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国重 浩一 (著, 編集), 横山 克貴 (著, 編集)『ナラティヴ・セラピーのダイアログ: 他者と紡ぐ治療的会話,その〈言語〉を求めて』(北大路書房、2020年)を読みました。

対話や物語、言語化を理解したいと思い、カウンセリングやセラピーにおけるナラティブについて学んでいます。本書は、ナラティブの専門家であるカウンセラーとクライアントの間の4つのダイアローグにたいしてそれぞれ3名の専門家がダイアローグに対して丁寧な解説・解釈をつけることにより、ナラティブとはどのようなものか体感できる仕組みの本となっています。カウンセラーとの対話中にクライアントが自分の中にあるモヤモヤしたものを言語化し、それを解釈していくのは、まさに二人三脚という感じで心が動きます。伝統的なアプローチと違い、「問題」を発見しそれを解決するというアプローチではなく、「問題」を問題たらしめている背景(「ディスコース」)に着目するというのはイノベーションのりフレーミングにも通じるところです。対話の力を感じる一方、言語ではなく身体的アプローチでしか汲み取れないものもあるのだろうがそれはどのようなものなのかという問いも生まれました。この分野の古典となりそうな素晴らしい一冊でした。平易な日本語で書かれていますが内容が濃く、読むのに随分時間がかかりましたね。

本書より…

それは、語り手が、今語っている場所から語ることを誘う質問と、語り手が、今語っているのとは違う場所から語ることを誘う質問といえるかもしれません。
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私がこのとき驚いたのは、私がカウンセラーの立場であれば、クライエントからストーリーやメタファーが提示されたとき、その内容についてもっと具体的に状況を知ろうとして、「溝とはどういうものですか?」という質問をすることを考えていたからです。

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