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通貨価値を連続的基調担保するものは食料生産のみである

 通貨価値を担保するものが何であるかはあまり議論されないが重要なことである。なぜ通貨に価値があるのか、それはいかばかりか。
 硬化は金属なので、どれだけ通貨価値が低落してもその材料となった金属の値打ちは最低限保障されよう。1円玉ならば1gのアルミニウムの価値はある。しかし1万円札は紙幣である。いくら精妙な印刷が施してあるにせよ1万円の価値をその物体(1枚の紙)に担保させるわけにはいかない。
 通貨は取引できてこそその価値を発揮する。
 もしある島に取引すべきものが何も産まれなければ通貨が山積みにされたところで通貨には使用価値がない。
 逆に、生産物が山積みにされても通貨がなければ流通させるのは難しい。
通貨量と生産物量にはある均衡が大事である。
 通貨発行速度よりも生産量の速度が大きければ通貨不足となり、流通に支障が生じ、通貨発行速度が生産速度よりも大きければ通貨が過剰となり物価高になる。これも流通の妨げである。一般的な言い方として前者がデフレ、後者がインフレである。従って通貨発行速度と生産速度は釣り合っている必要がある。
 生産には一次産業によるもの、二次産業によるもの、三次産業によるものがある。
 一次産業によるものは食料である。食料は人口に比例して必要である、毎日その取引は欠かせない。私は食料生産こそ通貨価値を真に担保するものだと考えている。食料生産には1日~トンというように人口に依存する生産速度があり、これを商うための通貨流通速度は基調として均衡する。通貨流通量の調節は食料流通量を基本とする。
 二次産業による代表的な生産は工業製品などである。これは普及度合いによって生産速度が決まる。自動車が完全に普及したならば生産需要は頭打ちになる。壊れて買い替えする需要は一定あるが普及時代に比べれば毎年増え続けるというものではない。
 マルクスは資本主義生産様式では剰余価値を得続けることがいずれ困難になり行き詰まると予測した。これを需給バランスの観点からみれば製品の十分な普及によって成長市場は止まるともいえる。
 二次産業に通貨価値を委ねれば常に新しい製品を開発し続けねば通貨価値を維持できなくなる。目新しいものが出回れば景気はよくなるが、そうでなければ景気は沈んでゆく。通貨価値を二次産業に依存させようとすると景気(商品の売れ行き具合)に左右される。
 三次産業によるものはサービス業、金融商品である。これらは架空の価値ともいえる。ここで現物取引というのは一、二次産業の生産物に付加的な価値を載せて商品として取引する場合である。三次産業での取引というのは一つの品物を何人もの仲介業者が取り扱えるのでGDPの計算では最初の原製品の数倍になり経済が成長したように見える。拡大効果である。しかし、この取引形態においては一つの製品に対して使われる通貨量が過大になり、いずれインフレになってゆく。
 しかも労働者は先に述べたように1→2→3次産業へは移動しやすいが、その逆には動きにくいものである。
 資本の動きも三次産業への投資が最も楽であるが、3→2→1とこの順に投資しづらくなる。三次産業は利益を出しやすいが、食料という必需な物資で利益を出すことは難しい。農業や漁業に投資することは必要であるが、巨大な利益を期待できない。
 こういった必須ではあるが、利益を過大に求めるわけにはいかない投資というのは公的社会的、計画的に行うべきものである。(社会主義)
 さて、通貨価値はその域内にて単位期間内にどれだけ取引があったかの簿価で計算されよう。いわゆる先進国では三次産業がGDPの8割を占めている。これは発行通貨量が大きくなるが農工生産が比率としては少ないので現物によって担保されていない。こうした系では通貨価値が大きく変動しやすい。不安定なのである。サービス価値なんて消えてなくなるかもしれないし、生存に必須のものでもない。まして債権などの売買は借金の証文売買であり、それが通貨価値をも担保するなんて言うならば詐欺的である。バブル市場なんて通貨価値を創出しているわけではない。過剰に発行しすぎた通貨は生活物価高を引き起こして民の生活を苦しめる。先進国でGDP値は高く一人当たりの所得が高いなんて言うが、出費も当然高額であるから、差し引きして手元に残るカネはなく、実際には生活は貧しくなる。
 結局最も安定して確かな価値担保は食料生産だと言える。
 いわゆる先進国のGDPのうち農産によるものは5%以下でしかない。それでは先進国というよりも失敗国であり、生産の実体の抜けた架空の先進性である。
 農業を棄てた国は滅びる。これは法則である。
 地下資源は当然通貨を担保するが日本でそれを求めても無理である。
 仮想通貨では通貨価値を規定する作業をマイニング(採鉱)と呼ぶらしい。これは農産における「耕作や収穫」に相当する。耕作し、収穫してこそ、その分通貨発行の権限が発生するというものである。
 万国の農業者よ、収穫こそ通貨発行と同等の権限であり、新たな価値の創出である。
 農業生産の増加分が新たな通貨発行量に比例すべきである。この制度設計は原始的に思えるかもしれないが、重要である。経済は単純明快であればよい。


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