【講座】論文の探し方・読み方【初級】
私のnote記事はいつの間にか論文をやたら活用するスタイルになっちゃって、「すごいすごい!」と褒めてもらえて嬉しいのだけど、これ、実はそんなに難しくないのよ。
そこで、今回はちょっと趣向を変えて、論文の探し方・読み方を伝授しようと思うわ!
予備知識のない初心者の方向けよ。英語もほとんど読めなくていいわ。
DeepL(自動翻訳)って便利よね。
そんな意識の高い講座ではないから、気軽に読んでちょうだい! 中高生でも取り組めるくらいの内容にしたのだわ。(だから、既にある程度できる人からすると有用性は低いかもしれないけど。)
1.日本語スタートで論文を探してみる。
さて。種類の豊富さや質の高さから、基本的には英語の論文を探すのだけども、とっかかりだけでもいいから日本語論文が手に入るとラッキーよ。
まずは、おもむろにフツーのGoogle検索をしてみましょう。とりあえず「性犯罪と表現の関係」が知りたいとしておくわ。
そのまま入力して検索すると――
なんかダラダラとした検索結果が出てきたわね。
最初の「児童ポルノと性犯罪の関連性 アニメの悪影響は本当か?」は、山田太郎議員のインタビュー記事ね。その次は「第8節 メディアにおける……」って書いてあるから、なんかの資料の途中ページでもヒットしたかしら?
実は、ただフツーに検索するといまいちな結果しか出ないの。今回は微妙にセーフだったけど、普段はあやしげなまとめサイトとかもっとたくさん出てくるのだわ。あと、Yahoo! 知恵袋とか、ニュースサイトの記事とか。
良い情報がほしいときは、こういうサイトの情報は全部ジャマよ。
特に知恵袋なんかすごいわよね。
「Aについて知りたいです。教えてもらえませんでしょうか?」って質問に対して、平気で「私もAについてはよく知りませんが、たぶん……じゃないでしょうか?」って答えが平気でつくのよ。
……というわけで、一工夫しましょう。
検索ワードは同じでいいから、語句の後ろにfiletype:pdfと入力しましょう。
それからもう一回検索を押すと~。
検索結果が変化したわね!
filetype:pdfは「PDF文書に限定して検索」の意味よ!
ちなみに、さらに「filetype:pdf site:ac.jp」とすると、「日本の大学サーバーにあるPDF文書に限定して検索してね!」という意味になるわ。
これでさっそく「性的有害情報に関する実証的研究の系譜」という日本語の論文が出てきたわね。前のnote記事を読んだ人は見覚えがあるでしょう。そう、私がnote記事で紹介する論文は一部こうして入手しているのだわ。
日本語だから読むのは簡単よね。
ネット議論程度の用事だったら、日本語で無料入手できるPDFに限定して情報を入手しても、かなり強い論客がやれると思うわ。下調べって大事よ!
ただ今回はこの論文そのものはメインじゃないからね。ほしいのは参考文献のリストよ。論文なら必ず一番最後についているわ。ずらーっと論文名が並んでるところね。
――あ、英語読むと気持ち悪くなる人は、別に読まなくていいわよ。私もぶっちゃけ「読む」ことはしないのだわ。流し見しておいて。
参考文献リストにあがっている論文は、必ず本文中でも取り上げられているわ。
本文には引用すると同時にだいたいどんな内容か書いてくれているから、それを参考にしながらどの論文を読むのか決めるのよ。
前のnote記事では、次の部分に注目したわね。
”Bourke & Hernadez (2009)"とあるわね。
じゃ、さっきの参考文献リストを見て、BourkeさんとHernandezさんの名前があって、かつ2009年に出版されている論文を探しましょう。
ここね!
これの読み方を一応お教えしておきましょう。
Bourke, M. L., & Hernandez, A. E. (2009). The `Butner Study` Redux: a report of the incidence of Hands-on child victimization by child pornography offenders. Journal of Family Violence, 24, 183-191.
