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一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について(NHKから国民を守る党浜田聡参議院議員のお手伝い)


いよいよ秋の臨時国会が始まりました。前回の常会では国民の関心の薄いところで増税案を成立させていったことに目につきました。国民が監視を怠ることなく常に注視していきたいと思います。今回の法案調査は一般職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び特別職の職員の給与に関する法律等の一部を改正する法律案及び二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法の一部を改正する法律案です。この法案は平たく言えば、国家公務員のうちの一般職及び特別職の給料引き上げ法案です。

批判の対象になることに異論はありませんが、この法律がどのようなものなのか見ていきたいと思います。
以下が概要になります。


①人事院勧告による官民の賃金比較

まず一般職について見ていきましょう。法律案にもあるように、人事院勧告に基づくものとしており、令和5年8月の人事院の調査報告よると令和5年の官民の格差が3,869円としています。これに基づき月収で2.7%、年収で3.3%の改善を目指すものとしています。この算出方法は「ラスパイレス比較」というもので算出されています。「ラスパイレス比較」とは、日本では行政の賃金の比較に際して、国家公務員と地方公務員(地方公共団体の公務員)の基本給与額を比較する指数として用いられることが多く、国家公務員と地方公務員の賃金格差がよく指摘されています。官民との比較基準が勤務地、組織形態、役職、学歴や年齢階層などから類似した企業を層化無作為抽出法というもので事業者の選定をおこなっています。民間企業の選定に関しては企業規模・事業所規模50人以上という基準を設けています。調査対象の事業所は11,900所ですが、いわゆる中小企業比較基準の対象となっていないのではないかという点に議論の余地があります。まず企業規模・事業所規模50人以上というのは規模としては比較的大きい規模になります。中小企業の定義は業種によって異なるので、国家公務員一般職の業種比較は難しいものではありますが、令和5年6月時点で4,580,000社ある全体から見れば、比較対象を絞りすぎているのではないかと感じます。疑問に感じる根拠は人事院が令和5年8月に発表している「給与勧告の仕組み」の参考条文にある国家公務員法第28条1項の解釈によるものです。

国家公務員法第28条1項の条文に「社会一般の情勢に適応するように」とあるように、国民負担率が高いため、実質賃金が上昇しない中で、社会情勢に相応しているのかは疑問に残るところです。現在の日本の平均と国家公務員の年収比較をすることが「社会一般の情勢に適応する」のではないでしょうか。

国家公務員 一般職 年齢別平均年収


民間企業 年齢別平均年収

比較基準を選定している結果、社会全体の平均年収と大きくかけ離れているのが変わるかと思います。
 
労働政策研究所が発表した令和5年5月時点での賃上げ率によると3%台後半を維持しています。今回の支給額の引き上げは賃上げ率に相応したものとの解釈することもできます。国家公務員も一国民であり、現在の物価高や国民負担率の上昇によって負担増になっているため、賃金上昇するのは嬉しい事でしょう。しかし、国民負担率を引き上げ、生活への負担を膨らましてきたのは政府です。社会全体の収入と比較したときに、今回の支給額引き上げは賛同できるものではないのではないでしょうか。
 
また、在宅勤務に関する手当が創設されました。月3,000円程度の引き上げですが、国家公務員の諸手当は比較的手厚いという印象です。手当に関しては企業ごとに独自の手当てを設けている場合もあり、比較が難しいですが、国家公務員の諸手当をご覧いただき、ご自身が務めている会社の手当てと比較していただければ分かりやすいかと思います。

②フレックスタイムの導入について

一般職に関してはフレックスタイム制の導入が全面的な導入を令和7年4月より導入するとのことです。これも人事院勧告によるものです。人事院勧告の資料によると「週1日を限度に勤務時間を割り振らない日を設ける」というものです。もう少しわかりやすく言えば、週1日は勤務時間を自由に自身で設定できるということです。月の総量労働時間は決められているので、その中で自己裁量が少しながら増えたと考えてよいでしょう。勤務形態の柔軟性はどの業種にも不可欠な時代になってきています。この点に関しては評価してもよいものはないかとは思います。フレックスタイムに関しては組織で働く上でのコミュニケーションの円滑さが常に課題となります。他省庁や民間団体との渉外など多岐にわたる業務の混乱がないよう組織ないでの円滑なコミュニケーションが取れることを期待します。
 しかしながら、フレックスタイムの導入には支給額引き上げ同様、整合性が取れるのか疑問に残るところがあります。こちらも疑問に持つ根拠は国家公務員法第28条1項の条文です。人事院が掲げる「多様なワークスタイル・ライフスタイル」への対応をおこなうことが「情勢適応の原則」に則っているのか疑問に残るところです。厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査」によるとフレックスタイム制を導入している企業割合は6.5%です。従業員1,000人以上の大企業で導入している割合を見ても28.7%とまだまだ社会全体を俯瞰すると広がっているとは言い難い数値です。フレックスタイム制の導入は賛同するところですが、人事院が勧告するにあたり、国家公務員法の「情勢適応の原則」からすれば、政府や官僚がけん引するのではなく、数値的根拠をもとに民間企業の後追いをするべきなのではないでしょうか。

③特別職の支給額引き上げ

この法案に関しては、すでにメディアでも多数取り上げられているように、多くの批判の声を耳にします。

一般職の支給額引き上げに比べ、やはり特別職の支給額引き上げは注目されます。引き上げ額は記事にもわかりやすく記載があるため割愛させていただきます。記事のコメント欄にもあるように、日本の経済状況を鑑みた際、批判が出るのは致し方ないものでしょう。ここで注目すべきは改正理由です。提出された法案理由は以下になります。

