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ネタバレしている方が売れてしまう時代【鬼滅の刃から考察:後編】

こんにちわ。
ランデブーの田中です。普段は飲食×ITのスタートアップをやっています。
noteでは日常に落ちてる話題をマーケティングやサービス視点で考察して、自社サービスや組織に転用できるように書いてます。勝手な考察ですがぜひ読んでみて下さい。

▍後編のあらすじ

こちらは前半からの続きです。ぜひ前半から読んで下さい。

後半は、鬼滅の刃が「ネタバレしていても売れた」ではなくて「ネタバレしているから売れた」可能性を探ります。

▍『ネタバレ』してる映画のがおもしろい説

『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』はコミックを映画化したものなので『ネタバレ』は存在しません。元々『ネタバレ』している内容だから当然です。

「映画を観るから漫画読まない」って人は多いと思いますが、漫画を読んでいる人と読んでない人、どっちが映画を楽しめると思いますか?

自分は漫画を読んでいる側ですが、ストーリーを知らないで読んでる人は、名前も顔もわからないちょっと登場したキャラクターに「ざわめき」はないと思います。そりゃそーですよね?「ざわめく」のに必要なのはバックグランドで、キャラクターの背景とキャラクター同士の関係性です。
*桜木花道と流川楓のハイタッチシーンで泣けるのは、関係性を知ってるからだよね *例えがおじさん

ただのハイタッチが泣けるハイタッチになった

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漫画を読まずに観た人は、その先で出てくるキャラクターが発した一言のセリフでは心打たれません。ただ、そのバックグランドを知っている人(自分)は、バックグランドを知っているからこそ「ざわめき」のシーンになります。#アイツ苦労してたもんなと言う親心的な気持ち

鬼滅の刃に限らず、今の漫画やアニメには『伏線』が多く散りばめられています。それはそれは伏線だらけです。そして、この『伏線回収』は楽しさを増大させるスイッチのような役割なんですね。

つまり、一回目の人(≒先のストーリーを知らない人)は、ネタバレしてる人よりも楽しさスイッチが少なくて「ざわめき」ポイントが少ないんです。
#嘘だと思う人は最終巻まで読んでから言え #こういう言い方するやつ嫌い

▍『ネタバレ映画』のが口コミしやすい説

今までにも、一度アニメ放送したものを映画化するものはありました。
映画のオリジナルを追加されているケースが少なくありませんし、多くの人はその『アレンジ』を期待しています。原作にはいないキャラクターの登場や、本編では語られていないスピンオフ的な作品が多く、つまり『ネタバレしてない新鮮さ』を映画に求めています。

2019年の代表作品はコレ

今回の鬼滅の刃は内容を言及してる記事も人も目にしたことがほとんどありません。なぜなら、ほとんどの人が内容を知っているからです。それに追加要素やキャラクターもほとんどいません。

これが重要です。皆が知っている点を言及するのは野暮なので(※始めから見なければ良い)、人のクチから伝えられることは『映画館で観たほうが良い理由』と『大人でも泣ける』のこの2点推しです。

このやりとりしてる人も多いと思いますが、「鬼滅の刃を全く知らない人」に「漫画」と「アニメ」を説明書として手渡すコミュニケーションは無かったでしょうか?「聞かずに読め。読めばわかるよ」コミュニケーションです。

#百聞は一見に如かずとはこれじゃん

ここで考えるべきは、説明者が「人」であった場合、その人の「プレゼン力」が作品宣伝に左右されます。あんまり観る気の無かった映画も説明する人次第で魅力を感じます。が、逆もあります。説明がヘタで魅力を感じずに『俺は合わなそうだな』と観なくなるケースです。 #圧倒的に下手くそのが多いよね

この「内容説明が不要」は、オススメする側も勧めやすいうえに『感想(事実)』だけ伝えれば良いので、「泣いた。」この一言を伝えればプレゼンが終わります。つまり、誰でも出来ます。
いつの間にやら「大人が観ても泣ける映画」「男がなく映画」といった事実だけが伝播しており、40代50代を超えて60代にまで広がり始めています。

▍『ネタバレしてしまうこと』が重要説

今までは消費者目線でしたが、こっからはマーケやPR目線での考察します。

鬼滅の刃は、『鬼滅の刃 無限列車編』の前からあまり知られてないけど珍しい打ち手が多いのでそこをみていきます。

そのうちの一つが、「2019年4月に始まったアニメ」の開始直前の劇場版公開です。これ、そのアニメで流す1~5話までをほとんどそのまま劇場版にしています。

何が珍しいって、これからやるアニメを劇場版で『ネタバレ』させたんですね。「これからアニメですぐ観れるものを映画でやる意味わからんわ!誰が観るねん」と言った人は多いと思います。
#ツッコミってなぜだか大阪弁になるよね

通常だと、漫画化からアニメ化、そして映画化という流れが通例で、その映画化もアニメの1シーズンが終わったものを総集編として劇場版でやるのが王道です。

王道は『進撃の巨人』のこの流れ

進撃の巨人、ハイキューが作った[漫画 -> アニメ -> 劇場版で総集編]の王道パターンがありますが、ここには因果関係があります。アニメになると漫画が売れるからですね。

アニメ効果で漫画がどれだけ売れるかを調べてみた

プレゼンテーション1

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ビックタイトル以外でもそうなの?
(※同時期の2019年4月開始アニメ)

