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市原 佐都子『バッコスの信女―ホルスタインの雌』(白水社、2020年)を読みました。

2020年の岸田戯曲賞受賞作ということで読んでみました。女性の本能や妄想、本音を見事に会話形の戯曲で表現し、世界や日本の社会状況を浮き彫りにしています。これで色々なものが解放されるのではないでしょうか。文学や演劇の力がわかります。


本書より…

「正直な気持ちを表せない」ということは、十五歳のとき感じた、あの「恐怖」に似ていた。「不謹慎なことは言わないほうが良いに決まっている」と言う人もいるかもしれないが、一般的に封印するべき「ない」ことにされる感情や意見は確かに「ある」ということを言うためにも私は作品をつくりたいと思った。
 そして、ますます、自分の身体の生理現象や感覚に執着した。また、人間のドラマを描くことに意義を感じず、もっと根源的に「生命」を描きたい思った。異種間の交尾や交配、人間を動物として捉える、または動物を人間として捉えるなど、既存の人間の捉え方に揺さぶりをかける作品を創作していった。
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日本で生まれ育った方ならわかるかもしれないが、日本社会で人々は、見た目を重視され、「普通」が良いとされ得る価値観を幼いころから刷り込まれてきたように思う。

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