始めの「Bourke, M. L., & Hernandez, A. E. (2009).」は書いた人の名前と出版年ね。マンガで例えると、「尾田栄一郎(1995)」とか書いてあるのと同じ。
次の「The `Butner Study` Redux: a report of...offenders.」は論文のタイトル。つまり、「ONE PIECE」ね。
そして「Journal of Family Violence」がその論文が収録されている雑誌の名前よ。意味? 別に分からなくてもいいわ。(直訳すると、「家庭暴力の雑誌」ね。)
尾田栄一郎のONE PIECEなら「週刊少年ジャンプ」にあたるわね。
最後の「24, 183-191」は「24巻の183ページから191ページ」という意味だわ。ジャンプの第何号のどこのページか記してあるわけ。
よって、英語ばっかりで気持ち悪いコレ↓は、
Bourke, M. L., & Hernandez, A. E. (2009). The `Butner Study` Redux: a report of the incidence of Hands-on child victimization by child pornography offenders. Journal of Family Violence, 24, 183-191.
意味上、コレ↓とほぼ同じよ!
尾田栄一郎(1995)「ONE PIECE」週刊少年ジャンプ, 第Y巻, NページからMページ
大したことないわね!
タイトルが分かってるなら、あとはタイトル部分をコピペして検索すればすぐ出てくるわ。(雑誌名と巻数・ページ数から探すこともできるけど、ただ面倒なだけよ。)
ちなみにこの時点で、私はタイトル部分を「読んで=訳して」ないわ。
単に「タイトルに該当する部分だな~」とだけ捉えて、脳死状態でコピペしてるの。
さっさとやっていきましょう。入力してクリック!
まあ、こんだけ検索ワードぶちこんだら、さすがに一番上に来るわね。
クリックしましょう。
すると、Abstract(要約)がとりあえず分かる状態になるわね。
これはDeepLにコピペして読んで(=訳して)もいいわ。大体どういう内容か書いてあるから。
ただ、論文の本体がほしいから、とりあえず"Full text from publisher"をクリックしましょうか。「出版社から全文取得」的な意味よ。取得とは書いてないけど。
ページのデザインや細かい文言は出版社によって異なるんだけど、だいたいは統一されていて、全文が欲しい場合はFull textって書いてある部分をクリックすればたいていOKよ。Download full textとかいう表記も見たことあるわね。
すると、上のページに飛ぶんだけど……"Buy article PDF ¥4,839"って書いてあるわね?
つまり、有料よ……。
これは、もう運次第。
最近はオープンアクセスといって無料で入手できる論文が増えているのだけど、有料のやつもまだまだ多いのだわ。
もちろん、お金をかければ解決できるけど、初心者講座でそれは無いわよね。無料で手に入る範囲で探しましょう。というわけで、「性的有害情報の~」に戻って、別の無料でゲットできる論文を探して――と、その前に。
Google検索に戻って、タイトルの前(後ろでも可)に"filetype:pdf"をつけて悪あがきしてみましょう。
これまた運がいい場合だけど、どっかのサーバーから拾えることがあるわ。出版社本体ではなくても、別の場所で無料公開されていることが意外とあるのよ。そして、今回は運がいい場合ね。
(※ゲームやマンガじゃないから論文が違法アップロードされている可能性はほとんどないと思うけど、一応自己責任でお願いね。今回はミシシッピ大学のサーバー=olemiss.eduドメインだから大丈夫だと思うわ。)
あと、大学生・大学院生のご家族とかがいらっしゃるなら、その人に頼むのも手よ。大学アカウントは各出版社と契約しているから、ダウンロードできるのだわ。
今回は包括的な説明のために、あえて有料の例を出したけど、無料であることも多いからまずは検索よ!
あと、最初に気になった論文は有料でしか入手できなくても、類似した研究テーマで無料の論文があったりするわ。コツは諦めないことね。
2.最初から英語で挑む(Google Scholar)
ここまでは日本語で検索した論文をとっかかりにして、英語論文の情報を確定させて探す方法を紹介したわ。
とはいえ、メインはやっぱり英語なのだわ。
今度は最初から英語で探してみましょう。これは以下の時にやるわ。(そして、たいていは「以下の時」に該当するわ。)
1.日本語論文でしっくりくるのがいまいち見つからない。
2.日本語論文は見つかるが、古い。
3.無料で手に入る論文がいいので、類似した研究を検索で見つけたい。
Google Scholarを使うのがいいでしょう。
ただ英語で検索しないといけないから、先にDeepLで単語を調べておきましょう。(英和辞典でもいいわよ。)
今回は「性犯罪 性表現 関係」だったわね。
そして、とりあえずこれらをそのままGoogle Scholarに入れて、検索してみると……。
英語が気持ち悪いわね?