一般職の国家公務員”の給与改定に伴い、特別職の職員の給与の額の改定を行う必要がある

法案提出理由より

つまり、「一般職が変わるなら特別職も変える必要がある。」があるという言い分です。
令和5年11月1日の参議院予算委員会で日本維新の会の音喜多駿参議院議員が当該法案について質疑をしています。音喜多議員の「公務員給与と連動しなければいけないものなのか?」という質疑に対して、参考人(内閣人事局人事政策統括官:くぼた おさむ氏)は「人事院勧告と連動するものではない」との答弁をおこなっております。
令和5年10月20日には「公務員の給与改定に関する取扱いについて」の閣議決定が発表されています。つまり慣例に従って支給額を引き上げるというのが現内閣の意志になります。自主返納を首相はじめ閣僚が行っているというのは言い訳にしかなりません。

一般職の給料引き上げを理由に特別職の支給額引き上げをおこなうことになりますが、そもそも法律が異なります。特別職の引き上げをおこなう理由にはなりません。
 また、特別職の多数は防衛省職員(自衛官も含める)になり、特別職職員のうち約26.8万人になります。次いで裁判所職員約2.6万人です。
 特別職にあたる職員の中でも、給料に関しては別に法律で定めている職種があります。防衛省職員と裁判所職員に関しては別の法律で規定されています。その他にも関連して検察官も別に定められており、この防衛省と法務省より今国会で給与改定の法案が提出されています。前述したように、特別職といっても給料に関する法律を別とする職種もあるため、一般職の支給額引き上げを理由にする特別職の引き上げに関しては個別に情勢に合わせて改定すればよいだけの話です。自衛官の待遇についてよく問題視されますが、であるならば「防衛省の職員の給与等に関する法律」だけ法改正すれば良いだけの事です。
 また特別職に該当する役職が非常に多く、防衛省職員、裁判所職員や検察官を除くと85の役職があります。多くの委員会が時の情勢によって設置されたものになりますが、それは政府の肥大化であり、財政の肥大化でもあります。国民負担率が上がるなかで財政圧迫をするような組織の肥大化は止めなくてはなりません。防衛費捻出のために増税を検討する前に、政府自ら自制する姿勢を示してほしいものです。

④2025年日本国際博覧会政府代表について

今回の支給額改定にある2025年日本国債博覧会政府代表についても触れておき.ます。日本国際博覧会は万博と呼ばれ、大阪での開催を予定していることは周知の通りかと思います。政府代表の派遣は令和4年1月施行の「二千二十五年日本国際博覧会政府代表の設置に関する臨時措置法」に基づいて創設されたものです。臨時措置法は「国際博覧会条約」に基づくものになります。大阪万博に関しては諸々問題点が指摘されてますが、本件から脱線するため、割愛します。こちらも特別職扱いにはなりますが、特別職に関する法律とは別に支給額は定められています。外務省から1名の派遣となっています。ここでも同様の指摘になりますが、法律によって別途定められているのであれば、引き上げる必要はないのではないでしょうか?大阪万博に関しても、2021年に行われた東京オリンピックに関しても想定以上の費用が掛かり、問題になっています。そのような状況の中で、支給額引き上げをおこなうのは歳出を絞る発想と逆行するのは納税者としては納得がいかないのではないでしょうか。

⑤おわりに(質問するとしたら)

公務員も一国民である以上、支給額の引き上げは当事者にとっては嬉しい限りでしょう。しかし、現在の物価高と高い国民負担率のなかで、率先して支給額の引き上げをおこなうことが“全体の奉仕者”としてふさわしい姿勢なのでしょうか。納税者目線での政府運営を行うのであれば今回の支給額引き上げにまつわる悪しき慣例を辞めるべきです。

・令和5年11月1日の参議院予算委員会でのなかで内閣人事局人事政策統括官(くぼた おさむ氏)は「人事院勧告と連動するものではない」との答弁をおこなっている。政府は令和5年10月20日には「公務員の給与改定に関する取扱いについて」の閣議決定をおこなっている。岸田首相は臨時国会に際し、「税収増した分を国民に還元する」との所信表明演説がおこなわれたのだが、国家公務員、少なくとも自衛官を除く特別職の給料増は「国民に還元する」との声明に反しているのではないか。見解を聞きたい。
 
・国家公務員の給料に関しては法律が異なる職制何点かある。給与改定に関して人事院勧告に連動するものでないのであれば、一般職に伴う特別職その他の職制の支給額引き上げも連動しなくても良いはずである。このような根拠のない慣例の見直しをおこない、個別法案によって対応する必要があると思われるが、どのような認識をもっているのか見解を聞きたい。
 
・フレックスタイム制を導入している民間企業は日本で広まりつつあるものの、まだ広がっているといえる状況ではないなかで、政府はフレックスタイム制の導入を決めた。また、今回の国家公務員の支給額引き上げをおこなうことは国民との年収を比較しても高水準である。昨今の経済状況や国民負担率を鑑みた際、さらなる国民負担増ということになる。国家公務員の生活負担も考えた際、今回提出された法案を施行するよりも、減税による可処分所得の増加をおこなう方が日本国民全体への寄与につながるが、そのような視点から国家公務員及び一般国民への配慮はなされないのか。見解を聞きたい。
 
最後までご拝読ありがとうございました。

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