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妻を泣かせた陽気なおじさん

「だって病院に来たらお酒飲めないでしょ?」
と、救急車で運ばれたおじさんは言いました。


救急車で運ばれた経緯

このおじさんは70代。(患者さんという表現ではなく、今回はあえて「おじさん」と表現します)朝から喋りにくさと水が口からこぼれてしまう感じがしていたけれど、とりあえず仕事に出かけてたそうです。何とく喋りにくいけれど、それほど気にすることなく仕事をして帰宅後、妻から「呂律が回っていないわよ!」と言われて、そうかなと思いつつお酒を飲んで様子を見ていたけれど、症状が変わらないので妻が救急車をよんだという経緯です。

なんでお酒を飲んで様子を見るかな。。。

おじさん「ちょっといつもと違って変だなと思ったら、まずは病院に行って、何でもなかったらお酒を飲むものじゃないの?」と聞いたら、おじさんは「だって病院に来たらお酒飲めないでしょ?」とお酒を飲んで呂律が回らないのかと誤解を受けるほど陽気に答えていました。

症状

呂律がまわらない以外特に症状は見当たりませんでした。
呂律が回らなくて疑うのは、脳卒中です。
脳卒中を疑い、看護師が観察する視点としては、バイタルサイン以外にまずは、頭痛・嘔気・眩暈・瞳孔不同(左右の差)・四肢麻痺・口角下垂・バレー兆候など。どの症状もなく、呂律がまわらないだけでした。

軽い脳梗塞かな。。。と思いつつCT・MRI検査へ

CT検査の結果

ラクナ梗塞でした。即入院です。

ラクナ梗塞とは

脳の深部にできる比較的小さな脳梗塞です。できる場所によって症状がない場合もあり、「かくれ脳梗塞」とも呼ばれます。治療は発症後4.5時間以内であれば、t -PAという血栓を溶かす薬を使うことができ、うまくいけば脳梗塞が最小限の範囲ですみます。この治療は4.5時間を過ぎると効果がないので使えません。後遺症の程度にも大きく関わってきます。発症したら様子をみずに速やかに受診することが大切です。

脳が障害されると

このおじさんは、妻が気転をきかせて救急車を呼んだので麻痺が出る前に治療開始することができました。けれど、4.5時間を過ぎていたので血栓を溶かす治療を受けることができませんでした。脳が障害を受けると、麻痺がなくても本人も周りも気づきにくい障害が残る場合があります。それは、障害された部位にもよりますが、我慢ができずに怒りっぽくなったり、記憶が突然過去に遡ってしまったり、片方の空間を無視してしまい人がいることに気が付かなかったり、新しい作業が覚えられなかったり、複雑な作業や多重業務ができなくなったりということがあります。周りは、脳梗塞の後遺症だとは思わず、今まで優秀だった方が仕事ができなくなったと感じたり、性格が変わったと感じたりします。これは、高次機能障害と呼ばれ外見からは分かりづらく「見えない障害」とも言われます。

このおじさんの妻、医師から病状・入院の説明を受けた後、廊下で泣いていました。脳が障害されると不思議と病識が低下するようです。妻の的確な判断で早期に治療を受けることができましたが、妻は複雑な気持ちだったと思います。

高血圧や糖尿病の持病がある方はもちろん、持病がない方も暑い時期や風邪を引いた時などは、特に脱水に気をつけて水分をしっかりとってくださいね。







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