染調査はどこに依頼すればいい?
指定調査機関登録数 :718件
土壌汚染調査技術管理者試験合格者数 :約2700名
現在環境省に登録されている指定調査機関の数と土壌汚染の専門家になるための国家資格である土壌汚染調査技術管理者の合格者数です。
これを多いと見るか少ないと見るかは人それぞれです。
しかし、日本全国に拡散している可能性のある汚染土壌の箇所数、そして浄化工事完了後も地下水等の検査をしなくてはならない現状から判断すると、その数は明らかに少ないと言わざるを得ません。
しかも、指定調査機関として登録されている事業所全てが、土壌汚染調査を生業としているとは限らない。
いい加減な事業所に調査を依頼してしまった場合の悲劇は察するに余りあります。
そこで今回は、土壌汚染調査を依頼する場合の事業所の選び方についてお話いたします。
指定調査機関の存在
法制定前の土壌汚染調査
かつて土壌汚染調査は誰でもできました。・・というよりも国家で認められた土壌汚染調査の専門業者という者がいなかったという方が正確です。
つまり、「私が土壌汚染調査の専門業者だ」と名乗れば誰でもできたというわけです。
なんの技術もないのに専門業者を名乗って金だけせしめる詐欺業者もわずかに存在していましたが、土壌汚染調査を実施する業者のほとんどは、業務上土を土地扱う業者、つまり建設会社や地質調査会社、測量業者などが本来の業務の延長線上で行なっていました。
大気汚染も水質汚濁もそうですが、1つの公害事件から端を発してまるで波紋のように広がっていく公害への問題意識、土壌汚染もまた問題意識が世間へと広がり始めた時期でした。
土壌汚染問題が今後、全国的に問題視され始めると考えた各業者は、独自で土壌汚染調査のノウハウを開発し、自社オリジナル技術として確立、中には非常に優れた調査手法を開発した業者もありました。
優れた調査手法を開発した業者は、その手法を特許出願し特許を取得、手法を公開することで土壌汚染調査のスタンダードとなるはずでした。
ところが、各業者が開発した調査手法の多くは、地質学を深く習得した者でなければ実施ができない、つまり調査実施者が限定されてしまう手法だったのです。
そしてある出来事を境に、各業者が独自で開発した手法が全く意味をなさないものになってしまったのです。
土壌汚染調査は登録制へ
平成15年、土壌汚染対策法が制定され、土壌汚染という公害に対する対策に明確なルールが出来上がりました。
特定有害物質を製造、使用、保管する事業所に対する明確なルール、事業者を廃止した時の明確なルール、そして土壌汚染調査に対する明確なルールができたことにより、各業者はそのルールに従うことになったのです。
そして土壌汚染調査を実施することができる業者は環境省への登録制となったのです。環境省に土壌汚染調査の実施ができるとして登録された業者、それが「指定調査機関」です。
指定調査機関のその後
指定調査機関は審査により選ばれます。
環境省が求める必要書類を提出し、その上で審査が行われ、審査を通過した業者が指定調査機関として環境省に登録されます。土壌汚染調査ができる業者として活動ができるようになるわけです。
制定当初は、2000〜3000の業者が指定調査機関として登録されていました。当時は、土壌汚染調査を専門とする業者はほとんどおらず、建設会社や地質調査会社が本来の業務に土壌汚染調査兼ねるか、土壌汚染調査を専門とする小さな部門を設立するという形で、活動をしていたのです。
やがて、2000〜3000もの指定調査機関の半数以上が、指定調査機関の看板を下ろすことになるのです。
その理由が「土壌汚染調査技術管理者」という新たな国家資格の設立です。
土壌汚染調査技術管理者の誕生
指定調査機関登録に「土壌汚染調査技術管理者」の所属という要件が加わることになったのです。
以前にもお話したことがありますが、土壌汚染調査技術管理者とは土壌汚染調査や浄化に関する専門家であり、年1回実施される国家試験と現場経験に基づき認定されます。
受験資格はありませんし、1級建築士や技術士、司法試験のような難易度の高い試験ではありませんが、準備なしで合格できるような試験でもありません。
2010年に実施された第1回目試験では約1500名もの合格者が出ましたが、それ以降は150名〜300名ほどに止まり、以降2018年度実施の試験に至るまでの合格者は約2700名です。
現場経験不足により登録できない合格者も存在することも考慮すると約2300名ほどになり、その数はあまりにも少ないと言わざるを得ないでしょう。
そうして土壌汚染技術管理者を確保できない業者が指定調査機関の看板を下ろし、現在718件の業者を数えるに至ったのです。
調査費用
では、718もの業者の中からどのようにして選べばいいのか?
