石川 忠久『漢詩への招待』(文春文庫、2005年)を読みました。

高校の漢文の先生が厳しく指導してくれたので漢文はわりと得意でした。ただ、漢文の背景などはほとんど知らずに来ました。確か高校時代に石川先生のラジオ講座を聴いていた記憶もあります。この本では3千年の歴史を持つ漢詩を時系列に追っていきます。印象は、漢詩は堅いなあということと恨みつらみなど強烈な情念が織り込まれているなあということです。それに比べると(私の知る範囲ではということですが)日本の詩の方が明るく奔放だなあと思います。

気に入ったのは杜牧の詩です。
エリート一家に生まれながら育ちのよさが災いして出世しなかったとのことですが詩の方はビジュアルイメージがカラフルに立ち上がるようで大変魅力的です。ピンク・フロイドのロジャー・ウォータースも引用しているとか…

本書で紹介されている杜牧の漢詩:

泊秦淮
煙籠寒水月籠沙
夜泊秦淮近酒家
商女不知亡國恨
隔江猶唱後庭花

秦淮に泊す
煙は寒水を籠め 月は沙(すな)を籠む
夜 秦淮に泊して 酒家に近し
商女は知らず 亡国の恨みを
江を隔てて猶唱う 「後庭花」
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贈別

多情却似総無情
惟覚罇前笑不成
蝋燭有心還惜別
替人垂涙到天明

 多情は却(かえ)って、総(すべ)て無情なるに似たり。惟(ただ)覚(おぼ)ゆ、罇前(そんぜん)に笑(わらい)の成さざるを。蝋燭(ろうそく)心有りて、還(ま)た別れを惜しむ。人に替わりて涙を垂れ、天明に到る。

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