自分たちでゼロから結婚式を創った夫婦の話し。~Ep20.責任~
Ep20.責任
終わるときはあっさりとしていた。あれだけ時間をかけて作ったセットも1時間もすればほとんどが解体されていった。僕もみはるも感傷に浸る時間もないままに片づけに追われていた。スタッフも土砂降りの中、総出で作業を進めていた。
一通り片付けが終わり、帰ろうとした時に事件は起きた。借りていたレンタカーのセレナがいくら待っても会場に到着しなかったのだ。元々、参列者の送迎のために駅まで向かっていたが途中で立ち往生したというのだ。
その時、事故の詳しい状況は分からなかったため僕とみはるは会場を後にした。疲れ切っていたこともあり、その時は何も考えたくなかったのもある。
次の日は会社を休み、みはるの定期健診に付いていった。病院のエコー室に呼ばれお腹の状態をモニターで見せてもらった。元気過ぎて上手く認識できなったが、性別は女の子ということは分かった。結婚式の準備でかなり身体に負荷をかけたので心配していたが、何の問題もなく育っているとのことだった。
その日の夜、僕と木内、笠井、石原で事故について緊急ミーティングが行われた。事故の発生状況を詳しく聞いたところ、送迎として頼んでいたスタッフがあぜ道を脱輪したとのことだった。幸いにもそのスタッフにはケガはなく、歩行者も近くにいなかった。ただ、レッカー車を翌日頼んだことと車の破損で請求額が34万円にも及んだ。他にも別のレンタカーをぶつけた件で6万円の請求書が来た。合計で40万円もの損害額となってしまったのだ。
僕たちにその金額を支払う余裕もなく、議論は責任問題にまで発展した。結婚式が終わって2,3日で気持ちを切り替えなければならなかった。話し合いの末、結果的に損害額の7割はAtelierWeddingで負担することで話は落ち着いた。事故を起こした本人には少しずつでいいから返済するように伝えた。
後日、AtelierWeddingのメンバー全員を呼び頭を下げた。「今回発生した脱輪事故の損害金額を支払った結果。ここにいるスタッフの給料を出すことが出来ない。申し訳ない。」みんなの顔を見ることが出来なかった。あれだけ努力して、普段の仕事もあるなか睡眠時間を削って準備してくれたメンバーに顔向けなど出来るハズもなかった。
長谷川と知念は泣いていた。それでも、一緒にやってこられたことが嬉しいと言ってくれたのだ。個人的に用意していた少しばかりのお金を全員に渡し、「ありがとう。」と伝えた。僕は皆の表情を見ながらこの経験を絶対に無駄にしないと心に誓った。
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