見出し画像

ブレイキングダウン10の会場で感じた違和感の正体

「殺せー」
「死ねー」

普段の生活では聞かないような突き刺す言葉たちが、当たり前のように飛び交う。

2023年11月23日、「1分間最強を決める」ブレイキングダウン10の会場。

関連動画を投稿すれば、常にYouTubeの再生回数が100万回を超える大人気コンテンツとなったブレイキングダウン。そのメモリアル大会、ブレイキングダウン10を観るため、福岡から埼玉の会場までわざわざ足を運んだわけだが…。そこで見た「とある光景」に違和感を感じ、書き出してみたくなった。

乱闘まみれの配信とお行儀のいい会場

今までネット配信でブレイキングダウンをずっと見てきた私は、荒れ狂うオーディション会場の様子しか知らない。穏やかに終わるオーディションもあるが、多くの場合、怒号が飛び交い、一触即発状態が映し出される。

試合会場でも同様に、そんな光景を目の当たりにするのではないか、なんなら怒りの矛先が誤って、アラサー女子の自分が絡まれたりするのではないか。そんなことを若干期待しつつ、入場したのだが、実際は至って穏やかだった。

地区対向喧嘩自慢対決が始まるまでは。

ブレイキングダウン10では、大宮VS豊橋の構図で喧嘩自慢同士がリングに立った。大宮の選手が入場するなり、冒頭のワードたちを叫びだす観客。選手の友人たちと思われる人物たちの罵声が続いた。

「おお!いよいよ観客同士も喧嘩か?!」

しかし、喧嘩自慢対決が終わると、罵声も静まり返る。周りをよく見ていたが、横柄な態度をとるような人物もいなく、むしろ和やかな雰囲気。

喧嘩もなく、平和!そんなの素晴らしいじゃないか!と思う一方で、どこか生の喧嘩を見ることに期待してしまってた自分がいる。

会場のお行儀のよさに、拍子抜けしてしまった。こってり豚骨ラーメンを期待していたのに、あっさり塩ラーメンを出されたような。どこか物足りなさを感じてしまい、一体自分はブレイキングダウンに何を期待していたのか。

ブレイキングダウンがここまでのブームになった要因は

  • 長尺ものからショート系へトレンドが変化し、1分間での勝負決着がウケた

  • オーディションから見せることで、対戦相手同士のストーリー性が熱狂を生んだ

などいろいろあるとは思うが、何より、多くの人は普段見ることのできない光景に飢えているんだと思う。

たとえば幽霊だってそう。本当は怖くて見たくないはずなのに、ホラー映画やホラー小説は一定数のファンがいる。もしくは、セクシャルで如何わしいシーンに出くわしたときの感覚のが近いかもしれない。見てはいけないけど……気になる。

同じような感覚なのでは……。

怒り狂って喧嘩する姿なんて、なかなかお目にかかれない。巻き込まれたら嫌だけど、どんなもんなのか気になる。人間の好奇心をくすぐるような動画に仕上がっているからこそ、ブレイキングダウンはウケてるのではなかろうか。

あくまで怖いもの、ヤバいものは見るだけ。本当に暴れ狂うのはほんの一握りで、視聴者の大半は心穏やかな人たちなのかも、と感じさせる会場だった。

溝口勇児という男

会場に行ったからこその気づきと言えば、入場してずっと気になった人物がいた。ブレイキングダウンのCOO(最高執行責任者)を務める溝口勇児氏だ。

「最高執行責任者」という肩書きだけで、人前に顔を出さないだろうと思っていたが、予想に反して会場内でもっとも多くの回数、すれ違うこととなった。

責任者の立場でありながら、当日試合が決まっていた溝口氏。まず、自分の試合をKO勝利で終えると、すぐにリング下まで来て挨拶をして回る。一番後方に位置していた私の席の方まで来て、「応援ありがとうございました」と丁寧に頭を下げる。

その後すぐ、リング近くまで戻ったかと思えば、試合を終えた選手たち一人ひとりに声をかけて回る。イベントの間にある休憩時間も会場をウロウロ。一般客と写真を撮ったり、関係者と思われる人たちに挨拶したりと、常に「現場」を動き回っていた。

終いには、イベント終了後すぐ、会場出口に向かったのだが、そこにはすでに溝口氏が立っており、来場者への感謝を伝えていた。

しつこいようだが、彼は日本一人気コンテンツの責任者であり、連続起業家でもあり、いわゆる「成功者」と呼ばれるような人である。VIP席にふんぞり返っていてもおかしくないはずだが、目の前の人物は、一人ひとりの目を見て声をかけている。

こうした会場での様子を見て、普段SNSでの発言は「いい人」を装ったものでなく、本音なんだと感じた。

荒くれ者たちの喧嘩が楽しくて見ていたブレイキングダウン。本来なら事故や事件が起きてもおかしく場所が、お行儀のよい会場になっていたのは、きっと溝口勇児という人間の貢献度が大きいのだろう。

物騒なイメージのブレイキングダウンと、それを支える人物の穏やかさが、私に違和感を感じさせたのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?