見出し画像

「地方交付税等の一部を改正する法律案」についての調査(政治家女子48党浜田聡参議院議員のお手伝い)

今回、総務省より提出された地方交付税等の一部を改正する法律案が提出されました。令和5年度の総務省所管予算に記載されている財源の確保が主たる目的となっています。この改正案はこの改正案のなかで特に気になった点を指摘していきたいと思います。
内容は大きく分けると
 
①地方交付税総額の確保と算定内容の改正
 ②震災復興特別交付税の確保
 
という内容になります。

地方交付税の算定の基礎となる単位費用について

地方交付税の算定について地方交付税の算定については2022年4月25日の参議院「国と地方の行政の役割分担に関する小委員会」でNHK党の浜田聡参議院議員により算定方法についてご指摘されています。そもそも算定方法について問題があるのではという指摘をしていました。この指摘に着目し、地方交付税法の新旧対照文を確認してみました。

地方交付税の測定単位及び単位費用は地方交付税法第12条に規定されており、道府県、市区町村に分類され、多岐にわたる項目が定められている。また、その補正については第13条に規定があります。測定単位と経費について確認してみると、個別増減が記されているが、気になる点は教育費と厚生費についてであります。(新旧対照条文P39~59) 
道府県の教育費の項目で小中高等学校及び特別支援学校費については教職員一人当たりの経費が減少しています。厚生労働費の項目では生活保護費を除くすべての項目が増加しています。市区町村の経費においても厚生費は生活保護費を除くすべての項目が増加しております。高齢化が進んでいるため、自然と増加することは理解できますが、少子化が危機的状況と叫ばれるなかで、現在の測定基準でよいのか疑問に感じるところです。

震災復興特別交付税の使途について

②の震災復興特別交付税について、本当に財源を確保する必要があるのか提起したいと思います。復興庁の公開レポートによると、東日本大震災復興関連予算のうち、震災復興特別交付税は平成23年から令和3年度までに6兆115億円が予算執行され、総額39兆4,482億円のうち15.2%を占めます。年々、交付総額は減少し、復興が進んでいることが喜ばしいことではあります。復興事業の成果から避難者は最大約47万人から約3.1万人まで減少し、仮設住宅等の入居者は最大約12万4千戸から約1千戸にまで減少し、成果をみることができます。また、被災された地域の再建も進んでおり、令和2年で住宅関連の整備は完了しています。インフラ整備も概ね完了しています。
反面、使途の流用や不透明さを他方メディアでも指摘されています。

復興庁 「令和5年度 東日本大震災復興特別会計予算案の概要」
復興庁 「東日本大震災復興関連予算の執行状況」

震災復興特別交付税の問題

 そもそもこの震災復興特別交付税は震災復興のために使われる事が目的であり、復興特別税(東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法)として国民に税負担を課しました。しかし、その税金の使い方は本来の目的とかけ離れたものに使われている事実が以前から指摘されています。

詳細は添付した記事を参照していただければと思いますが、現在も政府は防衛予算を震災復興予算から転用する考えを示しています。震災復興のために国民は増税を余儀なくされ、目的に沿わない税金の使途が許されるのであれば、政府の都合で如何様にも徴税が行われてしまいます。

 震災復興特別交付税の交付額に関しては総務省の報道資料から確認できますが、その使途についてはかなり不透明な点があると指摘せざるをえない状況であると思われます。この点について、総務省が公開している「令和4年度震災復興特別交付税の9月交付額の決定」という報道資料をもとに、各道府県・市町村の事務事業評価(行政評価)を確認してみました。確認したところ、そもそも事務事業評価を公開している団体が177団体中77団体しか存在しておらず、公開していても中身が煩雑である団体もあるため、透明性について非常に疑問がもたれるところです。
 また、会計検査院から震災復興特別交付税の清算等について是正改善が求められたという事案が度々あります。少し古いですが、平成26年度には多くの自治体への是正改善が求められ、令和3年度にも4町村に求められています。

前述した復興予算流用の問題に加え、交付税の使途が基礎自治体で公開されていない現状で、年々交付税額が減少しているとはいえ、復興特別所得税は令和19年まで導入が定められていますが、続ける必要があるのでしょうか。

東日本大震災の復興と財源確保について

 復興庁が令和5年2月に発表した「復興の現状と今後の取り組み」を概観すると、インフラ・住宅はほぼ完了しており、原子力災害の問題が内在してはいるものの、地震・津波被災地域の復興は役割を終えていると判断してよい数字が並びます。
本当に震災復興特別交付税の確保が必要なのか、指摘していきます。復興庁のレポート(令和5年2月)によれば、地震・津波被災地域の復興は概ね完了としています。原子力被害被災地域では復興・再生が「本格的に始まった」段階であるとしています。

復興庁 「現状と取り組み」令和5年2月より

 しかし、ここで気になる取り組みが多々あることを指摘します。
 
被災者支援の取り組みをみると、どこの自治体にもあるメンタルケアの事業が多く、これらは12年経った今も特別事業として継続する必要があるのかは疑問に感じます。地方自治体には心のケアに関する事業が既にあり、心のケアに関連する事業は全国の自治体にも存在します。被災者の復帰が9割以上完了する中で本当に必要な事業なのでしょうか?
ここで大船渡市の行政評価シートを確認します。
⑥の対象指標に対し、⑦の成果指標の数が非常に少なく、継続する成果になっているのか疑問に残るところです。

このように、行政評価シートを確認できる自治体は前述のとおり、半数に満たない状態であり、公開している自治体によっても評価の温度差を見受けられる状態です。
もちろん震災による過去の記憶は忘れがたい辛さを蔑ろにする事を言っているのではなく、人の心のケアまで政府が介入すること自体が政府による統制であり、地域の住民の自立を阻害するものであります。移住・定住の促進は地元の住民が取り組むものであり、政府が介入することは自治体の役割を奪うことになり、地域の活力を強めることにはなりません。平成23年から令和6年までの震災復興特別交付税の概要計画の見直しにより、より有用な税金の使途を望むところであります。

最後に

 これまでみてきた「地方交付税等の一部を改正する法律案」からは日本の税の在り方を根底的に見直す一つの契機であると考えます。地方交付税は税収の多い自治体から少ない自治体へと交付され、納税先ではない自治体によって使われます。そのような観点からも総務省には再度、算定基準の明確化や使途の透明性の確保を求めるべきではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?