もちろん価格も非常に重要な要素です。というよりも、業者を選ぶときにはまず3社くらいから見積書をとって価格を見比べる事から始まるのではないでしょうか。いわゆる相見積もりですね。
価格の高い見積書に眉をひそめ、安い見積書に目を輝かせる。安く実施してくれるならばそれに越したことはないし、決済権を持つ上司の承認を得るのも容易です。
私自身も経験がありますが、どうしても価格で業者を選びがちです。
もちろん、それで良い仕事をしてくれるならば言うことはありません。上司からも「良い業者を見つけたな」と評価されることでしょう。
しかし、そう上手くいかないパターンの方がはるかに多いのです。
もちろん相見積もりを取ることは、間違いではありません。むしろ業者を決定する上での必須事項と言ってもいいでしょう。しかし、相見積もりの記載にある項目をしっかりと確認し、見積書の価格の意味するところをしっかりと見抜かなければならないのです。
・他と比べて安い見積書を出す業者はどんな業者か。
・なぜ安いのか。
・実績のある業者なのか。
・ホームページは立ち上げているのか。
・土壌汚染調査の専門業者なのか。
他にもポイントはあると思いますが、概ね上記の点に注意して見積書を読むべきでしょう。
価格以外の選ぶポイント
先ほども言いましたが、土壌汚染調査はもともと建設会社や地質調査会社が、本来の業務の延長線上で行ってきた業務です。そのため、指定調査機関として登録している業者の中には、土壌汚染調査単独で業務を行わない業者が多数存在します。
また、外部からの土壌汚染調査の依頼を受けない指定調査機関も存在します。例えば、大手の建設会社には土壌汚染調査技術管理者が5〜10名在籍している場合があり、当然指定調査機関として登録もされています。
もちろん、土壌汚染調査業務の受注も可能ですが、建設会社の場合、自社の本来の業務で土壌汚染調査が必要になる場合が多いため、あるいは、クライアントに対して、土壌汚染についての知識と技術もありますよ、と言うパフォーマンスのために登録しているのです。
つまり、土壌汚染調査を中心とした事業を展開している業者を選んだ方が良いと言うことになります。
地歴調査から始まり、場合によっては深度調査にまで至る土壌汚染調査。大きく3つの業務に分けられ、しかも、土木技術、ボーリング技術、地質学、化学、そして法律・・・幅広くしかもある程度深い知識も必要とされるため、土壌汚染調査全体に精通している業者を選ぶことが安心にもつながると考えられます。
多少価格は高くてもそれだけの価値は見込めるでしょう。
土地の大きさは選ぶ基準になるか
調査対象地が小さい場合と大きい場合で、別々の業者を選ぶ・・・と言うことはありません。土地の大小関係なく土壌汚染対策法の対象となり得ますし、土壌汚染調査手法が変わると言うこともありません。
確かに、調査対象地の面積が3000㎡以上の場合は4条調査の対象となり、土地の大きさと言う点では1つの基準ですが、土壌汚染調査の手法自体が変わることはありません。
ただ、小さい土地ならば測量も土壌試料採取も少人数で済むため小規模業者でも対応しやすくなりますが、小学校や工場跡地のような大きな土地になると土壌汚染調査の規模自体も大きくなります。
そうなると小規模業者では対応が難しくなります。改めて別の業者を選び直す必要が出てくることもありますが、その前に付き合いのある業者に相談してみましょう。
仮に単独での調査が難しいと判断されたとしても、別の業者の応援を頼む等の対応をしてくれる場合もあります。
まとめ
現在、718を数える指定調査機関。しかし、実際に外部から土壌汚染調査の受注を行なう業者は限定され、土壌汚染調査を中心として業務を行なう業者となるとさらに限定されてしまいます。
まだまだ歴史の浅い土壌汚染対策法に基づく調査であるがゆえに、未熟な技術しか持たない業者も存在します。
そんな中から優秀な業者を選ぶのは、極めて困難と言わざるを得ないでしょう。
優秀な業者を見つけるために最も適切な方法、それは他者から紹介してもらうこと、あるいは実績のある業者を見つけることです。
建設会社や不動産会社ならば、業務上土壌汚染調査を行なう業者と繋がる機会は多くあります。彼らから紹介してもらう業者は価格も適正でしっかりと業務を行ってくれる可能性が高くなります。
また、業者のホームページを確認することです。ホームページを開設している業者ならば、自社の業務実績は必ず掲載しているはずです。それが業者選びの1つの基準となります。
大きな財産である土地が汚染されているかどうかを判断する極めて重要な土壌汚染調査。だからこそ、業者選びも慎重に慎重を重ねたいところです。
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