20240513 禁止改定を受けて
はじめに
2024年5月13日付けで、禁止・制限カードリストの更新が発表されました。
・レガシー、ヴィンテージ、パウパー
ステッカー/Sticker および アトラクション/Attraction をゲームに組み入れるカード群を禁止。
・パウパー
《きらきらするすべて/All That Glitters》禁止
ソースは以下。
今回の禁止を受けた具体的なカード一覧は以下の通りです。
ステッカー関連:36枚(Scryfallへのリンク)
アトラクション関連:20枚(Scryfallへのリンク)
注)Scryfallの検索子は以下のようになっています。特定のカードを抜くようにしています。
ステッカー: (oracle:put oracle:sticker) -type:attraction (game:paper) -stamp:acorn -name:"A Good Day to Pie"
アトラクション: o:/(open|visit)/ o:attraction -stamp:acorn -t:Attraction -name:"Black Hole" -name:"Command Performance" -name:"Motion Sickness"
特定のカードを抜いた理由:
・《A Good Day to Pie》名前ステッカーを貼ったときに誘発する能力なのでこいつ自身はステッカーを発生させない。禁止ではない。
・《Black Hole》アトラクションを観覧/visitしたならボーナス効果を得られる。こいつ自身ではアトラクションを発生させない。禁止ではない。
・《Motion Sickness》アトラクションを観覧したらエンチャント先を移せる誘発型能力を持つ。こいつ自身ではアトラクションを発生させない。禁止ではない。
・《Command Performance》ステッカー側で禁止カードリストに入っているので二重に禁止されるのを防ぐ意味で抜いている。もちろん禁止。
というわけで、歴代でも最大数の56枚(+1)のカードが一度に禁止されたことになります。これまではコンスピラシーの策略カードが一斉に禁止されたのが最大枚数でした。
今回の禁止改定を受けて、ステッカーやアトラクションはもう競技的なシーンでは見られなくなりますが、これら2つのメカニズムについての今までの雑感を、主にジャッジ側の視点で書いていこうと思います。
ルールのややこしさ
ステッカーとアトラクションは、いずれもUnfinityで追加されたメカニズムですが、その挙動は既存のものと比べても異質でした。ざっと挙げてみると以下のような点が目につきます。
ステッカーカードおよびアトラクションカードという通常のマジックではないカードの束を持ち込む必要がある。
またそれらの束の使用は構築戦においては無制限ではない。例えばステッカーなら10枚以上事前に準備したうえで3枚をゲーム開始時に無作為に選ばなくてはいけない。
ステッカーを物理的にカードに貼る必要はないが、「貼られている」ことを明示する必要がある。またこのステッカーは公開領域同士を移動しても残る。(領域移動の例外)
ステッカーが必要になった際に、その実物を準備する必要がない。(どのステッカーを使うかは明示する必要がある)
アトラクションは統率領域に置かれてゲームが開始される。しかしステッカーは単なるマーカーなのでどこに置いてもいい。(ゲーム内の意味を持たない)
アトラクションは戦場ではアーティファクトであるパーマネントであるが、破壊されると統率領域に置かれるように置換される。つまり一部の誘発型能力は誘発しない。
また、ステッカーを貼ったあとの挙動も名前ステッカー(継続的効果第3種)、アートステッカー(継続的効果種別不明)、能力ステッカー(継続的効果第6種)、P/Tステッカー(継続的効果第7b種)と、まちまちに処理されていました。さらにいうとこれらは公開領域中であれば維持されているので、オブジェクトの特性値を判断するのに使用せねばならず、厳密には「いつ貼られたのか」まで追跡する必要がありました。
このように、ステッカーとアトラクションは遊び心にあふれていて非常に挑戦的なメカニズムでしたが、楽しむためならばともかく、競技的であるかというと非常に懐疑的にならざるを得ませんでした。
リストの問題
これらのステッカーやアトラクションを競技的に使用する点において、さらに問題になったのがデッキリストの登録時に関することでした。
ステッカーは事前に10種以上の異なるステッカーを準備せねばならず、またアトラクション・デッキも構築戦で使うには決まり事がありました。
では競技的なイベントでこれらを使う際にはどうすればいいでしょう? そう、デッキリストの提出時にこれらも登録しておく必要があるのです。ところが、多くのデッキリストの提出Webフォームは、ステッカーやアトラクションには対応していませんでした。そのため、メインデッキ内に書きこんだり、別で提出させていることも時にはあったようです。このあたりは紙によるデッキリストの提出であれば多少は融通は効いたかもしれませんが、受け取った運営側/ジャッジ側の苦悩が増えるばかりになります。
Unfinityが適正に使用できるようになって以降、競技的なシーンで使われるステッカー関連のカードはごく少数で、アトラクションに至っては稀にしか見られませんでした。(それでも人数の多いプレイヤーズコンベンションでは使用している熱心なプレイヤーの方はおられました。)デッキリストの提出スキームを変更するというのは、運営側に多大な労力を必要とします。ごくごく少数のそれらのデッキに対応するために、本当にスキームの変更を行うのか? それは本当に費やすべき労力なのか? という苦悩がつきまとうようになりました。
(事実、トーナメント管理システム大手のMelee.ggでは、ステッカーやアトラクションのためにデッキリスト提出システムを改修することはしないというアナウンスを出していました。今となってはMeleeのこの方針は英断であったと言えます。)
とっぴな質問
ステッカーやアトラクションはルールがややこしいものであることは先程述べました。そのため、これらに関連する質問は多く寄せられ、一部の効果については継続的に質問がなされるようになりました。しかし、カードではなくトーナメントルール関連で質問がよせられるようになったのは、苦悩するしかありませんでした。例えば以下のようなものです。
特にこれらの行動を止めるすべはありません。しかし、本来必要の無いカード群を毎ゲーム開始時に提示することで、あなたはラウンド内で使用できる時間を無駄に消費させています。また、それらの戻し忘れや、手順や提示のし忘れなどもありえます。更にいうと、それらの行動によって対戦相手に与える困惑はごくごく僅かで、ゲームの本質とはかなり離れているものです。盤外戦術に労力を割くくらいなら、あなたのデッキを効率よく回す練習や、友人とイベントをどう楽しむかを考えることなどに注力するべきでしょう。
まとめと感想
まだ問題となるべき点はあったかもしれませんが、とにもかくにも、今回の禁止改定によって、ステッカーやアトラクションに悩まされることはなくなりました。ジャッジ視点としては本当に安堵というほかなく、余計な心配を考慮することが少なくなります。
Unfinityとは何だったのかということに関しては後年の振り返りでMaRoが語ってくれるんじゃないかなあと思います。なんで黒枠で出そうと思ったんだろうね? ただ、Unfinityでは《Saw in Half》や《Comet, Stellar Pup》といった普通のセットに含めても良いカードも収録されているので、消失してしまう催し物ではなく、語り継がれていくものになるでしょう。
おまけ:MOやMTGAでのUNF
アトラクションはともかく、ステッカーは当然のことながらデジタルでは処理が難しいです。それを裏付けるように、MTGArenaではUNFのカードは実装されていません。またMOではごく僅かなカードのみが収録されています。(Scryfallリンク)
まあ、ステッカーゴブリン(いわゆるMind Goblin)は歪んだ実装をされてしまいましたが・・・
ところでこのMO版のゴブリン、厳密にいうと名称違いなので禁止カードリスト入りしていないとも言えるんですが、MOではどうなるんでしょうね。(普通に考えて禁止されるとは思いますが)
今回はここまでです。
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