使ってるブラウザによるけど、Chromeなら何もないところで右クリックして「日本語に翻訳」で日本語になるわ。
これ、検索結果の横に[PDF] XXXX.eduとか表示されてるヤツが見えると思うんだけど、これをクリックするとPDF全文が確実に無料入手できるわ。
(この表記がついてないやつでも、タイトルをクリックした先で無料ダウンロードできることもあるから、必ずしも諦めなくてはいけないわけじゃないわ。)
便利! 検索一覧からすぐに見分けもつくしね!
とはいえ、もうちょっと検索も工夫しましょう。
もちろん、もともと検索キーワードとの関連性が高くて、重要な論文から出してくれるんだけど、古い論文ばっかり出されることがあるわ。上の例でも、1996年の論文が検索結果の2番目に来てるわね。
科学的な研究は日進月歩だから、正直、古くて良いことはほとんどないわ。もう間違いだと分かっている知見を深めても仕方ないのよ。よほど時間があるなら、どういうふうに定説が変化してきたかを追跡的に調べてもいいけど、趣味の領域ね。
左側のバー部分に、期間指定があるわね。
これを使いましょう。デフォルトは赤字になっている「期間指定なし」よ。
まあ、2017年以降でいいでしょう。「いや、最先端の知見を!」と欲張って「2021年以降」なんかにすると、今度は検索結果が少なくなりすぎたり、評価が安定していなかったり(あとで説明するわ)して、それはそれでゆっくりできないわ。
とりあえず2017年以降にしてみるわね。(これでも少ないなら、2015年以降2018年までとか、任意の期間も指定できるわ。)
で、ちょっと検索結果の読み方を説明するわね。
こういうふうに出てるんだけど、まずはタイトルが調べたいことと一致してそうかね。(あとは無料PDFマークが横に出てれば素晴らしいわ。)
それが問題なければ、次に見るのは「引用元 16」という部分よ。
これは「その論文が引用された回数」を示していて、まあ細かいことはさておき、この数値がデカければデカいほどそのジャンルで重要な論文であると理解していいわ。
いくつか読む論文の候補があって、優先順位に迷った時は、この数値がデカいやつを選べば基本OKよ。
ちなみに、ノーベル賞を受賞した山中伸弥教授のiPS細胞の論文はこれなんだけど……。
「引用元 27087」となっているわね。2万7087回も引用された論文ということよ。……さっきのは16回ね。
ジャンルも違うから単純比較にそこまで意味があるわけじゃないけど。まあ、ノーベル賞クラスはやっぱりすごいのだわ。
前のほうでいった「2021年以降など、最新の論文を指定すると、評価が定まっていなくて困ることがある」の意味は、この被引用数の問題よ。当たり前だけど、2021年以降だと、どんなに優れた論文でもそもそも他の論文に引用されている時間自体がないから、「被引用数を見て重要度をざっくり見ていこう」ってことが事実上できないのよ。
もちろん、その場合は掲載誌を見て重要度を推測するとかが「やり方」にはなるんだけど、初心者にはたぶん難しいと思うのだわ。
(マンガでたとえると――聞いたこともないような漫画雑誌より、"あの"週刊少年ジャンプに掲載されている漫画のほうが面白い確率は高そうだ、みたいな判断の仕方ね。ただ、これどの雑誌が有名なのかという前提知識が必要よ。)
3.英語論文、中身の読み方
ひとまず「読みたい論文」が入手できたとしましょう。
PDFでひたすら読んで――いけばいいんだけど、面倒くさいわね?
DeepL先生にお願いしましょう。ただ、私もそうなんだけど、無料会員だと1回あたり5000 wordsまでしか翻訳できないわ。ちょっと小分けにやることになるわね。
"Butner Study Redux"(PDF)を使って練習してみましょう。
上のPDFを開いたら、Abstract(要約)の部分をコピーしましょう。
とにかく最初は「要約」を読むのだわ。
びーっと選択して~~。
コピーしたら、DeepLに貼り付けて、
すると、日本語に――なるんだけど……。
実は、そのまま貼り付けても、読めたもんじゃない異常翻訳になるわ。
なんか、同じ文章を繰り返しまくってるわね?
PDFのテキストをそのままコピペすると、改行や空白の情報がぐっちゃぐちゃになって、まともに翻訳できないのよ。
というわけで、この問題を回避するために、改行・空白削除ツールを使うわ。(ブラウザ上で動作するからダウンロードは不要よ。)
上のサイトの左側の枠に、PDFからコピーした英文を貼り付けるわ。
※赤矢印で示した「改行」にチェックを入れるのを忘れないでね!
