見出し画像

計算に頼る功罪2/論文を引用して考える

小学2、3年生の半数は整数の合成分解ができない、という話の続きです。

足し算のことを合成、ある数をいくつかに分けることを分解といいます。

「子どもの数理解における部分ー全体スキーマの発達:整数について」栗山和広(2004) 九州保健福祉大学研究紀要 5

論文は続きます。

「2年生の1学期から3学期にかけて、1年間にわたって整数について学習しているにもかかわらず、正答群はわずか7%しか増加していない。」
「このことは、子どもにとって、部分ー全体スキーマの理解は学年が進んでもそれほど進まない、と考えられる。」

    ショッキングな調査結果です。1クラス40人とすると、2年生時にできなかったのは48%の22人。そのうち7%の3人弱は3年生になったらできるようになっています。19人はそのままです。1年たてば背も高くなるし、いっぱしの口をきくようにもなるのに。数理解についてはただ待っていてもダメだということをこの論文は示唆しています。

3年生になれば、すでに算数のカリキュラムは乗法構造に移っているはずです。半数の子どもはあやふやな数理解のまま、掛け算割り算を習っているのでしょう。

    ところで、7%のこどもは3年生になるまでに件の問題ができるようになっています。クラスで3人弱です。この子どもたちだけが、なぜできるようになったのでしょうか。この論文では調査対象外の話です。

   仮説を立ててみます。3人のうち2人くらいは塾に行ったり、家庭でフォローしてもらってできるようになったとして、残り1人くらいはもしかして生活の中で何かしらの契機があってできるようになったのかもしれません。数感覚には生活の中で習得することが多いことが指摘されています。100個を超えるような集合物を実際に数える、買い物のためにお金を触るなど、今後の合成分解に関する指導の手がかりになるエピソードを知りたいです。

そもそも合成分解はなぜ難しいのか、という話が続きます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?