暗いところを出て


暗いところを出て

地下鉄はこんなにも
暗いところを走るから
駅についたとき
紙吹雪で迎えてあげたい
プラットフォーム、その奥の空洞から押し出される
無意の空気を巻き上げて
気のふれたまま足を向ける街が
それだけで奇跡みたいに、輝くのは
出口がこんなにもしっかり
開いているからなのかもしれない。
祈り
それだけではままならないことを
詰め込んだ電車が駅を去る震え
けだるく、粉っぽい。使い古された風が。
身体を包んでゆく、光を目に
数字があてられた出口へ。
たんに上昇していく。
日の光が濃くなるにつれて身体が浮かび上がるのを
祈り
かつて愛だったものついて
無感動な日々について
目覚めの来てしまう眠りについて
息をすることを
やめないで。
よかったと言える日の午後の空だった。
このまま何処にも行かず、歩いていたい。
隠れる場所を奪ってどこまでも
泣きたくなるような空の下を
地図を読める振りをして。
ビルの街に公園はなく、緑は
道沿いに別の駅まで続く。

2017年9月25日

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