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親と卵

産卵期になるとオスに比してメスの毒量が多くなることから、卵に毒を移行させて、卵が外敵から守られるような防御手段として利用されていることが考察されています。ここで2つ見落としてはいけない事があります。1つは、産卵に向けて高められた親の毒量と卵の毒量の差です。高められたTTXが全て卵に移行するわけではありません。毒量に個体差があるので、ここでは何%と指標となる数字を述べることができませんが、その量は私たちが想像するよりも少量です。卵に移行する毒は、それを食べた生物が致死するような猛毒である必要はありません。捕食者が卵を忌避(嫌気)する程度で良いのです。

次に、その程度の毒量の移行であれば、何故そこまで毒量を高める必要があるのか、と言うことです。実は、ここに毒を持つことと同様のレトリックが存在していると考えます。それは、毒を持つことが、対外的な要因に認識されやすい、つまり相対する致死量の印象が強いのです。産卵に向けて毒量の上昇が、卵に移行する毒量にイコールするイメージは、毒を持つ事で攻撃的な要因を多分に含んでいるのでは無いかという認識です。

以前にも話題にしましたが、海洋生物群におけるTTX保有は、猛毒イコール致死では無く、その毒を持つ必要性が優先され、その毒によって、何らかの形で他の生物が死に至るのは結果でしか無い、ということです。であれば、そこまで毒量を高める必要性があるのか、となります。ここは微妙に伝わり難いことですが、卵への毒の移行が本来の目的ではなく、この場合は、親の防御としての利用に他ならないのです。それならば、そもそものTTX保有の根源は何なのか、と指摘される恐れがありますが、これは自身の生存保持と種の保存では根本的に異なる故、別問題と捉える必要性があり、根源はここではなく他にあると考えております。

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