デザイアシャッフル

先週の金曜出題箱では以下のような出題をしました。

これの回答そのものは短い文章で足りるのですが、補足説明が必要だと感じたので、noteに記事化することにしました。しばらくお付き合いください。

ごく短い回答

回答としては「3つ」になります。書かれている選択肢のうち3つが誤りです。

長い解説

まずは《精神の願望》のテキストからおさらいしましょう。

ライブラリーを切り直す。その後、あなたのライブラリーの一番上のカードを追放する。ターン終了時まで、あなたはそのカードをマナ・コストを支払うことなくプレイしてもよい。
ストーム

コピーを含め、各《精神の願望》の解決時には、ライブラリーを切り直す指示があります。従って「形式的には」ライブラリーの一番上を追放する直前ではライブラリーは無作為化されていることが必要で、毎回切り直しを行うことになります。

つまり、回答で挙げられた選択肢のうち、4)を除く選択肢はカードの指示に従っていません・・・厳密には。従って1)2)3)の3つが誤りです。

以上が形式的な回答になります。

ここ以降は、あくまで私(testing)がジャッジを行うに際しての見解となります。他のジャッジは別の判断材料があるかもしれません。ここ以降は現実でのゲームにおいての話をするので、現実の大会ではジャッジの指示に従ってください。

現実と厳密

では現実のテーブルトップのゲームではどうでしょうか?
マジックは非常に複雑なゲームのため、妥当である省略は認められています。例えば、優先権のやりとりは、ほぼすべてのプレイヤーが省略して行っていることでしょう。(ごくごく一部の偏執的な方を除きます)

『後手のプレイヤーが第1ターンにアンタップ、アップキープ、ドロー』でカードを引くだけでも、多くの省略が日常的に行われています。つまり、現実で行われるルールの厳密さというものは改めて考える必要があります。

複数回の切り直しをまとめる

もう一つ例を出しましょう。《緑の太陽の頂点》です。

テキストは以下のとおりです。

あなたのライブラリーから、マナ総量がX以下である緑のクリーチャー・カード1枚を探し、戦場に出す。その後、ライブラリーを切り直す。緑の太陽の頂点をオーナーのライブラリーに加えて切り直す。

ライブラリーを切り直す指示が2回あります。つまり、厳密には2回の切り直しを行うことになりますが、この呪文をプレイするプレイヤーは、ほとんどが1回で済ませているでしょう。そしてそれは「ほぼ」妥当であるといえます。なぜなら、1回の切り直しで済ませた場合でも、最終的なライブラリーの無作為性が崩れていることが無いからです。
そのため、これで現実的に問題が起こることはほぼないでしょう。

妥当性の検証

先程は切り直しを1回で済ませることが「ほぼ」問題ないという表現をしました。では、以下のような場合を考えましょう

《緑の太陽の頂点》をX=3以上で唱え、戦場に出したクリーチャーが《クルフィックスの狩猟者》であった。

この場合、1回目のライブラリーの切り直し後の時点で、ライブラリーの順番が一時的に無作為化されて決定されるので、「一番上のカード」を公開する必要があります。そして、ごく短い間ですが、2回目の切り直しでそれはライブラリーのどこかに行き、そしてまた新たな「一番上のカード」を公開することになるでしょう。

つまり、この場合ではライブラリーの切り直しを1回で済ますという妥当性が失われます。現実のゲームにおいて提示される省略は多岐にわたりますが、おいそれと受諾できない提案はあるでしょう。

現実での回答

では、出題された問題に戻りましょう。今回は現実でのゲームを下地にし、それぞれの妥当性を検証します。

1)直前に《渦巻く知識》が使われているので、切り直すことなくライブラリーの一番上を公開するのは、通常通りに《精神の願望》を解決した場合と比較すると明らかに無作為化されていません。従って妥当性はあまりないでしょう。

2)最初の1回は無作為化されていますが、追放されたカードは逐一解決されてから次のカードを唱えることになります。つまり一連のカードを唱える際に、ライブラリーの無作為性を担保しなくてはいけませんが、このデッキにはすでに《渦まく知識》が使われています。2枚目以降のライブラリー操作カードがないとは限りません。従ってこの操作も妥当性はあまりないでしょう。

3)この操作は必要最低限の切り直しを行うことになります。そしてライブラリーの一番上を追放する際には無作為化がなされていると判断できます。妥当性はかなりあるでしょう。

4)3)の操作を受け入れるならば、この主張は誤りです。

従って、妥当性があるのは3)のみで、他3つが誤り、という回答になります。

省略を受け入れない

もちろん、3)の操作を提案しても、対戦相手がそれを受け入れないことも考えられるでしょう。その場合、指定された回数の切り直しを行うことになります。現実の大会では、それは多くの時間を使ってしまうことになりかねません。出題例ではストームの数が少ないのでさほど影響はありませんが、10,20と数を増やした場合の処理に対して、対戦相手が省略を受け入れなかった場合、大会においてあなたが行うことはジャッジを呼ぶことです。そしてジャッジは「提案された省略の妥当性」や「対戦相手が無為に時間を過ごすことを狙ってはないだろうか」などの点を考慮して判断をしてください。



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