笛を使わないということ。
ジュニアユース練習が終わると
大学生コーチがこんな質問をしてきました。
「 “ 笛を使わないでやろう ”
には、どんな意図があったんですか? 」
この日は全員が同じ会場だったので
彼にU-14,15を見てもらい、自分はU-13を担当。
練習スペースは大・小の2つに分け
それを時間で交代する形で行いました。
その切り替わるタイミングで提案したのでした。
「 この後の練習は、笛を使わないでやろうよ 」
彼は不思議そうな顔をしながらも
「はい、わかりました」と
その後は笛を一度も吹かずに進行していきました。
そして練習が終ると
すぐに自分のところにやって来て
先ほどの質問をしてきたのです。
嬉しい気持ちが、じんわり、じんわり、と。
九州大学サッカー部でプレーをしている彼は
(チームでは戦術班という担当もしているそう)
1年くらい前から週1回だけ関わってくれています。
社交性のある動的なタイプではなく
独りでもいられる静的なタイプ。
周りに左右されない安定感があります。
(ポジションはセンターバック。ピッタリ!)
そういう部分も影響していると思うのですが
じつは、彼から初めてされた質問だったのです。
笛を使わないでやろうとした理由を
逆にこちらから聞いてみると
こんな素晴らしい答えが返ってきました。
「 自分的には笛を使わないことで
自分の声でどうやって伝えないといけないかを
考えるからと思いました 」
で、この質問以外にも
戦術班として気になっていることの質問もあり
これまでの彼とは明らかに変わった印象がありました。
これまで同様どしっと構えていながらも
自らアクションを起こせるようにもなっていて。
コロナの自粛期間で
気持ち的に何か変化した部分があったのか
時間が経ったことで自分への警戒心が減ったのか。
真相はわかりませんが、まぁ、嬉しい成長の跡でした。
ちなみに
自分が笛を使わないでやることを提案したのは
彼が言ったように「伝える」ということを
より意識していってほしかったからなのですが
個人的にもあまり使わないようにはしていて
それは、こんな理由からになります。
①笛の音で選手の意識をこちらに向かせるのは
フィジカル的に楽で、本気が伝わりづらいから。
②自分の声でこちらに向かせるには
声の大きさ、トーン、表現力などが求められて
コーチとしての「伝える」スキルアップになるから。
③選手たちに
「人の声を聴き取る」体験を積んでほしいから。
④笛の音は「従わせる」イメージがあって嫌いだから。
ピリッとさせたいときには
あえて思いっきり使うこともありますが。
そういう意味では
コスタリカでプレーしていたチームの
“ マウリシオ ”という監督は
「伝える」部分でもプロフェッショナルだったなぁ。
元コスタリカ代表選手で
1990年イタリアW杯にも出場したその監督は
いつもは豪快に笑って
みんなをリラックスさせては巻き込んでいき。
でも、緩い雰囲気の練習だったときには
それを怒ったり、そういう言葉を使うことなく
声のトーンや話すスピード感だけで
チーム全体にいい緊張感を生み出したり。
まさに「表現者」でした。
自分もそうなりたい。憧れの人です。
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