《ティシャーナの潮縛り》
今回はこのカードに関することです。
このカードは能力を打ち消す効果もさることながら、その後にある、能力の大元を失わせるという効果が強力で、イベントでもよく使用されるカードになっています。しかしその分、出されたプレイヤーが疑問に感じる点が多く、いくつかの状況ではややこしいことになります。現に、2023年11月末に行われたプレイヤーズコンベンション・愛知では、多くのジャッジコールがこのカードに伴うものだったという報告もうけています。
この記事では、この《ティシャーナの潮縛り》の効果を細かく見ていき、どのルールが使われているのかを解説していきます。
誘発型能力と起動型能力
《ティシャーナの潮縛り》の誘発型能力の対象は、誘発型能力や起動型能力です。つまり、スタックに積まれているが実際には目に見えないものを対象にすることになります。まず誘発型能力から簡単におさらいしましょう。総合ルールから引用します。
日本語版では「~が戦場に出たとき、」「~が攻撃するたび、」「アップキープの開始時に、」といった表現がなされます。このような能力は誘発型能力です。
対し、起動型能力は以下の通りです。
起動型能力のほうはわかりやすく、コロン(:)が書かれています。コロンの前が起動コスト、コロンの後が起動型能力の効果ですね。
誘発型能力も、起動型能力もスタックに積まれて解決を待ちます。つまり、《ティシャーナの潮縛り》の誘発型能力は、それらを対象にすることになります。
オブジェクトの記載
《ティシャーナの潮縛り》の誘発型能力の後ろのほうにある、能力を失わせる効果は、能力がそのオブジェクトにあるかを参照します。
それらのオブジェクトの記載としては、カードタイプの他には何も書いていません。このような場合、該当するカードタイプであるパーマネントのみを指します。
つまり、打ち消した能力がクリーチャー・呪文であったり、統率領域にあるクリーチャーであったとしても、大元の能力が失われることはありません。
能力を失う
能力を失うのは継続的効果・第6種です。つまり、これは他にそのパーマネントに能力を与える効果があったなら、それはタイムスタンプ順に処理されるということを指します。また、他の継続的効果も同様に機能したままになります。
一例を挙げましょう。APが《不穏な浅瀬》をクリーチャー化し、これで攻撃したとします。これによる誘発型能力の解決前に、NAPは《ティシャーナの潮縛り》を唱えて戦場に出し、《不穏な浅瀬》の誘発型能力を対象にしました。この場合、誘発型能力は打ち消されて、かつ《不穏な浅瀬》は今はクリーチャーなので、これの能力が全て失われます(第6種)。しかし、サメ・クリーチャーになること(第4種)や、青黒であること(第5種)、4/4になること(第7b種)はそのまま適用されるので、以下のようになります。
その後、ターンを終了すると、この《不穏な浅瀬》はクリーチャーになる効果がなくなります。従って、以下のようになります。
もう何も能力を持たないただの土地になります。
マナ能力も失われることに注意ください。《ティシャーナの潮縛り》の注釈文にある「マナ能力は対象にとれない」とは、《ティシャーナの潮縛り》の誘発型能力の対象として、マナ能力を対象にすることができない、という意味です。「すべての能力を失っても、マナ能力は失われない」という意味ではありません。
期限付き継続的効果
《ティシャーナの潮縛り》で能力を失わせることができるのは、《ティシャーナの潮縛り》が戦場にある間だけです。つまり、この継続的効果は、期限があります。
例を出しましょう。先程すべての能力を失った《不穏な浅瀬》は、《ティシャーナの潮縛り》が戦場から離れると、本来の能力を持った状態に戻ります。これは継続的効果の適用の期限が切れて、適用されなくなったためです。
また、このような期限付きの継続的効果は、適用され始める前に「期限の終わり」が来ていると、継続的効果そのものが全く適用されなくなります。
例を出しましょう。APが《聖トラフトの霊》で攻撃しました。これによる誘発型能力を対象に、NAPが《ティシャーナの潮縛り》を出してその誘発型能力を打ち消そうとしました。これに割り込んで、APはNAPの《ティシャーナの潮縛り》を対象に《流刑への道》を唱えました。
この場合、《聖トラフトの霊》の誘発型能力は打ち消されますが、もう《ティシャーナの潮縛り》は戦場に無いので、《聖トラフトの霊》の能力が失われることは一瞬たりともありません。それは呪禁や他の能力を持ち続けます。
今回は以上です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?