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予想を超えるアニメ効果でした

ここで言いたいのは「鬼滅の刃が流行ったのはアニメ化したからでもあるけど、それだけじゃないんよ」です。アニメになったら流行るのは一定決まっている事実で、他のアニメ化された漫画もたくさんありますが、その中でも群を抜いて売れ続けています。

その一番の仕掛けが、

王道の順序[漫画 -> アニメ -> 劇場版で総集編]
鬼滅の順序[漫画 -> 劇場版で総集編 -> アニメ]

だと考えています。

アニメになると漫画が売れるという因果関係がありますが、この中でも圧倒的な伸びを出したのが『鬼滅の刃』です。単月はもちろん、その後も伸びに伸び続けているのが注目ポイントです。

アニメが始まる前からアニメのコアファンをつけることで初速に成功、映画クオリティーで準備していたので口コミが広がり社会現象にまでなったわけです。

▍目的を『意味変』する

何故アニメ公開前に、アニメと同じ内容を劇場版公開したのでしょうか?

事前にお伝えすると1作目はほとんどの人に知られておらず『全く』話題になりませんでした。もちろん興行収入も散々だったと思います。#ニュースにならなかったよねって意味だよ

気になる点は『1作目から2作目が大ヒットすることが約束されてる』ような声優陣と映像チームで構成されていることです。結果は散々でそんなに売れてません。と言うかむしろ利益出るどころか赤字だったと思います。

だだ、この1作目、そもそも映画で利益を取ろうとか話題を作ろうと考えてたのでしょうか?

この劇場版は2週間の限定公開、かつ11劇場でしたのでそもそも目的が違ったと考えると合点がいきます。

映画の目的はもちろん『利益(興行収入)』です。ただ、この1作目の目的が『利益(興行収入)』ではなくて『既存ファンを熱狂させてコアファンにして媒介人(口コミする人)にする』ことだと考えるとどうでしょうか?

『ファンをより強烈なファンにすること』を目的としていると考えれば、これからやるアニメを「ネタバレ(事前公開)」したのも、「短期間(2週間)」だったのも、やけに「クオリティーが高い」ことも、納得出来ます。

そして、その狙いはドンピシャでハマりました。

【みんなの口コミ】映画『鬼滅の刃 兄妹の絆』の感想評価評判

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▍アニメが流行れば漫画が流行る。漫画が売れると映画も売れる。

この因果関係は少し調べればわかるので、それを前提に仕込まれていたわけです。それを「2年以上前から練りに練って『大ヒット』は仕掛けられてた」と考えられます。

つまり『鬼滅の刃』に関わる人達は、満塁ホームランを狙って満塁ホームランを打ったんですね。今でこそ高笑いをしていると思いますが、2年前は背筋の凍るような想いで、首に紐がかかった状態で打席にたったと思います。

なんか、これを言うと「作品が面白いからだ!」みたいな意見が聞こえてきそうですが、内容が面白いことは大前提ですし、これが無くてもヒットしていた可能性は高いです。ただ、冒頭でも述べたとおり作品が面白いだけでここまでの大ヒットにはなりませんよ、ってことです。(※これは前編を読んでね)

▍『大ヒット』が誕生するのに必要なこと、次の『大ヒット作』は? 

ここから『大ヒット』が誕生するのに必要なことを整理すると

❶事前にネタバレして「内容」は保証されていて
❷ネタバレで作られた「ファン」が事前にいて
❸かつ『媒介者となるコアファン』がどれだけいるかが重要で
❹「コアファンを取り込む」ための前フリコンテンツを準備する


と定義できそうです。 #サービスのキャズム理論と一緒やん

この定義の答え合わせをしてくれる映画が12月25日に公開されます。

この映画、

❶元々絵本が元になっていて「ネタバレ」していて
❷この映画はキンコン西野さんが作っていて、その西野さんは『西野亮廣エンタメ研究所』という日本一のオンラインサロンで7万人以上のファンがいて
❸そのオンラインサロン内で『えんとつ町のプペル』の「制作過程もマーケティングもやる背景も、全てタイムリーに公開」していて強烈なコアファンが誕生しており
❹コアファンを取り込むために想像を絶する「前フリ」が山程仕掛けられている

中でも❹は凄いです。オープニングのMVですが、これは映画かミュージカルか?と思うほどのクオリティーで、そのクオリティーを理解できるほどの制作費が注ぎ込まれています。

その金額5000万円。これ、映画の制作費ではなくてPVの制作費です。

は?どうやって回収すんの?と思う人は正しい感覚の持ち主だと思いますし、普通に考えたらその金額は回収出来ないでしょう。その裏のカラクリは下記のnoteで紹介されています。

「ネタバレ」しているものがここまで売れて、従来「漫画は漫画」「アニメはアニメ」「映画は映画」と切り分けられてたものを、「漫画をヒットさせるためのアニメ」「アニメをヒットさせるための劇場版」のように『意味変』して前フリとして扱うことで出来ることやかけられる予算を増やしています。

『鬼滅の刃』の偉業は、目的を変えて、お金の順序を変えて、大胆に仕掛けられる手段の種類も規模も変わる。大きな節目の映画になると思います。
*言うのは簡単だけど覚悟が伴う大きな決断

さて、最後に折角なので「えんとつ町のプペル」がどれくらいのヒットになるかを予想します。

150億円で1200万人動員

この映画は、内容ももちろん楽しみですが、予想をすることで個人的な楽しみが増えます。みなさんもコメント欄で一緒に予想して、楽しみを増やしませんか?

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