ウェルズ 恵子『魂をゆさぶる歌に出会う――アメリカ黒人文化のルーツへ』(岩波ジュニア新書、2014年)を読みました。

ジャズとブルースは私を支えてくれた大切な音楽です。これらだけでなく、ラップ、ヒップホップなどの黒人音楽にも影響を受けてきました。アメリカに暮らしていた時にも黒人の友達はたくさんいてそれなりに黒人文化を理解しているつもりでしたがなかなか掴みきれない感じがありました。この本では奴隷制や黒人差別などの歴史と現在の黒人文化のつながりをわかりやすく解説してくれます。マイケル・ジャクソンのヒット曲の裏にある黒人観から始まり、たくさんの事例を通して、抑圧の中から新しい音楽文化が生まれる過程を紹介してくれます。黒人文化がわかりにくいのは抑圧下にあったので当たり前だったのですね。亀とうさぎの寓話は世界中にあるようですが黒人間の寓話は亀の家族が協力して全力疾走するうさぎに勝つという物語でした。まったく目から鱗の一冊で世界が広がりました。今後ジャズやブルースの味わいが深くなることでしょう。

本書より…

アメリカ黒人の歌や物語や踊りには、とぎすまされた特別な魅力があります。その魅力に包まれて、抑圧や心的外傷や絶望を生き抜く技(テクニック、スキル)が伝授されます。夢中になれる楽しみをつくり出す能力と、絶望的な困難をやりすごす技と。この二つは、現代の私たちにも必要な、生きていく上でたいせつなツールですね。

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