すると、右側に整理されたテキストが出てくるから、こっちをコピー。またDeepLに戻って貼り付けるわ。
半角スペースを過剰に削除してしまって(あるいは元から認識してなくて?)、波線が大量につけられてるわね。でも、これは無視してOK。
なぜかそのままでもDeepL側でうまく判定してくれるわ。
はい。一応読める日本語ね!
あとは同じ方法で興味あるところをチマチマ訳して読めばいいわ。一回削除ツール挟むからだるいと思うかもしれないけど、慣れればそんなに気にならないわ。
読む順番の私のオススメは、Abstract(要約)の次にConclusiton(結論)を読むことね。Abstractと被るところもあるんだけど、「結局、その研究で何が明らかになったのか?」が端的に書いてあるわ。
要約と結論を読んで、「どういう方法で研究したの? 何をどうやって調べた?」とか「それでどういう結果が出たから、結論にたどり着いたの?」とかが気になれば、それぞれMethod/Measurement(研究手法)やResults & Discussion(結果と考察)といった節を読めばいいでしょう。
論文の構成・順序はどこもだいたい同じで、こうなっているわ。
Abstract(要約):
全体のまとめ。論文の紹介文みたいなもの。
Introduction(緒言、はじめに):
関連する研究を紹介しつつ、その論文の位置付けや意義、目的を述べる。
MethodまたはMeasurement(研究手法):
実際、どういう研究をどういう方法でやったか。
Results & discussion(結果と考察):
どんな結果が出て、それは何を意味していると考えられるか。
ConclusitonまたはSummary(結論):
その論文の結論。「~だということが分かった。」が典型的。
References(参考文献):
本文中で引用した論文の出典情報。
文言は多少違うかもしれないけど、並びはこれ確定よ。
まあ、本当に最初の最初は――ちょっと苦労はするけど――できるだけ全体ページ数の短いものを選んで、全文読むのもいいと思うわ。「あー、大体このへんにこういう話が書いてあるのね!」と把握できるでしょうから。
ちなみに今までのnote記事だと、特に総説論文を紹介したけど、これはたいてい長いから本当の最初はおすすめしないわ。まずは全体で5~7ページくらいの論文を選んで全体の流れをつかむ練習をするといいかしらね。
1つ論文を読むと、緒言とかの部分で「あ、これも読みたい!」みたいなのが見つかるし、それは参考文献から辿れるから、またタイトルやらで検索にかければいいわ。(無料だといいんだけど。)
4.おわりに
簡単に済ませるテクをざっと述べたけれど、あとはもう慣れよ、慣れ!
最初はとりあえず「私の主張の根拠になってくれそうだな~。」って論文を1個だけ探して、要約と結論の2つだけをしっかり目に読むのよ。そして、「私の主張はこれ! その根拠となる論文はこれ!」ってやれるだけで十分いいのだわ。
真面目な人は、「それだと確証バイアスやチェリーピッキングに陥る危険があるのでは?」(要は自分にとって都合のいい論文だけ見ている状態よ!)とか、「低レベルな論文を根拠にしてしまって、間違うこともあるのでは?」と思うかもしれないわね。
その心配そのものは正しいわ。めっちゃ正しい。
実際、私が前のnote記事で批判したのはそういうバイアスや間違いだし。
ただ、批判はしたものの、「出典を明らかにして論を述べた」点はちゃんと良い意味で評価しているのよ。(彼らは「初心者」ではないからその程度のことで褒めないけど。)
出典が明らかだからこそ、「『バトナー研究の再編』が根拠なら、因果関係の話まではできないわよね?」と話を詰めていくことが出来たのだわ。
根拠や主張が明確であれば、その間違いを指摘することもまた明確に出来る。生産的な議論が可能になるの。
そのへんのWEBサイトと違って、学術論文のいいところは、緒言・研究手法・結果と考察・結論・参考文献という構成が絶対的ルールとして作用していることによって、批判する側の便宜が最大に保たれていることよ。
「間違っていた場合、その間違いが明確に分かる仕組み」だといえばいいかしら。
この構成を守って書かれていたら、実際、ごまかしは非常にやりにくいのだわ。それこそ捏造するしかないくらい。批判を受けるたびに軌道修正していくことができれば、スタートは「1個の論文だけ」の状態でも、どんどん上達していけるでしょう。
軽い気持ちでチャレンジしてみてね!
それじゃあ、今回はここまで!
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