芥子、

芥子、

生まれたい
地に張り付いた贄は古びて笑み
のような汁を垂らしながら照る
かつて海だった頃の土が匂う
身を広げたら泳げるだろうか
虚空に漂う飢えの粒子を含んだ
ねばつく気流に浮かされて
「     」
音として発するに耐えうるには
あまりにも臆病な声帯を
剥ぎ落としながら軽くさらに
軽く、肺に満たされる体温で
整えられた気体ごと削いで
逆行する肉体を懐かしむ
「     」
花はすでに開いている
それが
芥子、であって
うるわしい高台から
手を振るひとが見えるよ
それが
あなただったらいい、すら、すら、

さらで唱えるまじないの中の
繰り返される言葉にしがみつく子音
に宿るあらかじめ封じられた魔法の
効力とともに身に跳ね返される
終わりの予感を打ち消す一条の
望みとして花びらは流れ

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